まとめ#12 2017年1~3月】読んでよかった本5冊
こんにちは。
この3ヶ月は長く東京を離れたり新しい生活が始まったりする中で、自分を見つめる時間を長く取ることができました。そんな中で読んだ本のうち、5冊をご紹介です。
●悲鳴をあげる身体
センター国語・現代文に頻繁に登場する著者が、1998年に出した本著。今更ながらに読みました。
そんな身体から何やら悲鳴のようなものが聞こえてくる気がする。身体への攻撃、それを当の身体を生きているその人がおこなう。化粧や食事といった、本来なら人を気分良くさせたり、癒したりする行為が、いまではじぶんへの、あるいはじぶんの身体への暴力として減少せざるを得なくなっているような状況がある。
高校生の時には「鷲田さんの文章ってなんかわかったようでわからないな」と思っていたのですが、今は少しだけ噛み砕けるようになった気がします。
過食や拒食、ピアシングといった体へのある種の暴力と、筋トレやライザップ的ダイエットなどに代表される身体を管理下におく取り組みは、同一線上にあるのだろうと個人的には思います。この本を読んで、もっと感覚器官としての身体に任せて、遊びと余裕を持って、楽に過ごしていきたいな、と感じました。
あとは、日本と欧州の笛の比較も面白かったです(本文中では着物と天麩羅の比較も出てきます)。ヨーロッパのものは、器具をカスタマイズすることで、個人にとって扱いやすいものにしたり、音の調整をしたりする。一方で日本の笛は、指の加減だったり首の角度だったり、身体を器具に合わせるようにする。データを取ってパーソナライズ、いかに世界を人間に合わせるか、が流行りの世の中ですが、自分の身体を核にしていかに世界に溶け込んでいられるか、何かを感じられるかも大切にしたいですね。
●反応しない練習 -あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
- 作者: 草薙龍瞬
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
- 発売日: 2015/07/31
- メディア: 単行本
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周りでも、読んでよかったよ!って方が多かった本です。嫌われる勇気が100万部以上売れて実写化までされる、そんな悩み深いこの時代に。私も去年いろんなことで悩んでうーんとなることもあったので、もう少し早くこの本を読んでいたら少しは気楽に過ごせたりしたのかな、と思ったり。
書いているのはお坊さんですが、仏教という宗教の紹介という要素は少なく、ブッダが考えた現実世界や人の精神のあり方、それを前提とした日々を穏やかに過ごす原則の共有、といった方が内容に近い気がします。
ぐーっとまとめると世の中のほとんどのことは自分ではコントロールできないから自分に都合の悪いことを起きないようにすることはできない、その事実をまず受け入れよう。ただし、日々の怒りだったり嫉妬だったりは(自分が勝手にしている)反応であって、「これは単なる自分の反応だ。この反応するかどうか、自分は選択できる」と認識できれば、人はもっと心穏やかに充実して過ごせるはずと。
タイトルの通り、超・合理的。
別のところで、女優のジョディ・フォスターが、
Being understood is not the most essential thing in life.
とおっしゃっているのを聞いて、これも素敵だなぁと思いました。good quoteです。
なんかいらいらするなぁとか、どうも不安が抜けない、そんな人は是非。楽になります。最近はてブで話題になった方の同書書評がこちらにあるので関心がある方はことらもどうぞ。
●ウェルビーイングの設計論 -人がよりよく生きるための情報技術
- 作者: ラファエル A.カルヴォ& ドリアン・ピーターズ,渡邊淳司,ドミニク・チェン,木村千里,北川智利,河邉隆寛,横坂拓巳,藤野正寛,村田藍子
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2017/01/24
- メディア: 単行本
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2012年に亡くなった流通ジャーナリストの金子哲雄さんの僕の死に方や、尼崎で在宅医をされている長尾先生の「平穏死」10の条件を読んで、善く生きる・死ぬって何だろうという問いがぼんやり頭の片隅にあります。そんな中で手に取ったのが、ICTやデジタルサービスとウェルビーイングとの関係性について、関係分野の研究者が書いたこの本です。
まず本書は、ウェルビーイングとは何か?という問いから始めます。機能障害がないという医学的モデル、ポジティブな感情が得られているという快楽心理学的モデル、より長期での主観的な幸福度を重視するカーネマンのSWBモデル、自律性や有能感に基づくフローリッシュ(目的達成や才能の発揮など)モデル、などなど多岐に渡ります。
これに対して後半で「オンラインで認知行動療法を行うテクノロジー」だったり「身体体験を重視するマインドフルネスを支援するサービス」だったり、上記の観点に立脚してウェルビーイングを改善するサービス・事業を紹介しています(原著が2014年発売なので事例はやや古めですが)。
内容自体も面白いんですが、章間のコラムのタイトル(「データのダイエット」は人間を健康にするか?とか)が刺激的。ヘルスケア・メディカルITスタートアップの人間になったので、こういう問いかけを自分に対してしていかなきゃなと思う次第です。
●楽しく学べる「知財」入門
ところがどっこい、知財についていつもごちゃごちゃになるところ(「著作権?意匠権?商標権?実用新案権?はて?」みたいな低いレベルです)をきれいに整理してくれるだけでなく、過去の判例をたくさん引きながら、それぞれの権利が保護される範囲や申請しても却下されるケースなどについてかなり具体的なイメージをつかむことができました。過去のこのような本の中で個人的には一番わかりやすかったです。
