ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#17『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』カイシャとは何か?

私たちがあたりまえに受け入れている「会社」という存在。冷静に考えると、なかなか不思議だったりします。

たくさんの人が会社に所属してお金を稼ぎ、その働く中でも、どこか他の会社に営業をしたり、また別の会社から仕入れをしたりします。仕事を終えて家に帰るときもある会社が運営するお店によって買い物をし、色んな会社からかった物であふれる自宅に帰ります。

「会社」ってなんだろう?

この本はそんな疑問から始まります。

法人、つまり法律が定義した「人」ということになります。「カイシャには実体がないけれど、法律の上では『人』として取り扱おう」と定義しているわけです。人間が仮想的に作り出した生きもの、それが法人、それがカイシャです。たとえるならば、「妖怪」のような想像上の生きもの をイメージするとよいでしょう。
実際には存在しないのだけれど、存在すると仮定して、その存在に名前をつけて、人のように扱っていこう、ということになります。(Kindle位置:195)

この本の著者はサイボウズの現代表取締役・青野さん。

少し前に、夫婦同姓・別姓の選択権に関する訴えを裁判所に提出したことでも話題になりました。

www.change.org

会社という妖怪

彼がこの本の中で、会社を「妖怪」に例えるのには、わけがあります。

一つには、実態がないこと。「会社を指さしてください」といっても、その存在を示すことはできません。

もう一つは、死なないこと。会社には、「継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)」という考え方が適用されており、社会の公器として、半永久的に存続していくことを期待されています。

そしてさらに、実体がないにもかかわらずお金で太っていくことです。

実体がない上に死なない。まさに妖怪です。
カイシャと雇用契約をした生身の人間が頑張って働いて、事業がうまくいって、利益が出て、内部留保が増えれば増えるほど、妖怪「カイシャ」の寿命は伸びていきます。そして、お金が貯まれば貯まるほど、所属する人間が多くなればなるほど、社会的に大きな力を持つようになります。
最初は小さかった妖怪が、どんどん巨大化していく。まさにモンスター。(Kindle位置:235)

妖怪代理人としての代表取締役

タイトルにある、『会社というモンスターが僕たちを不幸にしているのかもしれない』という懸念は、この実態のない会社を太らせようとする仕組みにあります。

会社という妖怪を太らせたいという思いを強く持っているのは、代表取締役という人です。この代表取締役は会社という妖怪の代理人で、会社が大きくなるに従ってその代理人として社会的名声も得られるし、自身の決定一つで報酬額を大きく増やすこともできてしまいます*1

なので、自身のことだけを考える代表取締役が働く会社に入ると、その社員は不幸になる、と。

日本のカイシャが楽しくないのは、「社員を我慢させる仕組み」で運営されているから。
その仕組みを作っているのは、カイシャの代理人である代表取締役。(Kindle位置:424) 

あらゆる会社が、成し遂げたいこと・目指す世界があって立ち上がっていくのに、代表取締役が会社というモンスターに飲み込まれていくと、おかしなことになっていく。

カイシャが世間に知られるようになっていくと、経営者が周りの目を気にするようになり、いつの間にか目的が「売上を伸ばす」「利益を増やす」となって、「利益を増やしますから、代表をやらせてください」となってしまう。
こうなると企業理念を重んじることすらなくなります。 企業理念に「お客様第一」と掲げていても、実際の現場では「今月のノルマ達成が一番大事だ」と、優先順位が入れ替わってしまう (Kindle位置:448) 

会社というコンセプトが壊れる時代に

私たちの世代の人を見ると、会社に所属をせずに仕事をしている人が多くいます。少し前にも、フリーランス市場の成長が記事になっていました。

www.lancers.co.jp

この背景には、会社という組織に対する不信感があると思います。

「毎週末会社に行って仕事をしているのに達成感がない。やっていることの意義を感じない」

「こんなに売上を上げているのになんでこんなにお給料が低いの?」

「私がこんなに頑張っているのに、さぼってるおっさん・おばさんのほうが給料高いのは納得できん」

こんな声、よく聞きます。

おそらく、今の若い人たちは、モンスターの正体に薄々気づいているんじゃないでしょうか。
我慢レースを強いられて、自分の成長を妨げられるかもしれない。
もし何かあったときには放り出されるかもしれない。
長い人生を考えるとリスクが高い職場だと感じているのかもしれません(Kindle位置:1,558)  

