記録#97 『エネルギー』イラン、サハリン、その原油。
お盆の黒木亮祭り、第三段はLNGプロジェクトのお話。
ときは90年代後半、主人公は総合商社・五井商事でエネルギーを担当する金沢。最初はイランで石油を、その後はサハリンでLNGを扱うことになる。
国策と深く結びつくエネルギーの分野は、交渉相手も行政・国営会社・金融機関・商社と多岐に渡り、LNGのプラント建設となると更にそこにプラント企業や建設会社が入ってくることになります。更には、環境保護や生物保護のNGOの活動も活発で、数兆円という大規模なプロジェクトを回していくだけでも一苦労。
2段組の本で上下巻合計700頁という長編小説であるこの本の主人公、金沢も、中東で、シベリアで、様々な事情に翻弄されることになります。
- 米国からの経済制裁を受けるイランからいかにして原油を引っ張ってくるか
- ロンドンからオランダの入札会場に向かう飛行機が直前でキャンセル、一晩のうちにどうやって現地にたどり着くか
- 絶滅の危機に瀕する海洋生物への影響を懸念しプロジェクト中止を迫り、かつ自身の妹が所属するNGOといかに交渉をしていくか
- 法体系が矛盾をはらむロシアにおいてどのようにプロジェクト利益を守っていくか
総合商社に勤める友人の苦労はいかほどのものか...と思いを馳せました。。
電力がなければ動かないこの国。地下資源に頼る社会と、それを支える人たちの戦いを垣間見た小説でした。長いです。でもおすすめ。
商社や銀行でプロジェクトファイナンスをしたい人は、ぜひ読んでみましょう。