ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#95 『アジアの隼』アジアで昇り、通貨危機で落ちた隼、ペレグリン。

今年のお盆は黒木亮祭りにしました。

一冊目として選んだのが、90年代後半の東南アジアを部隊にした金融のお話。 

アジアの隼

アジアの隼

 

舞台は成長著しいベトナム、主人公は長債銀の融資担当者、真里戸。以前の赴任地エジプトで妻をなくし、それを忘れるように仕事に没頭する。そんな彼が、政治腐敗と賄賂にまみれたベトナムで事務所開設のために奮闘し、飲み屋で知り合った現地女性の生きる力に勇気づけられながら自分の道を見つけていくストーリー。

タイトルの"アジアの隼"というのは、1990年代のアジア金融市場を席巻した香港の進行証券会社、ペレグリンのこと。もちろん、実在の企業です。97年の香港返還と軌を一にして一気に成長し日本を除くアジア最大の証券会社となったものの、98年以降の通貨危機の煽りを受け、98年1月には破綻に追い込まれます。

その背景についても丁寧に記述がされており、引き込まれつつ、勉強をさせてもらいました。

黒木亮さんの本で好きなのは、骨子となるストーリーはもちろん、金融の現場に関する描写が丁寧かつ迫力があるもので、

まだ働き始めて数年のペーペーの私では体験し得ないような事態を、臨場感あふれる筆致で描いてくれています。制度がゆるゆるの新興国で仕事をしていくっていうのはなんて大変なんだろう、とも思いました。清濁併せ呑むとはまさにこのこと。規制官庁、認可官庁には頭が上がらない規制業界の辛さを感じます。

有名な『巨大投資銀行』はもちろんですが、それ以外の作品も是非。邦銀の国際融資の現場にふれるには、フィクションとはいえ、素晴らしい作品だと思います。 

アジアの隼

アジアの隼