青野さんは、会社という存在をもっとカジュアルにしていくことを提案しています。 

会社法等の制度上いろいろ制約があるのかもしれませんが、もっとプロジェクトチーム的に、ぱっと作ってぱっと解散する組織があってもいいと思っています。

「カイシャは永続すべきである」と言われることがありますが、私はそれには賛成しかねます。
これからの時代、もっとカイシャは作りやすくて、解散しやすいものになる と思っているからです。だから、理念が弱くなってしまったカイシャは、むしろ早くリセットしてしまったほうがいい。(Kindle位置:488)

 そんなプロジェクトチーム時代に必要なスキルとして、青野さんは人に依頼する・一緒に働くスキルを上げます。

「人のスキルを借りる」ために大事なのが、「頼むスキル」です。
「頼むスキル」の高い人は、まず、自分に何ができて、何ができないかを認識しています。
そして、誰に頼むのがよいかを考え、場合によっては新しい人脈を切り開いてでも、できる人を見つけ出します。(Kindle位置:937)

おわりに

面白い本でした。大学院を出てからずっと「会社」に所属してきた自分として、改めて振り返るができるような、これからの働き方を考えさせられるような、いい本でした。

4月になって新社会人の姿を沢山みかけますが、社会人なりたてくらいのときにこの本を読んでいると、自分の会社を冷静に見ながら心穏やかに過ごしていけるかもしれません...

会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。

会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。

 

 

*1:社会人になって、代表取締役と社長、というのは全く別のものなんだということを初めて知りました

記録#16『強いチームはオフィスを離れる』いい仕事をするためにオフィスは必要なのか

最近は働き方の多様化についていろんなところで議論がされていて、そのテーマの一つにリモートワークがあります。

日本で最初にテレワークが盛り上がった2000年代前半には企業単位でのリモートワーク導入率は20%近くまで高まりましたが、最近は10%程度まで落ち着いて着ているようです。*1

その理由としては、

  • セキュリティに不安がある
  • 社内コミュニケーションが不調になる
  • 柔軟・スピーディな連絡が取りにくい

などの課題が挙げられているようです。

私はリモートワーク推進派、PCとモバイルWifi片手にお外で仕事をしたりしています。下の記述に首がもげるぐらいうなずく。

なぜ会社にいると仕事ができないのか  本当に集中して仕事がしたいとき、あなたはどこへ行くだろう?  まわりの人間に、そうたずねてみてほしい。「会社」と答える人は、ほとんどいないはずだ。(Kindle位置:84) 

 

色んな人に話を聞くと、リモートワークはシステムの問題ではなく、人材・チームの質の問題だと感じます。

  • セキュリティに不安がある ⇨ ICTとしてのセキュリティはオフィスでもリモートでも一緒。結局社員の意識、会社の文化。
  • 社内コミュニケーションが不調になる ⇨ 質の高いコミュニケーションができる人をとり、チームを作る。
  • 柔軟・スピーディな連絡が取りにくい ⇨ 突発的な連絡を取らなくてもいい制度づくり、それでも付加価値を埋める個人・チームの育成

この本を読んで、その思いを新たにしました。

グローバル×多拠点で大成功を収めた37 Signals

37 Signals(現・Basecamp)はシカゴに本拠地を置くWebアプリケーションの開発会社。代表的な製品はプロジェクト管理ツールのBasecampで、現在はオープンソースとなっているプログラミングフレームワークRuby on Railsは元々この37 Signals向け開発されたものだったとのこと。

この会社の思想は明確で、

  • 個々人の能力が最大限発揮される環境・時間帯で働いてもらおう
  • チームの連携は必要なツールでできるよね、対面じゃないとできないようなレベルの低い人は採用しません