また、使う事例がいちいち気が利いていて、読ませる。著作物性が認められたケースとして「廃墟写真」、否定されたケースとして「スイカ写真」を持ってきたり。鳩山一郎・元総理の夫人・幸氏が過去に特許出願したキッチンパーツについて、わざわざインタビューに赴いたり。 すごいバイタリティだ。
勉強にもなるし息抜きにもなる、素晴らしいノンフィクションでした。
●野村證券 第二事業法人部
圧倒されました。平和に生きていこうと思います私は。。。(詳細なご紹介は現代さんのこちらへどうぞ)
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こんな感じです。また3ヶ月後に。
まとめ#11 2016年】今年の16冊+年末年始の5冊
こんにちは。2016年も年の瀬ですね。
今年読んだ本を合計したら186冊でした。
仕事で色々考えることが多く、組織だったり事業開発に関する本が多かった一方、仏教や世界史に関する本にでもちょこちょこ手を出してみました。
学部生の時からつけ始めた読書日記も1,000冊を超えて、この人にはこんな本をお勧めしたいな、と思うことも増えました。来年はプレゼントを贈るとき、その人に合いそうな本を選んで渡してみようかなと思います。
その年の本をまとめるのも今年で4年目(過去記事→2013年、2014年、2015年)。
今年分は1Q、2Q、3Qとそれぞれまとめていて、今回のものともだいぶ重複しています。よろしければそれぞれもご確認くださいませませ。
それでは、どうぞ。
●アホウドリの糞でできた国
ナウル共和国という島国のお話。
太平洋に浮かぶ世界で3番目に小さなこの国は、島自体がリン鉱山。黙って土を掘ってそれを売ればお金になっていたこの国の市民は、資源の枯渇による貧困から逃れることはできず、わずか数十年の間に、世界でも有数の豊かな国から最貧国まで一気に欠け落ちました。
具体的に何が起きたのか、別の本の解説ですがこの記事とかこの記事が簡単でわかりやすいです。
この本自体はイラストも多く、1時間もかかわずさーっと読める、けど国のあり方を考える上で示唆深い本。
●わたしが正義について語るなら
アンパンマンの作者・やなせたかしさんの自伝的に語られていきます。
戦争に行って帰ってきたら、皆が信じるものが、世界が、完全に変わっていた。そんなやなせさんが感じた不変の正義は「献身と愛」、そんな思想がアンパンマンに生きていると。(振り返ればそうだけど、当時はそんな綺麗事じゃなくて死ぬほど仕事する中でのただの一作品だったとのエピソード添え)
「アンパンマンのマーチ」の中に、"愛と勇気だけが友達さ"という歌詞があります。それで抗議がきたことがあるんだけど、これは、戦うときは友達を巻き込んじゃいけない、戦うときは自分一人で思わなくちゃいけないんだということなんです。
全く関係ありませんが、家の近くのアンパンマンショップは常に大人気です。
●私は魔境に生きた
私は魔境に生きた 終戦も知らずニューギニアの山奥で原始生活十年 (光人社NF文庫)
- 作者: 島田覚夫
- 出版社/メーカー: 潮書房光人社
- 発売日: 2007/10/13
- メディア: 文庫
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安倍首相が真珠湾に慰霊訪問した2016年末。思い出したのはこの本でした。
ニューギニア島で終戦を迎え、そのまま密林の中で10年生活。
人が生きていくってなんて大変なんだろうと。ただ食べていくってなんて大変なんだろうと。
生々しいお話ばかりで、本の終盤になっても読み終えたくないと思わせてくれるノンフィクションでした。
●数学者たちの楽園
シンプソンズの製作陣には、数学の修士号、博士号取得者がゴロゴロいると。。すごい。。いい作品を作る人は遊び心がある人。それを実感します。
本の中で、"3987^12+4365^12=4472^12"が一瞬紹介されていて電卓で計算してから「フェルマーの最終定理が!!!!」ってなるんですが、少し読むと解決します。一瞬ぶったまげました。洒落てる。
あとですね、インドの数学者ラマヌジャンのエピソードが出てくるんですが、それ以来1729という数字が大好きになりました。詳しくは、ぜひ本書で。
体の中を一つの社会に模して、風邪やがん、花粉症などの時に体の中がどんな風になっているのかを教えてくれるマンガ。こういうコンセプト大好き。
高校の教室に是非置いておいてほしい本。
マクロファージむちゃかっこいいし、好酸球かわいいし。。。 彼/彼女らに支えられて、今日も元気に生きていけるんですね。
●大人はもっと遊びなさい
遊びます(力強く
お国が副業を後押しするような世の中ですし、目の前の仕事に縛られるんじゃなく、適度に遊んで、人生を豊かにしていければいいなぁと思います。
●あなたの会社が理不尽な理由
会社勤めをする中で、なんでこうなっているの?と思う幾つかのことに、経営学の論文をベースにした見解をシェアしてくれます。
例えば、少額な出費と大規模な投資があったときに、少額な出費ほど会議や決断、確認に多くの時間をかけてしまうこと(あるある)。これは、経営陣でも大規模投資の経験は少ないために発言する人も少なければ意思決定に関与したがる人も少ない一方、小さい出費であればみんな自分の経験があるから色々言い出し結果やたら時間がかかるから。思い当たることがあったりなかったり。。
全般としては新規事業系のお話が多いです。頭でわかっていて実行できていない人が多いこの業界ですが、ぜひ参考図書に一冊。
●魂の退社
人生思い切り。 一瞬私もアフロやってみようかと思いました。
●アメリカは食べる
食から見るアメリカの文化論。いま思い返しても、内容がずっしりと濃い一冊。
この方の書評ブログがとてもよくまとまっています。
