記録#56 『The Art of PORCO ROSSO』カッコイイとは、こういうことさ。
兵庫県立美術館でやっている、ジブリの大博覧会にいってきました。*1
小さい頃から紅の豚が大好きで、グッズ販売で思わず買ってしまったのがこの本。
博覧会の中で、表題にある「カッコイイとは、こういうことさ」が定まるまでの、ジブリプロデューサー鈴木さんとコーピーライター糸井重里さんの相談FAXやりとりが公開されたりしていて、とてもワクワクしました。*2
そんな中で、この本です。
ただただ最高
一人のファンとして、1ページ1ページの内容がとても濃く感じます。
ポルコが乗るサボイアS-21が着水してホテル・アドリアーノの桟橋に接岸するまでの姿、ホテルのバーでポルコを迎えるジーナ、ピッコロ社の作業場風景、すべてを包むドブロク市の海岸線、初期のストーリーボードでその一つ一つが描かれていて、ただただ美しい。
空、飛行機が大好きな宮崎駿さんらしく、登場する戦闘艇一つ一つについて翼幅や全長、エンジン構成、最高速度まで丁寧に記載されています。
この本を読んで改めて紅の豚を見ると、また違った味わいになりそう。次の週末にすることが増えてしまいました。
なんとなく見えてきた、私が紅の豚を好きな理由
この本の冒頭、 宮崎駿さんが書いた「演出覚書 ---紅の豚メモ---」という文章の内容がでてきます。
背景として、もともと紅の豚はJALと共同で”羽田発着の国際線の機内で上映される30分程度の作品”として企画が始まった、ということがあるんですが、それを踏まえて、以下の内容。
○マンガ映画の復活
国際便の疲れきったビジネスマン達の、酸欠で一段と鈍くなった頭でも楽しめる作品、それが「紅の豚」である。少年少女たちや、おばさま達にも楽しめる作品でなければならないが、まずもって、この作品が「疲れて脳細胞が豆腐になった中年男のための、マンガ映画である」事を忘れてはならない。
陽気だが、ランチキさわぎではなく。
ダイナミックだが、破壊的ではない。
愛はたっぷりあるが、肉欲は余計だ。
誇りと自由に満ち、小技の仕掛けを廃してストーリーは単純に、登場人物たちの動機も明快そのものである。
男達はみんな陽気で快活だし、女達は魅力にあふれ、人生を楽しんでいる。そして世界も又、限りなく明るく美しい。そういう映画を作ろうというのである。
後半が、まさにまさに、という内容。更に続きます。
○人物の描写は、氷山の水上部分と心得よ
ポルコ、フィオ、ドン・クッチ*3、ピッコロ、司令官、ホテルのマダム*4、マンマユート団の面々、その他の空賊達、これ等主要な登場人物が、みな人生を刻んできたリアリティを持つこと。バカさわぎは、つらいことを抱えているからだし、単純さは一皮むけて手に入れたものなのだ。どの人物も大切にしなければならない。そのバカさを愛すべし、その他大勢の描写に手抜きは禁物。よくある誤り --- 自分よりバカなものを描くのがマンガという誤解 --- を犯してはならない。さもないと、酸欠の中年男たちは納得しない。
これも、心にぐっととくる内容。
辛さを乗り越え、それでも一部を抱えつつ、だからこその単純さ・ばか騒ぎ。
どうやら私は小さいときから中年男の精神を持っていたようです。
最高の一冊が、我が家の本棚に加わりました。