ということだと感じました。素晴らしい。

部下が信用できないなら、それは人材採用が正しくできていない証拠です。
成果のだせない社員や、自分の作業スケジュールを管理できない社員は、会社に必要ありません。それだけの話です。我々はスキルの高いプロフェッショナルだけを採用します。
自分のスケジュールを管理し、組織に貢献できる人間だけが生き残ります。
わざわざ会社で子守りをする余裕はありません(Kindle位置:385) 

危機対策としてのリモートワーク

 地震などの自然災害、突然の社員の退職、様々な事業の継続リスクがあるなかで、オフィス勤務にこだわるのはそのようなリスクに対して脆弱性を持ち続けることだ、とも指摘しています。

システムの世界には、SPOF(Single Point of Failure)という言葉がある。
その部分が壊れたらシステム全体が止まってしまうような、致命的な弱点を指す言葉だ。システムの信頼性を高めるには、SPOFを事前に発見して取り除くことが重要になってくる。
どんなに頑丈なものも、いつかは壊れる。だからその部分が壊れてもいいように、バックアップを用意しなくてはならない。ひとつが壊れたとたんにすべてが終わるようでは、あまりにも危険すぎるからだ。
社員全員を毎日オフィスに来させるのは、会社にとってのSPOFだ。(Kindle位置:772) 

社員全員にオフィス勤務を義務付けると、

  • 地方に住んでいる優秀な能力を持つ人間を採用できない
  • 社員の家族に変化があったときに退職をされてしまう 

などなどの問題が起きることが想定されます。SPOFを排除するためのリモートワーク導入、なるほどでした。 

生産性を高めるTipsいろいろ

社員に力を発揮してもらうためのリモートワークですが、それ以外の要素についても考えつくされているなと思いました。

  • ミーティングは料理の塩のようなもの。メインの素材(仕事)があってそこに少し加えるくらいがちょうどいい
  • 仕事以外の趣味を持っている人を雇う。燃え尽きを防ぐ
  • 1日4時間はコアタイムを作ってコミュニケーションを生む
  • それぞれの顔ではなくスクリーンを共有しながらミーティングをする。コミュニケーションの具体度が上がる

早速参考にしたい内容がたっぷりでした。

 

この会社が以前出している『小さなチーム 大きな仕事』もおすすめです。こちらも合わせてぜひ。

小さなチーム、大きな仕事 働き方の新しいスタンダード (ハヤカワ文庫NF)

小さなチーム、大きな仕事 働き方の新しいスタンダード (ハヤカワ文庫NF)

 
強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」

強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」

 

 

*1:正確には、テレワークの導入率。情報通信白書より

記録#15『セネカ 哲学全集(5)』倫理書簡集、理性に生きる。

高校の世界史や倫理を学んだときにでてくる、ギリシャ哲学の流派。

  • ストア派:理性により感情を制すことで不動心に達することを理想とし、確固たる自己の確立をめざす
  • エピクロス派:死を恐れたり不安に思ったりすることは無意味であるとし、感覚に基づいた穏やかな快楽を求める

そのストア派の考え方を現代に残す哲人の一人がセネカです。

過去に読んだマルクス・アウレリウス・アントニヌスの『自省録』の中で、セネカの名前がたくさんリファーされていて、その代表作・倫理書簡集を読んでみました。

 

倫理書簡集は、書簡集の名の通り、晩年のセネカがルーキーリウスという親友に宛てた手紙をまとめたもの。
一つひとつの言葉に、この友人への思いやりが垣間見えます。

わずかしか持たぬ人ではなく、より多くを欲しがる人、それが貧乏人だ。どんな意味があるというのか、どれほどの財が金庫に、どれほどの蓄えが蔵に眠っていようと、どれほどの家畜を養い、どれほどの利ざやがあろうと。他人のものに手を伸ばそうとし、すでに獲得した財産ではなく、これから獲得しようとする財産の計算をしているのだから。富の限度はどこか、と尋ねるのかね。まずは必要なだけを持つ、次は十分なだけを持つ、というところだ。(pp.6) 

落ち着きを持って行動すべきであり、行動するときは落ち着くべきである。自然の理を相談相手に思案したまえ、自然は君に語るだろう、自然は昼と夜の両方を作った、と。(pp.9)