新天地アメリカに渡ったイングランドからの入植者である白人たちが、先住民たちネイティブアメリカンと食べ物を分かち合い、新世界の食材と、先住民の知恵と工夫、そしてイングランドの調理道具と調理法が融合し、お互いが食卓を囲んだことが真のアメリカ料理の始まりであった。そしてこれが、アメリカ料理の本質であるという。
それは後に、ドイツ、フランス、イタリアなどヨーロッパや、アジア、南米からの移民たちが持ち込んだ自国料理が、アメリカの地で変容し、多種多様な民族が寄り集まって作り上げた、世界に類を見ない希有な「食」になったのである。
また、もう一つ、アメリカの負の歴史から生まれた「食」もまた、アメリカ独自の「食」であることを知らなければならない。ソウルフードである。
著者の方は映画や音楽が専門とのことですが、その方がこんなに豊かに文化のことを語る姿にかっこいいなぁと。
いつかお会いしてみたい方が増えました。
●TEAM OF TEAMS
- 作者: スタンリー・マクリスタル,タントゥム・コリンズ,デビッド・シルバーマン,クリス・ファッセル,吉川南,尼丁千津子,高取芳彦
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2016/04/01
- メディア: 単行本
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100名を超える大きな組織で働く人、そんな人たちと一緒に働くことのある方々にとてもおすすめです。部署の課題図書にしてもいいくらい。
2000年代、イラクに乗り込んだ米軍は大苦戦。兵器の質や量、兵士のトレーニング、情報戦どれを取っても米軍の方が圧倒的に優っているはずなのに。著者は当時の司令官。苦戦の原因を意思決定や情報共有、さらにはチームとしての成り立ちにもとめます。情報が高速に行き交う現代において、軍隊に代表されるピラミッド型/MECE型組織は最適ではないのでは。組織の透明性を高め、あらゆる情報を共有し(著者は数千人参加の会議をWeeklyで行った)、意思決定の権限を現場に移譲していく。そうしていかないと、ゲリラ戦に対応するだけのスピードを組織として担保できない。
これからの戦略は、チェス(のような逐次手番ゲーム)ではなく、(勝手に育つ農作物を最適に管理する)菜園ゲームであるべきだ、というのも印象的でした。
読みながら組織/チームに関するいろんな問いが想起される、とてもいい本です。
辛いことがあるたびに読み返すマンガ。大好き。
次女・ひなたちゃんのいじめのところ読むと必ず泣いてしまう。。。。
●子供は40000回質問する
子どもは40000回質問する あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力
- 作者: イアン・レズリー,須川綾子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/04/19
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子供のように考えろとはよく言ったもので。
知識偏重型ではない教育を、と言われて久しいですが、この本では「好奇心のベースにあるのは知識だ」とされています。知らないことを知らない、という状態から、知識があってやっと知らないことを知る、という状態にいける、と。
好奇心は不服従のもっとも純粋なかたちである(ウラジミール・ナボコフ)
好奇心にあふれた毎日にするためにも、自分が知らない物事に日々気づき、それに謙虚である自分でいたいと思います。
●未来政府
- 作者: ギャビンニューサム,リサディッキー,Gavin Newsom,Lisa Dickey,稲継裕昭,町田敦夫
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2016/09/30
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カリフォルニア州副知事が語る、これからの行政の形。ちょうど先日Code for Kanazawaの方々と仕事でご一緒したので、タイムリーに頭に入ってきました。
20世紀末から、世界中で新たな製品/サービスが生まれ、それによって人々のコミュニケーションが大きく変わってきたのに、政府と国民・市民とのコミュニケーションはここ数十年全く進化していない、それはなぜだろうか。これからの行政はどうあるべきなんだろうか。自身でスモールビジネスをいくつも立ち上げてからサンフランシスコ市長を経て現職に至る著者は、起業家の視点、行政の視点それぞれから未来を語ります。
投票するだけでなく、「選挙に行こう!」と叫ぶだけでなく、自分で生み出せる進化はなんだろう、と考える良いきっかけになりました。
●あなたの体は9割が細菌
今年読んだ本の中で、実生活に一番変化をもたらしたのがこの本。
ぜひ買いましょう食物繊維・難消化性デキストリン(http://amzn.asia/8bOc1x2)。抗生物質の摂取は適切に。
最近マイクロバイオームだったり腸内環境だったり、テレビでも取り上げられるようになりましたね。ヘルスケア系のコンテンツはいろんな情報が飛び交っているので、信頼できるソースの情報を丁寧に拾っていきたいです。
●空から降ってきた男
渾身のルポ。中身を読んでると、20世紀以前の話かと錯覚するような、深い深いアフリカの闇のお話。
奴隷制は、まだいきています。
●ザ・会社改造
三枝さんの本はどれも大好きなんですが、ミスミでの経験をダイレクトに書き起こした最新作は読み応えたっぷりでした。戦略立案、海外事業の立ち上げ、コールセンターの集約、製造機能獲得のための買収、どれも強烈なインパクト。
・戦略とは何か?
・新規事業を考える際の事業シナジーとは何か?
・改革を乗り切るために必要なストーリーはどう紡がれるのか?
