記録#98 『赤い三日月』 トルコ向けファイナンス、デフォルトを救え。
お盆休み、黒木亮祭り第3段。
この本については、細かい事抜きに、ロンドン支店の上司が放ったこの言葉がしびれました。
場面は、トルコの財務省から5億ドルの調達を依頼されたシーン。この資金が取れなかったら、トルコはデフォルトになるという。本店審査部に睨まれ、さらに合併間際で揺れる東西銀行ロンドン支店の担当者、主人公でもある但馬は上司・ゴールドスタインとタクシーの中で相談をする。
「カズ、これは『意味のある』ディールだ」
ゴールドスタインは、フロントグラスの先に視線を向けたままいった。
「『意味のある』ディール?」
ゴールドスタインはうなずく。
「このディールの正否で、トルコという国の命運が大きく変わる。これは、そういう意味のあるディールだ」
「なるほど……」
「馬鹿みたいに儲かるディールは年に1回くらい転がり込んでくる。グロリアスな(栄光に満ちた)ビッグディール、2,3年に1回くらいだ。……けれども『意味のある』ディールに巡り会えるのは、10年に1回しかない。巡り合ったからには、やるだけだ」
独白するような口調でいった。
「少なくとも俺は、こういうディールをやるために、この世界で生きてきたつもりだ」
(下巻、pp.174-175)
かっこいい。。。
他にも、苦しむ国のために戦うトルコ財務省の女性課長・エンヴェルや、本店審査部で但馬の熱意に答えようとする部長・大門など、かっこいい登場人物ばかり。
米国の思惑に翻弄され続ける新興国融資の現場と、それに立ち向かう国際金融マンの実際に触れられる、素晴らしいフィクション作品でした。おすすめです。