日々よく心の準備をして、人生を去る時に平静でいられるようにしたまえ。多くの人々は人生にすがりついて離さず、ちょうど濁流にさらわれる人が棘ある草も角の立った岩もつかむようだ。ほとんどの人は死への恐れと生の苦しみのあいだで不幸な漂泊をし、生きることも欲しないが、死に方も知らない。だから、君の人生を喜ばしいものにするには、人生の不安をすべて捨て去ることだ。どんな幸せなことも、それをいま手に入れている人に失ったときの心構えができていなければ、幸せにはしてくれない。しかるに、失ってももっとも気が軽くすむのは失って惜しいと感じられないものだ。それゆえ、どんなに強大な権力者にも降りかかりうる事態に立ち向かえるよう自分を激励し、心を強くしておきたまえ。(pp.10) 

賢者の自足はどれほどのものか。ときには自分の一部にも満足する。手を病気や敵のせいで切り落とされたとしても、何かの事故で片目か両目を無くしたとしても、残ったところで十分であると考え、一部を欠いた不完全な身体にも五体そろっていたときと同じように喜ぶだろう。しかし、落部分があったら良いのにと惜しむこともない一方、欠落している方が良いとも思わない。賢者の自足とは、このようなものだ。友人を持たぬことを欲するのではなく、持たずともいられる。「いられる」という意味は、つまり友人を失っても平静な心を保つということだ。(pp.28)

エピクロスから拝借することにしよう。「多くの人にとって富を築いても不幸は終わらず、変化しただけだった」これは不思議な事ではない。実際、疵は物ではなく、他ならぬ心のなかにある。貧乏を私たちの重荷としていたものが、富を重荷としただけだ。病人を寝かせるベッドは、木製でも黄金製でも違いはない。どこへ病人を移しても、病気も病人と一緒にそこへ移るだろう。それと同様に、病んだ魂の置き場所は富の中でも貧乏の中でも違いはない。病苦はあとをついてくる。(pp.66)

輝きと光には違いがある。光には確かな、それ自体の源を有するが、輝きはほかからの借り物で光る。(pp.80)  

自然は私たちに愚痴をこぼして言わねばならない。「これはどういうことか。私たちがお前たちを生んだときは、欲念も、恐怖も、迷信も、背信も、その他の悪疫もついてはいなかった。お前たちが入場したときと同じ姿で退場せよ」
知恵を感得した人とは、誕生のときと同じように不安なく死を迎えられる人のことだ。(pp.89) 

流れ行く世界を渡っていく、確たる自己を持つために。

実務でも成功し、政治でも様々荒波を乗り越えてきたセネカが送る、素晴らしい人生訓にあふれています。 

セネカ哲学全集〈5〉倫理書簡集 I

セネカ哲学全集〈5〉倫理書簡集 I

 

 

記録#14『ブレイン・プログラミング』目標達成のために自分を"プログラム"する

『話を聞かない男、地図が読めない女』の著者による、半分自伝的な内容+自己啓発の本。

 

ダイエットをしたい、仕事で成果を出したい、結婚をしたい、、、、

新しい年を迎えるとき、環境が変わったときなど、私達は目標を立て、将来の自分にワクワクし、そして多くの場合それは失敗に終わります。

なぜでしょう?

↑の本がベストセラーとなりながらも会計士の不手際で多くの資産を失い、そこから立ち上がったアラン/バーバラ・ピーズ夫妻はこう言います。

「"何(What)"をするかを決断すれば、"方法(How)"は自然とついてくる。脳が自動的にHowを探し当てる」

「Whatに集中しなさい。Howを最初から考えているからなかなか実行ができないんだ」

「目標を立てるだけではダメで、それを自分の脳に埋め込んで(ブレイン/プログラミング)いかなくてはいけない」

あれ、なんとなく胡散臭い匂いが...

脳の情報自動選別機能・RAS

この主張には脳機能に基づいていました。

脳内のRAS(網様体賦活系:Retcualar Activating System)という構造に焦点が当てられていて、このRASは「脳に入ってくる情報をふるいわけて、何に注意を向けさせるか、どれくらい関心を呼びおこすか、どの情報をシャットアウトして脳に届かないようにするかを判断する」機能を持っていると。そして、このRASにより、脳が得ている情報のうち99.9%以上を私達が意識することなく処理できているらしい。

すごい、ありがとう私のRAS...