いろんなことに示唆をくれます。
戦略プロフェッショナルからV字回復の経営まで、合わせて読み返すのがお勧めです。
ここから、私の年末用の読書リストです。
●世界史B講義の実況中継シリーズ(1)~(4)
青木裕司 世界史B講義の実況中継(1) (実況中継シリーズ)
- 作者: 青木裕司
- 出版社/メーカー: 語学春秋社
- 発売日: 2015/03/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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集中して纏め読みできる貴重な期間なので。全四巻まとめて。
●大衆の反逆
- 作者: オルテガ・イガセット,Ortega y Gasset,神吉敬三
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1995/06
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大統領選があんな結果になる世の中なので。
以上です。少し早いですがみなさん、来年もよいお年を。
まとめ#10 2016年7~9月】読んでよかった本5冊
こんにちは。
この3ヶ月は本屋さんを巡ったりSNSでお勧めされている本を手に取ったりして、いい本との出会いがたくさんありました。
その中でも、いまの私がおすすめする本5冊を紹介します。
●コンテナ物語
2013年の、ビル・ゲイツが選んだ「今年読んでよかった本7冊」に選ばれた本です。遅ればせながら手を伸ばしてみました。
1950年代にコンテナを発明し、海運業を「船を運行する産業」から「貨物を運ぶ産業」へと再定義したマルコム・マクリーン。それまで人手で個別に積んでいた貨物を、コンテナという箱を使って一気に積載することで金銭・時間両方のコストを驚異的なレベルで圧縮することに成功しました。
この本が面白いのは、この「荷物を箱に詰めてまとめて運ぶ」ということを実現するのがいかに大変か、それを教えてくれるところ。港の労働者は反対するし、箱の規格を決めるのにいくつもの機関が出てきて話がまとまらないし、トラックや鉄道屋さんもいろいろゆーてくるし。
優れたアイディアを世の中に広げていくことの困難、蓋しそれが実現した時のインパクトの大きさを教えてくれます。このような発明がもっと大きな社会変化を起こしうる、という実例を挙げてくれる本(世界を作った6つの革命の物語)もおすすめです。
恥ずかしながらこれも今更ですが、 1970年代に書かれた名著。
有名な"ジャストインタイム"や"カンバン"といった単純な手法の話ではなくて、トヨタという会社が、生産において何に焦点をおいて、そのためにどのようなコンセプトを作り、いかなる手法で実現したのか、ということが書かれています。私は、「トヨタの生産は、中央統制に従う共産主義ではなく、顧客に基を置く市場主義に基づいて運営される」ということなんだと理解しました。
●あなたの体は9割が細菌
この3ヶ月読んだ本の中で一番衝撃と影響を受けた本です。
タイトルそのまま、私たちが自分だと考えている存在のうち、実際に人間の細胞が占めている割合よりも、細菌や微生物の数の方が多いんだと(数として)。そしてどの細菌や微生物が体に住み着いているかで、身長や体重といった身体特性、糖尿病や自閉症などの疾患、さらには性格までが影響を受け得る、と。(痩せたいなら何より食物繊維ですってよ)
こういう本は「抗生物質ダメ!」「出産は自然分娩で!」などと言い出す本が多いんですが、著者はそんなことなく、バランスのとれた展開をしてくれます。
これからは、自分の菌に優しい生活をしたいと思いました。
●ザ・会社改造
V字回復の経営などで有名なミスミの三枝さんの最新著作。大好き。
ご自身が、どんな思いでミスミの経営を引き受け、その後社内でどんなチャレンジをしてきたかをテーマに、会社が変わっていく様を描いています。
印象的なのは、失敗について相当具体的に踏み込んでいるところ。海外展開や社内のカスタマーセンター整備など、一つ間違えば大火事になりえた問題について、克明に書いてくださっています。
「創って作って売る」という商売の基本サイクルをベースに、今の会社に何が起きているのかを"観察"する。そこから自分/自社に対する"強烈な反省"を行い、"戦略"を定める。そこから出てくる"アクションプラン"に従ってスピード感を持って実行していくこと。
また本棚に素敵な本が増えました。
●戦争広告代理店
ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)
- 作者: 高木徹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/06/15
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世論を味方につける。企業買収などでも重要視されるテーマですが、もちろん戦争・紛争でも。「民族浄化」という言葉が、紛争を有利に運ぼうとするPR会社が考え出した言葉だということを初めて知りました。
SNSの登場などで世論形成のためにアプローチしなくてはならない前線が広がっていて、今現在この本の中で描かれている方法がどこまで有効かはわかりません。ただ、たった一つの言葉を生み出すことが、重要な人間からの一言を引き出すことが、大きなパワーになるのは今でもそうなんだろうなと。
ただ、何が正しいのかますますわからなくなる今、こういうことでいいんだろうか(ダメだとして何か打つ手はあるんだろうか)と思いにふける、そんな時間を与えてくれる本でした。
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こんな感じです。また3ヶ月後に。
まとめ#9 2016年4~6月】読んでよかった本5冊
こんにちは。
この3ヶ月は、本屋さん(Amazon含む)を徘徊しながら目に付いた本をぱーっと買って読む日々でした。
その中でも今の私にとって面白かった本を5冊紹介します。
●あなたの会社が理不尽な理由
著者が日経ビジネスオンラインで書いていた記事をまとめたもの。
タイトルや、帯にある「なぜ会社は何億円もの失敗よりもタクシー代にうるさいのか」 という問いについてだけでなく、社内の人材教育や組織の意思決定スピードに関する問題など、幅広いトピックを扱っています。どの章も、それを専門に扱った書籍や論文をリファーしてくれるので、もう一段深めたいなぁっていう時にもありがたいです。
