ねずこん読書記録

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記録#57 『ジブリ・ロマンアルバム 紅の豚』 1920年代のイタリアに思いを馳せる

前記事の『The Art of Porco Rosso』に続いて、ジブリの"紅の豚"の紹介本をピックアップ。

紅の豚―カッコイイとは、こういうことさ。 (ジブリ・ロマンアルバム)

紅の豚―カッコイイとは、こういうことさ。 (ジブリ・ロマンアルバム)

 

The Art of ~~ の方とは違って、宮崎駿監督やプロデューサーの鈴木敏夫さんだったり、製作やプロモーションに関わった人たちのインタビューが生っぽく載っています。

今回は、宮崎駿監督のインタビューの中で印象に残った文章をいくつか。

1つ目は、1920年代という激動の時代を生きた登場人物たちのその後を想うシーン。

 あの時代に生きた人間に比べたら、僕らのほうがはるかにへなちょこの経験しか持っていないけれど、でもそれなりに時代の光とか挫折みたいなものを感じて、この年になってしまった。

 そうすると映画を作りながら、この豚はこの後どうやって生きていくんだろうと気になって仕方がなくなった。ぼくの知っている範囲のヨーロッパ史の知識からいっても、その後大変な激動の時代が続くんです。大バカな第二次世界大戦があって、そこでフィオはどうしたんだろう。イタリアの飛行機の町工場が、どういうふうにイタリアの戦争に巻き込まれていったのか。ああいうふうに生きているジーナみたいな女が、ホテルアドリアーノを抱えたままユーゴスラビアと戦争になったときに、彼女はどこに生きたんだろう。 p11-12

2つ目は、ポルコ・ロッソという男の生き様について。

 時代を生きているときに、くだらないものはくだらない、俺は俺でやるという視点を明瞭に持っているキャラクターを出したかった。大混乱や、戦争が起こったときに、この責任は全部俺にあるという視点ではなくて、そういうことは個人として冷厳に見て、やりたくないものはやらない。国のために倒れて犠牲になって死のうということもやらない。俺は俺、俺の魂の責任は俺が持つんだ。豚はそういう男なんです。それが、これから生きていく上で必要だなと、自分も切実に思ったから。 p12

 3つ目は、この映画のメインの受け取り手として想定されていた”中年男性”について。

ボヤーッと20代を過ごしているうちに、とっくの昔に船出していて、一番やらなければいけない事をやらずに30歳になり、まだ中年じゃない中年じゃないといっているうちに、突然おじさんになっちゃうんです。そういう青年期のない、少年からいきなりおじさんというのが今ものすごく多いんじゃないでしょうか。青年期というのは、自己形成してそこからでかけていくという地点です。それを抜きにして始まるということは、取り返しのつかないことをいっぱい意味している。 p14

この3つの発言を、1992年のインタビューで言ってるんですよね。

それから25年以上経った今ここにおいても、意味を持つ時代・社会の切り取り方だなと思いました。

カッコイイとは、こういうことさ。

これからもやっていこうと思います。

紅の豚―カッコイイとは、こういうことさ。 (ジブリ・ロマンアルバム)

紅の豚―カッコイイとは、こういうことさ。 (ジブリ・ロマンアルバム)