目標達成をしたいのなから、自分のRASをプログラミングすること。それは、

  • 目標達成のために役立つ情報が勝手にRASに捨ててしまわれないようにする
  • あるいは、RASがその情報をはっきりと認識できるようにする

の視点で。

具体的には何をしたらいいのか?

  • 目標をはっきり明確と紙に書いてとにかく見まくること。
    日々の膨大な情報の中で、RASに優先してプログラムするためには、その内容が明確でありかつたくさんそれに触れることが必要。

人生で自分の望みをかなえることができないのは、たいていの人の場合、どうすればそれをかなえられるのかに気をとられてしまうからだ。他人が何かを達成しても、それを見て「でも、どうすればあんなことができるのか、わからないからなあ」と考えてしまう。だから何もしない。それではいけない。
考えなければいけないのは、何をしたいかである。何か目標を達成しようとするとき、もっとも大事なのは、「何がしたいのかをはっきりさせること」だ。どうすれば達成できるのかを考えてはいけない。そんなことはRASが考えてくれる。Kindle位置:548)

  • できれば手書きで。
    キーボードタイプとは差があるらしい。古めの研究だから今は違いのかもだけど。

目標を手書きしたときの達成率と、キーボードでタイプしたときの達成率を比べたのである。すると手書きするだけで、達成率は 42 パーセントも上がることがわかった(Kindle位置:645) 

  • 目標はとにかく具体的に、Howが見えなくても、5W(When、Whereなど)を書いちゃう。
    HowはRASが勝手に考えて見つけてくれるらしい
  • 変化量ではなく、状態で目標を書く。
    「体重を10kg減らす」ではなく「体重65kgになる」という目標のほうが達成率が高い。RASは状態はイメージできるが、変化量はイメージできない。

そんなことより感動した言葉

↑のようなことがつらつら書いてあるんですが、私が一番いいなぁと思ったのは本の中で紹介されたとある米国人男性のエピソード。

27際のときに車の炎上事故に巻き込まれ全身の65%に火傷をおう。 その後復帰してパイロットになるが墜落事故を起こし車椅子生活に。そんな災難にもめげず、最後は州議会議員、環境関連の著名な活動家になった人。

その人が残したこんな言葉。

体が麻痺する前の私には、できることが10,000あった。今は9,000ある。
失った1,000を嘆くこともできるが、 残された9,000に全力投球することもできる。 W. ミッチェル
Kindle位置:1,550)

 

自己啓発本ジャイアント・サンマーク出版さんご提供の、良い本でした。 

自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング

自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング

 

まとめ#16 2018年1~3月:読んでよかった本5冊

こんにちは。

2018年に入ってからは、読んで面白かった本はできるだけ個別にブログ記事におこすようにしました。
心に残った文章を引用として残しておければなと思っています。

 

サピエンス全史 

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

 

長いです。長いですが、1冊で10冊にも相当する驚きを与えてくれた本。
私たち人=ホモ・サピエンスをこれだけ地球上に反映させてきたのは虚構を信じる力である、っていうのは驚きポイント。
一昨年に出版されてからまだ色んな人が書評を書いたり読書会を開いているのがよくわかる、興味深い内容でした。時間をあけて再読したら新たしい気づきがどんどん出てきそう。

しんどいオカマの悩み相談

Twitterでご活躍のBSディムさんが、一般の方からの質問に答えたその内容をまとめた本。

パフェよりも甘い恋や、ポテチよりもしょっぱい見栄だって、立派な原動力となってくれる

みたいに、紡がれる一言ひとことがとても素敵。 

 

世界からバナナがなくなるまえに 

世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち

世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち

 

世界中で消費されているカロリーの約80%が、わずか十数種類の作物から得られているという現実。短期的に実りの多い一つの作物に生産が集中し農産物の多様性が失われることで、自然災害や疫病に対する脆弱性が上がってしまう構図。