中に出てくる、ダニエル・カーネマンの「結局、建設的な批判とはどれだけ深みのある言葉遣いができるかにかかっている。」という言葉がとても素敵だと思いました。
●数学者たちの楽園:「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち
謎の黄色いキャラクターが活躍する米アニメの代表作、シンプソンズ。その裏側を支えているのは数学ギークなんですよ、っていうお話です。「フェルマーの最終定理」等を書いたサイモン・シンの新作。
各エピソードに隠された数学に対する敬意、それ誰にも気づかれないやろっていうところにまでこだわる姿勢(例えば、あるシーンで黒板にちょこっと書かれた3987^12+4365^12=4472^12って式とか)、素晴らしいなぁと思いながら読みました。
私が一番好きなのは、タクシー数・1729のエピソード。
パトニーで病に伏す彼(ラマヌジャン)を見舞ったときのことである。
私が乗ったタクシーの番号が1729だった。特に面白味のない数のように思われたので、よからぬお告げでなければいいのだが、とわたしは彼に言った。すると彼はこう言ったのだ。「いやいや、それはともて興味深い数ですよ。二通りの異なる方法で、二つの三乗の和として表される最小の数なのですから」
●わたしが正義について語るなら
逆転しない正義は献身と愛です。
ご自身が半生を振り返りながら書かれる、愛や正義についての文章。
四谷三丁目のアンパンマンショップの前を通るたびにこの本を思い出します。
聞いたことがない人がほとんどかもしれません、ナウル共和国。
ぜひ読んでくださいこの本。父にも紹介したところ、one of his life-time bestsに入ったようです。
●パクリ経済
- 作者: カル・ラウスティアラ,クリストファー・スプリグマン,山田奨治(解説),山形浩生,森本正史
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2015/11/26
- メディア: 単行本
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著作権が認められないけど、どんどん新しいアイディアや製品が生まれてくる領域があります。
料理、一部のファッション、コメディ、スポーツやボードゲームなどの戦術、フォント、、、、などなど。
著作権保護を主張する背景にある「コピーは創造性を殺す」「イノベーションのための権利保護を!」そんな主張は本当に成り立つのか。
少し厚めですがすいすい読める、なめらかな本でした。
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こんな感じでした。また3ヶ月後に。
まとめ#8 2016年1~3月】読んでよかった本5冊
こんにちは。
2016年最初の3ヶ月は、発刊時期が最近の本を中心に手を出してみました。
そのうちの5冊です。
本を読むことで、普段触れないテーマにも興味の飛び地を置いていく。そんなことを考えています。
もっともっと力をつけて、いろんなものごとにアプローチできる人になりたいと思います。
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●地理の話大全
誰もがその先を聞きたくなる地理の話大全 (できる大人の大全シリーズ)
- 作者: おもしろ地理学会
- 出版社/メーカー: 青春出版社
- 発売日: 2016/01/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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まず著者。「おもしろ地理学会」。この時点で購入決定。
"知らなくても生きていく上で全く困らないけど、なんとなくの小咄のネタになる知識"があふれています。
地球上で最も登りやすい「大陸最高峰」は?
ベトナム人の40%が同じ名字なのはなぜ?
「岩手」という県名の由来は?
今まで行ったことのない土地も、少しだけ身近になったような気がします。
●アメリカは食べる --アメリカ食文化の謎をめぐる旅
「エコノミストの昼ごはん」 を読んだ後にその続きで手を伸ばした、700ページ超えの大著。
アメリカの食文化の謎、とタイトルにはありますが、内容はアメリカ史に対する洗練された考察でした。
アメリカは、移民たちの各自の食の文化を、アメリカの「食文明」に仕立て上げるしかなかった。それが「アメリカ食」の宿命であった。(本書あとがき、pp.724)
なぜアメリカの食はある面で画一的なのか、アメリカの中華は東アジアで食べる中華と異なるのはなぜか、などなど、深く深く潜っていく素敵な本。
●GDP --<小さくて大きな数字>の歴史
経済学部卒ながら、知らないことが多い概念でした、GDP。
アメリカの経済分析局はGDPについて「20世紀で最も偉大な発明の一つ」としています。その他の偉大な発明、インターネットや化学素材などと同じで、戦争のために生み出された概念がこのGDPなんだと、初めて知りました。
「資本主義の終わり!」「幸福度だ!」と言い出す方々に反射的に冷たい視線を送ってしまう私ですが、そんな方々にも是非この本をご一読いただくことをお勧めしたいです。
GDPは最近流行りの「幸福度」のような指標よりは確実に役に立つ。ただし、GDPだけで景気が図れるかというと、そうではないと私は考えている。GDPは20世紀の大量生産経済を前提とした指標であり、21世紀の経済における急速なイノベーションやデジタル化された無形サービスには対応しきれていない。(本書はじめに、pp.12)
●自分では気づかない、ココロの盲点
自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80 (ブルーバックス)
- 作者: 池谷裕二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/01/21
- メディア: 新書
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ありがとう、ブルーバックスシリーズ、大好きです。
本書の内容、例えば、、、、、、、、、
「あなたのユーモアの理解度は世間でどのくらいに位置していると思うか」という質問を投げると、ユーモアの理解力のない人ほど「自分はユーモアがわかる人だ」と実力以上に実力評価をします。これを、ダニング=クルーガー効果といいます。
上の例を見て、皆さんどんな反応をされますか?
