記録#257 『戦略プロフェッショナル シェア逆転の企業変革ドラマ』
戦略プロフェッショナル シェア逆転の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 三枝匡
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/10/18
- メディア: Kindle版
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感じたこと
- 現場からトップにまで求められる戦略思考、それをストーリー形式で学ぶことができる。本当に良著。初版が出たのが1991年だけど、30年近くたった今でも意義を失わない一冊。
- 「戦略を乱用するな、正しく使え!」というメッセージが突き刺さる。MBAチックに全てを論理・計数に落とし込むことでうまくいくことなんて無い。組織ありき、人ありきの事業モデルに。戦略は、正しいリーダーシップと合わさって初めて価値を持つ。
- 戦略検討のプロセスは王道中の王道。どんな戦略の本より、このストーリーを読んでプロセスを追体験するのが良い学びになると感じる。
- リーダーシップと実行の仕組み。先日読んだOKRなんかも活用しながら仕組みとしてエンベッドするのがよいのでは。
- この本が出たのが1991年。30年前の本だけど、今読んでも全く古さを感じない。すごい。
内容
- 親会社から新日本メディカルに降り立った主人公・広川は以下のプロセスで戦略を検討していく
- 仕事の優先度を決める:経営トップにとって時間は最も貴重なリソース。全社観点から、プロテック事業部の改善が優先課題であることを経営層で合意。
- 相対する市場全体を俯瞰する:市場規模とその成長率、競合の存在を踏まえて今後の成長余地を大きくつかむ。市場規模はそこそこで成長率は10%、競合は細かく分散しておりかつチャンスがあると判断。
- 戦略製品を抽出する:製品別市場で見ることで、成長商品とダメ商品を判別し、投資すべきカテゴリーを見極め。今後の事業展開は製品群Aにかかっており、プロダクトライフサイクルと市場シェアの情報から、ジュピターが戦略的に使えるチャンスがまさに今であることを判断
- 製品の差別化能力を確認する:ユーザー・技術・コストなどの観点から製品を評価。社内の固定観念を排し、利便性や技術面、コスト優位性などの視点で十分な製品力があると判断。
- 価格と利益構造をチェックする:競合との価格比較や粗利率などの価格構造を分析。価格体系は障害となっておらず、利益率も十分でまだ遊べる幅があると判断
- 戦略ロジックを策定する:ユーザーを訪問するなどしてファクトを集め、成功への道筋を描く。ユーザーにとっての資産購入の決裁周りに壁があると判断。社内の人間がいう、全体の価格体系や製品ニーズには問題がないことを再確認
- 自社の組織の強み・弱みを理解する:個々人、チーム、彼らの動き方などを踏まえ、戦略を実行し続けるための制度や構造変革を考える。広川は、現在の士気の低さに対処することと、ユーザー対応のための直販チャネル構築の必要性を認識。
- 市場ターゲットを絞り込む:顧客をセグメント化し、優先順位付けする。広川はまずターゲット施設を1,000にしぼり、そこから顧客のニーズと自社にとっての魅力度でセグメントを切り、300程度の最優先顧客と、それに続く200程度の次優先顧客を設定した
- 戦略展開の時間軸を設定する:市場の受容性や競合の動きを踏まえて、実行するための時間軸を設定し、チームと共有する。広川は、競合の市場参入に備えて、時間軸を最大1年として急ぎ施策実施に移っていった
- 戦略を仕組み化する:共通言語の創出、戦略実行をフォローアップする仕掛け、本社と営業所の連携体制の構築、販促物の作成支援など、実行を徹底してサポートする
- プロダクト・ライフサイクルとセグメンテーション、これだけは覚えておけ。
- 実践的戦略プロフェッショナルであるためには、、、
- トップとして強いリーダーシップを発揮する覚悟があること。部下をWhyで説得し、士気を鼓舞し、創意工夫を促し、共に考えともに戦う危害を見せること
- 新しい戦略を考え出す作業手順をマスターし、作業のステップごとに取りうる選択肢をチェックし、責任者としてそれを緻密に実行していくこと
- リスクを背負いながらもそれを意に介さず、適度に受け流すこと
- 成長企業は組織がいつもアンバランス。開発/生産技術/営業など、会社の中の何処かに優れた突出部があり、それに牽引される形で他の部門が遅れながらもなんとか成長していく
- その突出部は、時とともに交代していき、会社全体としては常にどこかが突出している状態になる
- ジリ貧企業では社内が低位均衡、低いレベルで安定・停滞してしまっている事例が目につく
- 経営トップとしては、あえてこのようなアンバランスを”ほどよく”生み出すことが重要
- 戦略はチームで実行するもの。小学生の子供に夕ご飯を食べながら語れるほどシンプルなものであるべき
- それを、しつこくしつこくフォローして、組織として実行していく
引用メモ
大企業のサラリーマンが時代の華でなくなってから久しい。 しかし多くの人がいまだにそれにこだわっているのは、代わりの生き方がみえないから、ただそれだけではないのか。