毎日口に入れているものの背景にある危機について、改めて気づきをくれた本。 

猫はためらわずにノンという

猫はためらわずにノンと言う

猫はためらわずにノンと言う

 

東京、みんなあくせく働き/生きすぎじゃないですか?
気高く自由に、自分の幸せを大切にして生きる猫の姿勢から私たちは多くを学ぶことができるのかもしれません。

猫と一緒に生活するフランス人作家さんが書く、見習うべき猫の姿勢をまとめた本。

 

アルゴリズム思考術 

アルゴリズム思考術 問題解決の最強ツール (早川書房)

アルゴリズム思考術 問題解決の最強ツール (早川書房)

 

いかにコンピュータに考えさせるか、 を突き詰めて生まれた現代のアルゴリズム。コンピュータだけではなく、われわれ人も、そのアルゴリズムから学ぶべきではと思い手を伸ばしました。個人的大ヒットの本。

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 それぞれの本の読後感を個別記事を残しているので、ご関心があればぜひ読んでみて下さい:-)

nozomitanaka.hatenablog.com

nozomitanaka.hatenablog.com

nozomitanaka.hatenablog.com

nozomitanaka.hatenablog.com

nozomitanaka.hatenablog.com

 

記録#13『猫はためらわずにノンという』良い生き方は猫に学べ。

この本のコンセプトは、以下に集約されています。

確かに猫 は、人間よりよっぽど質のいい暮らしをしている。
猫が毎日をどう過ごしているかを観察し、何を思い、何を欲して生きているのかを考えてお手本にしたらいいかもしれない。
(Kindle の位置No.26) 

TwitterInstagramで猫と一緒に生活している方々の猫愛を見るたびに幸せな気持ちになるんですが、
そういう方々は猫から生き方を学んでいるから、より一層幸せに見えるのかもしれません。

自由なら、あとはどうでもいい

東京で生活していると、みんな忙しさに汲々としているなと感じます。
いつか自由に生活をしたい!と考えながら、仕事や日常の雑務で自分をどんどん縛り付けて、自由からあえて遠ざかっているように見える。

猫は自分を縛ることなく、自由に生きている。たまには休みをとって、頭の大掃除をして、自由を体験してみるのが大切

まずは自分のことを考えよ

猫にとっていちばん大切なことは、自分自身の快適さを保つこと、であるように見えます。
そのために自分の縄張りを作りコンフォートゾーンにします。

物質的にも精神的にも、他人の世話をやく前に、自分の面倒をみることをまず考えよう。自分の面倒を一番よくみることができるのは、間違いなく自分自身だ。だって、自分が何をしてほしいかは、自分自身が一番よく知っているわけだから。 自分自身が幸せで生き生きとしていれば、あなたのそばにいる他人にもそれを分け与えることができるはずだ。 さぁ、ちょっとだけ猫のまねをして、あなた自身の縄張りを作ろう。(Kindle位置:No.247 )

猫が静けさを好むわけ

街はどこもうるさくて苦手です。クラクションだったり携帯電話の通知音だったり。

世の中の騒音というものは、それが心の安らぎまで奪っていくからストレスとなる。その前に心の中の静けさを少しでも確保できれば、耐えられる(Kindle位置:No.616) 

猫は静かな環境でこそいきいきします。見習って、うるさいところを離れて、静かなところで頭を整理したいです。

猫は仲間を選んでいる

猫は気の合わない仲間とは付き合わない。一方で人は、鼻持ちならない人や気に食わない人とも、しょうがないなーと色んな理由を付けながらわざわざ近寄っていったりする。

バカなヤツはいる。もともと人間はバカな生き物なのだ。でも、そんなヤツと無理につきあうことはない。あなたの人間関係をバカに捧げる必要はないのだから。 (Kindle位置:No.634)

猫、↑みたいなこと思っていそう。 

欲しいものは欲しいという

なにか欲しい時、人は、言ったり言わなかったり。言ったとしてもふんわりと伝えるだけだったりします。

ほしいときは、明確に。言わないと伝わらないもの。

猫は何かが欲しい時、回りくどい表現をしないし、欲しいものが手に入るまでとことんあきらめない。 (Kindle位置:No.913) 