①いるいる、そういう人!
②もしかしたら私がそうかも
これ、多くの人が①を選択します。ヒトは「自分は公平で正しいのに、他人は視野が狭くて偏見に満ちている」と考えがちです。Bias Blind Spotと呼ばれる現象です。
こんな事例が80コ。
自分をメタに認識するために、持っておきたい視点。
●中国第二の大陸 アフリカ --100万人の移民が築く新たな帝国
中国がアフリカに膨大な投資をしている、というお話を聞き始めてから何年も経ちますが、中国出身者ひとりひとりが各国でどんな生活をしているのかを読んだのはこれが初めてでした。
「儲けたかったら中国人がいる国に行くべきだ。なぜなら、それがその国には大金持ちになるチャンスがあるということだから」
面白いです。すごく生々しい。
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4月以降も楽しみです。
のぞみ
まとめ#7 2015年】今年の読んでよかった19冊+年末年始に読みたい積ん読7冊
年の瀬ですね。
今年もたくさんの本を読むことが出来、2009年から始めた読書記録もやっと1,000冊になりました。
何冊か、この12ヶ月で読んだもののうちからご紹介します。
●あなたの人生の科学
あなたの人生の科学(上)誕生・成長・出会い (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: デイヴィッド・ブルックス,夏目大
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/11/05
- メディア: 文庫
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2012年に出た単行本「人生の科学」の文庫本化。「人は無意識で動く」がメッセージ。
生まれてから、成長して、恋愛して、仕事をして、そして死ぬまで、人生の要所にまつわる科学のエッセンスが散りばめられていて、面白かったです。
●ジョコビッチの生まれ変わる食事
今年の後半にだいぶ痩せまして、参考にしたのがジョコビッチのこの食事法。
「食事は情報である」、つまり一気に取るのではなくゆっくりと咀嚼しながら、という比喩はよく腹落ちしました。
ゆっくり食べましょう。
●エラい人にはウソがある
「孔子なんて、屁理屈とつよがりと負け惜しみにあふれているおっちゃんですよ」っていうことらしい。確かに。
過去の人を勝手に神格化しちゃうってありがちですよね。
●僕には数字が風景に見える
サヴァン症候群の著者。タイトルの通り、数字が風景に見える。素数は必ず美しく、だからこそ一目見てわかるとのこと。
あと、語学の天才。アイスランド語を一週間で覚えるとは。。すごい。。
自分の子供がどんな症状を持っていても、大切に育ててあげたいなぁと思いました。
●しんがり 山一證券最後の12人
利だけで動く企業人にはなりたくない、と強く思わされる本。
自らの組織の膿を出し切るため、自身にメスを入れていく12人のメンバー。ただ「正しいことをする」という目的のためだけに。
この文章を読んで、すごく楽になった思い出があります。
会社の評価など、人生のある時期に、ある組織の、ある人達によってくだされたものにすぎない。嘉本は頑なに信じていた。棺を閉じるまでの評価でもなければ、まして人格評価でもないはずだ。
●異文化理解力
異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養
- 作者: エリン・メイヤー,田岡恵,樋口武志
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2015/08/22
- メディア: 単行本
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評価のときの語り方や受け取り方、議論の仕方まで、出自となる国によっていかに違うかが明確にわかります。
帯に「日本人の8割にはいらない」と書いておりますが、どんな要素で違いを認識しているのか、それを知るだけでも価値があります。
●決してマネしないでください
今期読んだ中でも最高のマンガの1つ。兄が所属する研究室でも「(科学的に)よく出来てる」と話題らしい。
来年2月に出る3巻で完結してしまうのが残念。
●ゼロからトースターを作ってみた結果
ロンドンのRoyal College of Artの人が、卒業制作として行ったプロジェクトの記録。
銅線をつくるために、銅鉱山まで行って掘る、その徹底した姿勢たるや。
●ミリタリーテクノロジーの物理学<核兵器>
ミリタリーテクノロジーの物理学<核兵器> (イースト新書Q)
- 作者: 多田将
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2015/07/10
- メディア: 新書
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最後の方に有る、この文章が心に残っています。
こんなことを言うと嫌な顔をする人がいるかもしれませんが、僕は、核兵器が「非人道的な兵器」だとは思っておりません。
なぜなら、それはまるで「人道的な兵器」というものが存在するかのような言い方だからです。人を殺すのに、「人道的な殺し方」など、あろうはずがありません。そしてまた、兵器がなくなれば平和が訪れるわけでもありません。もし仮に今存在するすべての兵器を取り上げたとしても、人類は、そのあたりに転がっている棒切れを拾って、殺し合いを続けるでしょう。それは全く本末転倒なのであって、本来は、平和が訪れた時に、人々が本当に平和を求めたときに、自然と、人々は兵器を手放すのです。
●失われていく、我々の内なる細菌
抗生物質の有用さを語りつつ、それによって失われていく細菌たちの本。
自分の体だと思っているものの中に、100兆もの細菌がいるかと思うとびっくりです。
●僕らの哀しき超兵器
ぼくらの哀しき超兵器――軍事と科学の夢のあと (岩波現代全書)
- 作者: 植木不等式
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/08/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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名作。著者名の「植木不等式」だけでも大好きになれる。
