たなかの読書記録

30歳くらいの男が、読んでよかったなぁと思う本を紹介していきます。

記録#12『快感回路』『依存症ビジネス』消費者を考えさせるな、反応させろ。

一つ前のブログで、反応しない練習という本を紹介しました。
人の悩みを引き起こすのはいろいろな欲(承認欲など)に基づく"反応"で、自身の反応を冷静に見極めることが心安らかに生きていく方法の一つ、というお話でした。

初めて読んで以来1年間、そうだそうだ自分の反応をメタ認知しながら落ち着いて生活していきたい、と思っていますが、なかなかどうして完璧にとは行かないものです。
コンビニで美味しそうなお菓子を見かけるとつい買ってしまったりするし、人に注意されると多少引きずるし、理不尽なことを言われると少しムカッともします。そんなことをしても幸せになれないのに。

その背景にある"快を求める心"を知りたいと思い、表題の2冊に手を伸ばしました。

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まず『快感回路』から。副題は「なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか」です。
扱っているテーマは、薬物、セックス、健康に悪い食事、ギャンブルなど。それぞれが生物として生きていく上では必ずしも必要ない(あるいは害である)のに、なぜ人はそこに快楽を感じてしまうのか。

快楽を感じる脳の部位は特定されており、内側前脳快感回路の活性化と変化がすべての依存症の核心にある、とのこと。ここが活性化するのは、人が生物として生き残る上で数万年に渡って行ってきた進化の過程で最適化された結果です。

人は進化しすぎたのでしょうか。薬物やアルコールはこの快楽回路を自身でハックする技術の一つで、それが例え人体に有害なものであっても数百年・数千年単位では回路の再設計が追いついていないのが現状。

行動を引き起こす刺激は、それ自体本能的あるいは人工的に快をもたらすもの、たとえばセックスや食べ物や薬物である必要はなく、どんな音でも匂いでも色や形でも記憶でも、快感と結びつけられれば、それ自体が快い刺激となりうる(Kindle位置:No.2,248)

 一つ驚いたのは、過去の著名人、快楽回路ハックしまくってるってこと。

激しい思考を伴う人ほど、バランスをとるためにも依存できる何かが必要になるんでしょうか。 

さらにもうひとつ驚いたのは、動物たちのマスターベーションの多様さについて。

しかしおそらく動物たちの中で最もマスターベーションに創造性を発揮しているのは、オスのバンドウイルカだろう。彼らはくねくねと動き回る生きたウナギをペニスにまとわりつかせる。(Kindle位置:No.1,649) 

すごい。。。創造的すぎる。

また、同性愛についてもこんな記述が。

同性愛行動は500種以上の動物で報告されており、おそらくもっと多くの種で行われているだろうと指摘している。同性愛は オスでもメスでも見られるが、オスのほうが観察例が多い。動物の同性愛は想像できるありとあらゆる形で表れ、思いも寄らない形のものすらある。オス同士、メス同士のオーラルセックスはハイエナやボノボ(ピグミーチンパンジー)など数多くの種で報告されており、ボノボではメス同士が生殖器をこすり合わせる (Kindle位置:No.1,651)

 快楽を得るために、生物はこんなにもクリエイティブになれる(むしろクリエイティブの源泉は快を求める心?)と思ったりしました。

快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)

快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)

 

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 もう一冊は『依存症ビジネス』。

上で見たとおり、快楽を求める心がこんなにも生物にとって普遍的なものなら、それをビジネスにするのは自然なことなのかもしれません。

現時点ではまださほど顕著にはなっていないものの、 21 世紀初頭の社会に生じたもっとも影響力のあるトレンドとは、 気分を向上させたいときはいつでも、自分に報酬、すなわち「ごほうび」を与えるという習慣がますます強まったKindle位置:No.151) 

 カフェで食べる砂糖たっぷりのカップケーキ、やめられない携帯ゲーム、ブックマークしているポルノサイト、一日の終りに飲むアルコール、、、全てある種の依存症です。これらのビジネスは、大きくなる。
「よくわからないけど、どうしても○○したくなってしまう」というのは、ビジネスの提供社側からしたらたまらなく有利な条件ですね。医療等の分野でも「ゲーミフィケーション」が話題になっていますが、これも良い意味での依存症を生み出す仕掛けです。21世紀のトレンドなんでしょうか。

面白かったのが、ドーパミンの仕組みについて。

ドーパミンは「好き(嗜好 liking)」という衝動 よりも「欲しい(希求 wanting)」という衝動 のほうに深く関わっている、と考えられるようになった(Kindle位置:No.1,157) 

この区別は面白いと思いました。

依存症はこのドーパミンの機序、つまり好きというより欲しいという衝動の高まりによって起こる、と。依存症は、とあるものを好きになっていくプロセスではなく、とあるものを欲しいと思う感情がどんどんでてきてしまう状態。

ドーパミンに誘発された快楽を経験すればするほど、私たちはその経験を繰り返したくなるのだ。しかし、報酬経路が再配線されて耐性のレベルが上昇した結果、その行為から満足感を得るには、いっそう努力しなければならなくなる。だからこそ、依存者は常に、より大きなハイを求めているように見える(Kindle位置:No.1,213) 

 欲しいという思いの高まり=依存症、だとすると、合法的な依存症と非合法な依存症の境目がますます曖昧になるな、と読みながら思いました。

 食物への依存という、つかみどころのないコンセプトは、 正常な行動と人生を狂わせてしまう本格的な依存症のあいだに広がりつつあるグレーゾーン に私たちを向きあわせる。糖分がマウスにコカインと似たような反応を引きおこすことは、すでに見てきた。他の食物については、マウスはそういった反応を示さない。だが、人間は脂質と塩分を好むように進化してきたため、糖分のようにドーパミンの波を次々と引きおこすわけではなくとも、依然として不健康な量の脂質と塩分をとってしまう(Kindle位置:No.2,318)

 また引用だらけになってしまいました。面白い本。

依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実

依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実

 

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依存症という視点で、人が"反応"から逃れられない現状を読みながら学びました。

『依存症ビジネス』の最後にあるこんな一文。

やっかいなことに、テクノロジーの進歩が加速すれば、依存症を引きおこす薬物や経験が生みだされる速度も加速する。このジレンマを、2010年に発表したオンラインの記事のなかでうまく表現したのが、シリコンバレーの投資家でブロガーのポール・グレアムだ。彼は短いエッセイ「依存の加速」で、私たちを依存症にするプロセスを止めたければ、病気を治療するための実験も停止しなければならないと指摘する。なぜなら、それらは同じ研究から生まれるものだから。(Kindle位置:No.4,678)

ポール・グレアム、さすがの視点だ。。。

自分が何に依存しているのか、観察するところから始めようと思います。