本当に大切なこと以外にはかまうな

やっていることや持っているものに縛られないこと。大切なことは何?とよくよく問いかける。

猫には、もっている物も社会的な地位も意味がない。他人からどう思われようと、どう見られようと、あるいは批判されようとどうでもいいことなのは、すでに十分見てきた。
いつも自分を取り巻いている環境やもっているものは、いわば鏡の中の自分のようなものだ。いくら磨き上げても本当の自分とは違うのだから、そこまでこだわる必要はないと猫が教えてくれているのだろう。
Kindle位置:No.1,067) 

上を目指すときには猫を眺めよう

高いところを目指すのはいいけど、何があっても自分に優しく。

何かをしなくてはならない時、私たちはわざわざハードルを高めにして、自分に厳しくしてしまいがちだ。それは下手をすると、自分で自分にムチ打つ結果となる。
高い野心をもつのはいい、ベストをつくすのもいい。それがしかしうまくいかない時のことを考えてみよう。失敗した自分にどのくらい寛大になれるか、ここがポイントだ。
あなたが正直で、仕事やプロジェクトにできるだけのことをしたのなら、誰もあなたを責めたりしないはずだ。まして体を壊してでも、どんな時でもすばらしい成果を出せなんて言う人はいない。(Kindle位置:No.1,119) 

猫はためらわずにノンと言う

猫はためらわずにノンと言う

 

 

 自分の生活を冷静に振り返りたくなる、素敵な本でした。

記録#12『快感回路』『依存症ビジネス』消費者を考えさせるな、反応させろ。

一つ前のブログで、反応しない練習という本を紹介しました。
人の悩みを引き起こすのはいろいろな欲(承認欲など)に基づく"反応"で、自身の反応を冷静に見極めることが心安らかに生きていく方法の一つ、というお話でした。

初めて読んで以来1年間、そうだそうだ自分の反応をメタ認知しながら落ち着いて生活していきたい、と思っていますが、なかなかどうして完璧にとは行かないものです。
コンビニで美味しそうなお菓子を見かけるとつい買ってしまったりするし、人に注意されると多少引きずるし、理不尽なことを言われると少しムカッともします。そんなことをしても幸せになれないのに。

その背景にある"快を求める心"を知りたいと思い、表題の2冊に手を伸ばしました。

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まず『快感回路』から。副題は「なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか」です。
扱っているテーマは、薬物、セックス、健康に悪い食事、ギャンブルなど。それぞれが生物として生きていく上では必ずしも必要ない(あるいは害である)のに、なぜ人はそこに快楽を感じてしまうのか。

快楽を感じる脳の部位は特定されており、内側前脳快感回路の活性化と変化がすべての依存症の核心にある、とのこと。ここが活性化するのは、人が生物として生き残る上で数万年に渡って行ってきた進化の過程で最適化された結果です。

人は進化しすぎたのでしょうか。薬物やアルコールはこの快楽回路を自身でハックする技術の一つで、それが例え人体に有害なものであっても数百年・数千年単位では回路の再設計が追いついていないのが現状。

行動を引き起こす刺激は、それ自体本能的あるいは人工的に快をもたらすもの、たとえばセックスや食べ物や薬物である必要はなく、どんな音でも匂いでも色や形でも記憶でも、快感と結びつけられれば、それ自体が快い刺激となりうる(Kindle位置:No.2,248)

 一つ驚いたのは、過去の著名人、快楽回路ハックしまくってるってこと。

激しい思考を伴う人ほど、バランスをとるためにも依存できる何かが必要になるんでしょうか。 

さらにもうひとつ驚いたのは、動物たちのマスターベーションの多様さについて。

しかしおそらく動物たちの中で最もマスターベーションに創造性を発揮しているのは、オスのバンドウイルカだろう。彼らはくねくねと動き回る生きたウナギをペニスにまとわりつかせる。(Kindle位置:No.1,649) 