氷で作った船、爆弾を背負わせた猫、、、追い込まれると、いろんなことを考えつくものです。
人間の想像力には限界がないんだということを思い知らされます。
●天才たちの日課
天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々
- 作者: メイソン・カリー,金原瑞人,石田文子
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
- 発売日: 2014/12/15
- メディア: 単行本
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作家やアーティスト、研究者、天才と言われる人たちのライフスタイルが纏められてます。
朝型、夜型いろいろありますが、みんな熱中型。熱量の高さがなにより、ですね。
●ルシファーエフェクト
- 作者: フィリップ・ジンバルドー,Philip Zimbardo,鬼澤忍,中山宥
- 出版社/メーカー: 海と月社
- 発売日: 2015/08/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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スタンフォードで行われた「監獄実験」。善良な人間をランダムに囚人と看守に振り分ける。その役割が彼らを変化させていく。最終的には、予定されていた期間の半分も行かないところで実験は中止となりましたが、逆にその結果が世の中に衝撃を与えました。
環境や立場がいかに人間を変貌させるのか。人は脆いものですね。
●世界最高のバイオテク企業
科学に基づくとはまさにこういうこと、と思わせてくれる組織、アムジェン。
バイオテックはながーく盛り上がっているので、ぜひ2016年も取り組んでいきたいテーマです。
●ま・く・ら
落語そのものに入る前の「まくら」、その名人と言われていた柳家小三治さんのお話をまとめた本。
落語家さんのお話は素敵です。適度に肩の力が抜けていて。
●二つの祖国
東京裁判が今年話題になりました。
米国で日系2世として育った新聞記者が、日米両方でアウトサイダーとして扱われる中で、自己のアイデンティティと向き合う。
山崎豊子作品は何度読んでも新しい発見がある、ぜひ本棚においておきたい本です。
●宇宙を目指して海を渡る
宇宙を目指して海を渡る MITで得た学び、NASA転職を決めた理由
- 作者: 小野雅裕
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2014/04/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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タイトルまま。モチベーション上げるときにぜひ。
●いい会社をつくりましょう
長野県の名企業、伊那食品工業の社長が記した経営の本。
企業・チームに芯を通すディシプリン。それがどれだけ社員・メンバーに浸透しているのか。
企業向けで安定収益を確保しつつ、消費者向けにも商品開発を怠らないこの企業の姿勢はいつも参考にしたいと思っています。
●生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか
東工大で行われた、研究者が「なぜ自身がその研究をしようと思ったのか」というテーマで語った講義が本になりました。
子どもの時から明確に意識してその職についた人から、流れ流れて行き着いた人まで、いろんな人生が垣間見えて素敵です。
※以下、年末用の積ん読
◆理不尽な進化
◆植物は<知性>をもっている
植物は<知性>をもっている―20の感覚で思考する生命システム
- 作者: ステファノ・マンクーゾ,アレッサンドラ・ヴィオラ,マイケル・ポーラン,久保耕司
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/11/20
- メディア: 単行本
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◆NASAより宇宙に近い町工場
- 作者: 植松努
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2009/11/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 4人 クリック: 389回
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◆バイオデザイン
- 作者: ステファノス・ゼニオス,ジョシュ・マコーワー,ポール・ヨック,日本医療機器産業連合会,日本医工ものづくりコモンズ
- 出版社/メーカー: 薬事日報社
- 発売日: 2015/10/07
- メディア: 大型本
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◆春風夏雨
◆「見えざる手」と「見えざる心」
「見えざる手」と「見えざる心」 ワーク・アンド・ファミリーのゆくえ (上智大学新書)
- 作者: 平尾桂子
- 出版社/メーカー: ぎょうせい
- 発売日: 2015/09/11
- メディア: 新書
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◆意識と脳
2016年も楽しく本を開いていこうと思います。
良いお年を。
まとめ#6 2015年7-9月】読んでよかった本5冊
だいぶバタバタした3ヶ月でしたが、ちょこちょこ時間をつくって少しずつ読書しています。
手に取る、実際に買う、読んでみて「おぉ」と感じる本の種類がそれぞれどう変わってきたのか、改めて振り返ってみると面白いと感じてます。
この3ヶ月は、当たりが多かった気がしています。2015年最後の3ヶ月もしっかり時間を確保して、ゆっくりお勉強&リラックスできればいいなぁと願いを込めつつ、今期面白かった本を5冊ご紹介します。
●ルシファーエフェクト byフィリップ・ジンバルドー
「悪の陳腐さ(the banality of evil)」
ナチス犯罪に対する裁判レポート中で、執筆者ハンナ・アーレントが記した言葉です。
ユダヤ人を含めた数百万人の人間を強制収容所に送り込み、ホロコーストの中心的な役割を果たしたアドルフ・アイヒマン、彼は非道な行為を行う"特別な"悪をまとった人間だったのか。実際の裁判を観た彼女は、アイヒマンは決して特殊な個人ではなく、どこにでもいる"有能な官僚"であると結論づけます。そんな彼にさえ悪は憑依しうるのだと、悪というものはそれほど特別なものではなく誰にでも/どこにでも起こりうるのだと表現したのが、冒頭の言葉。
"悪の陳腐さ"というアーレントの言葉が共感を呼び続けているのは、世界のあちこちで大量虐殺が起こり、拷問やテロリズムが依然として地球上にあふれているからだ。私達はこうした心理から距離を置き、悪人の愚行や暴君の無分別な暴力を個人の気質の問題とみなしたがるが、アーレントの分析は、人間がいかに変わりやすいかを示し、個人の気質に帰結する姿勢を否定している。社会的な勢力は、人間のこの変わりやすさにつけ込むことで、普通の人々をぞっとするような行為にかりたてていくのだ。(pp.467)
本書の中で、ジンバルドーは、自身が行ったスタンフォード監獄実験を通じてそれを立証します。看守/囚人というランダムに割り当てられた役割を通じて、20歳前後の若者(及び参加した著者やまわりの大人たち)の行動/精神状態がいかに変化していくのか。本書の冒頭は、その詳細なレポートから始まります。日曜日、彼らが突然集められ、金曜日、予定よりも1週間早く実験を中止するまで。個人としては善良で何も問題がないように見える人間が、刑務所という仮想空間に置かれるだけで、豹変する。
組織や風土が個人に与える影響がどれだけ大きいのか、示唆深い文章です。
800ページにも渡る大部で読み応えたっぷりです、ぜひ手に取ってみてください。
- 作者: フィリップ・ジンバルドー,Philip Zimbardo,鬼澤忍,中山宥
- 出版社/メーカー: 海と月社
- 発売日: 2015/08/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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●すばらしい新世界 byオルダス・ハクスリー
2015年4月、中国の研究チームがヒトの受精卵に世界初の遺伝子操作を行ったことが論文を通じて発表されました。髪や眼の色、得意なスポーツ、知性などを親が望むようにコントロールした上で生まれてくる「デザイナーベビー」が生まれてくる日が近づいてきているのかもしれません。
本書で描かれるのは、それよりももっと進んだ社会。西暦2540年、人は受精卵の段階からビンの中で培養され、生まれる前から階級が完全に固定され仕事から居住区まで総てが固定化されている。睡眠時教育で価値観が醸成され、このような状況に疑問を持つことはない。加えて、副作用のない麻薬が開発され、ほんの少しの辛さもそれで紛らわすことができる。まさに「すばらしい新世界」です。
ハクスリーはこの"ユートピア"を支持しません。それは、培養にミスがあったために、上記のような価値観に対して疑いをもつ主人公の存在と、以下の記述に凝縮されます。
確かに現在は厭わしく、現実はおぞましいーーけれども、嫌悪を催すほど切実なものであるからこそ、この現在の現実はすばらしく、意義深く、この上もなく大切なのだ。(Kindle版 No.3,101-3,103)
悩むこともなく、快楽に身を委ねる生活は幸福なのか。私達にとっての理想社会とはどのようなものなのか。
この本が書かれたのは1932年。80年以上も前です。"人間中心"が大きなテーマとなり科学技術がどんどん前進していく現代にも生きる、深い洞察があるように思います。
●僕らの哀しき超兵器 --軍事と科学の夢のあと by 植木不等式
面白さ全開。
世の科学者とは、なんて想像力豊なんだろう。
氷で出来た空母、発火物を背負い木造建築物に忍びこむコウモリ、おがくずに混ぜた細菌兵器、、、
どれも時代の要請や技術力の不足から頓挫していった「哀しき」アイディアたちだけど、今なら!と思うものもちらほら。
個人的に一番の衝撃だったのは、1970年代のチリで、工場・生産設備をすべてつなげて管理する構想があったこと。Industry4.0の先駆けが、社会主義的な計画経済運営の妖精から生まれてくるのはある意味自然なことなのかもしれないですが。
科学は夢を語る。語られた夢に、人々は夢を託す。夢の駄賃に税金を払う。科学はそれを食べて育つ。食べて私たちにまた夢を見せてくれる。夢の下地がたとえ兵器であろうと、何だろうと。
科学は獏だ。夢を糧にする。そして私たちもまた。
人間は獏である。(pp.43)
植木等をおもいっきり意識した著者名も、個人的にはツボでした。
ぼくらの哀しき超兵器――軍事と科学の夢のあと (岩波現代全書)
- 作者: 植木不等式
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/08/20
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●二つの祖国 by山崎豊子
7月あたり山崎豊子祭りをしていました。その中でも一番刺さったのがこれです。
太平洋戦争に突入しようとする時代の米・カリフォルニアに生きる日系二世が主人公です。アメリカでは日本人として、日本ではアメリカ人として、どこにいってもアウトサイダーとして扱われるなかで生じるアイデンティティの揺らぎを、とても丁寧に描写しています。
後半、東京裁判の描写がなされていますが、この本を通じて初めて知ったこともたくさんありました。インドのパール判事が全体の判決に与しなかったことは有名ですが、判決に際して1,235ページもの意見書を提出し、かつその根拠が「事後法であるため」とうところにあったことは本書を通じて学びました。また、清瀬弁護人のこの発言も。
「我々がここに求めんとする心理は、一方の当事者が全く正しく、他方は絶対不正であるということではありませぬ.......われわれは困難ではありますが、近代戦争を生起せしめた一層深き原因を公正に探求せねばなりませぬ、近代戦争の悲劇の原因は、人種的偏見によるのであるか、資源の不平等によるものであるか、関係政府の単なる誤解に生ずるのか、裕福なる人民、又は不幸なる民族の強欲乃至貪婪にあるのか、これこそ人道のために究明されなければなりませぬーー」(kindle合本版 No.17,257-17,263)
山崎豊子作品は、何度も何度も読み返したくなるものばかりですね。すごい。
●へぐりさんちは猫の家 by廣瀬慶二
ほっこり。
とにかく癒やされました。動物と一緒に生活したいです。
積ん読が溜まってきています。これからも、わくわくしながら読み進めたいと思います。