すごい。。。創造的すぎる。

また、同性愛についてもこんな記述が。

同性愛行動は500種以上の動物で報告されており、おそらくもっと多くの種で行われているだろうと指摘している。同性愛は オスでもメスでも見られるが、オスのほうが観察例が多い。動物の同性愛は想像できるありとあらゆる形で表れ、思いも寄らない形のものすらある。オス同士、メス同士のオーラルセックスはハイエナやボノボ(ピグミーチンパンジー)など数多くの種で報告されており、ボノボではメス同士が生殖器をこすり合わせる (Kindle位置:No.1,651)

 快楽を得るために、生物はこんなにもクリエイティブになれる(むしろクリエイティブの源泉は快を求める心?)と思ったりしました。

快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)

快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)

 

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 もう一冊は『依存症ビジネス』。

上で見たとおり、快楽を求める心がこんなにも生物にとって普遍的なものなら、それをビジネスにするのは自然なことなのかもしれません。

現時点ではまださほど顕著にはなっていないものの、 21 世紀初頭の社会に生じたもっとも影響力のあるトレンドとは、 気分を向上させたいときはいつでも、自分に報酬、すなわち「ごほうび」を与えるという習慣がますます強まったKindle位置:No.151) 

 カフェで食べる砂糖たっぷりのカップケーキ、やめられない携帯ゲーム、ブックマークしているポルノサイト、一日の終りに飲むアルコール、、、全てある種の依存症です。これらのビジネスは、大きくなる。
「よくわからないけど、どうしても○○したくなってしまう」というのは、ビジネスの提供社側からしたらたまらなく有利な条件ですね。医療等の分野でも「ゲーミフィケーション」が話題になっていますが、これも良い意味での依存症を生み出す仕掛けです。21世紀のトレンドなんでしょうか。

面白かったのが、ドーパミンの仕組みについて。

ドーパミンは「好き(嗜好 liking)」という衝動 よりも「欲しい(希求 wanting)」という衝動 のほうに深く関わっている、と考えられるようになった(Kindle位置:No.1,157) 

この区別は面白いと思いました。

依存症はこのドーパミンの機序、つまり好きというより欲しいという衝動の高まりによって起こる、と。依存症は、とあるものを好きになっていくプロセスではなく、とあるものを欲しいと思う感情がどんどんでてきてしまう状態。

ドーパミンに誘発された快楽を経験すればするほど、私たちはその経験を繰り返したくなるのだ。しかし、報酬経路が再配線されて耐性のレベルが上昇した結果、その行為から満足感を得るには、いっそう努力しなければならなくなる。だからこそ、依存者は常に、より大きなハイを求めているように見える(Kindle位置:No.1,213) 

 欲しいという思いの高まり=依存症、だとすると、合法的な依存症と非合法な依存症の境目がますます曖昧になるな、と読みながら思いました。

 食物への依存という、つかみどころのないコンセプトは、 正常な行動と人生を狂わせてしまう本格的な依存症のあいだに広がりつつあるグレーゾーン に私たちを向きあわせる。糖分がマウスにコカインと似たような反応を引きおこすことは、すでに見てきた。他の食物については、マウスはそういった反応を示さない。だが、人間は脂質と塩分を好むように進化してきたため、糖分のようにドーパミンの波を次々と引きおこすわけではなくとも、依然として不健康な量の脂質と塩分をとってしまう(Kindle位置:No.2,318)

 また引用だらけになってしまいました。面白い本。

依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実

依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実

 

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依存症という視点で、人が"反応"から逃れられない現状を読みながら学びました。

『依存症ビジネス』の最後にあるこんな一文。

やっかいなことに、テクノロジーの進歩が加速すれば、依存症を引きおこす薬物や経験が生みだされる速度も加速する。このジレンマを、2010年に発表したオンラインの記事のなかでうまく表現したのが、シリコンバレーの投資家でブロガーのポール・グレアムだ。彼は短いエッセイ「依存の加速」で、私たちを依存症にするプロセスを止めたければ、病気を治療するための実験も停止しなければならないと指摘する。なぜなら、それらは同じ研究から生まれるものだから。(Kindle位置:No.4,678)

ポール・グレアム、さすがの視点だ。。。

自分が何に依存しているのか、観察するところから始めようと思います。