記録#22 『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』 エビデンス・ベースト・食事。
数年前まで、食事に関する情報といえば「減塩!」「低脂肪!」「腹八分目!」「この栄養素!」のような内容が中心だったと思いますが、
最近はもっと尖った食事方法を提示する本が増えてきた気がします。
- ジョコビッチの生まれ変わる食事:グルテンフリー食のすすめ
- シリコンバレー式 自分を変える最強の食事:バターコーヒーなど脂肪摂取
- 世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術:糖質オフのすすめ
とはいえ、どれも個人の体験談+α(関連論文の提示など)に留まっている印象です。
そんな中でこの本。本書表紙裏のタグライン、こんな感じです。
今あなたが信じている健康情報は本当に正しい情報でしょうか?
本書では、最新の膨大な研究論文をもとに、
科学的根拠に裏付けされた「新しい時代の食の常識」を教えます!
著者はハーバードで学び、現在はUCLAで働く医師・医療政策学者の津川友介さん。
個別の論文から安易に結論を出すのではなく、それぞれのエビデンスレベルを見極め、メタアナリシスを中心とした「強い」エビデンスをもつ食事内容を紹介してくれています。かつ、それぞれの食事がどの疾患のリスクをどの程度低減させるのか(例:1日あたり85~170gの魚を摂取すると心筋梗塞により死亡するリスクが36%低下する)まで明記しているところも素敵だなと感じるポイントです。
誤った情報を入れないために
今後もどんどん食事に関する研究は進んでいく中で、津川さんはまず以下のような注意点を本書の中で示しています。極端で誤った健康情報があふれるこの環境のなかで行きていかなきゃいけない私たち...
- エビデンスにはレベルがあるよ:メタアナリシスorランダム化比較試験or観察研究、それにも満たない個人の意見
- 「成分」に惑わされすぎるな:緑黄色野菜・果物を食べている人は肺がんが少ないことが報告されているが、βカロテンをサプリとして摂取するとむしろ肺がんリスクは情報する、等
- 病気の人、子供、妊婦など状況によっては究極の食事内容は違うよ
何を食べるべきか
いよいよ本論です。
「日本食は健康に良い!」という人がいますが、これについて検証されたエビデンスはまだないとのこと。一方で、一定の科学的根拠に基づいて健康に良いことがわかっている食事は、イタリアやスペインのような「地中海食」とされています。(日本食のGood=魚や野菜の摂取、Bad=白米+塩分の過剰摂取)
健康に良いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品
- 魚:心筋梗塞や乳がんのリスクを減らす
- 野菜と果物:果物は糖尿病予防になる、果物ジュースは糖尿病になる
- 茶色い炭水化物(全粒粉、玄米、そば、キヌア等):心筋梗塞や脳卒中、糖尿病のリスクを減らす
- オリーブオイル:脳卒中やがん、心筋梗塞のリスクを減らす
- ナッツ類:脳卒中やがん、心筋梗塞のリスクを減らす
小数の研究で健康に良い可能性が示唆されている、ひょっとしたら健康に良いかもしれない食品
何を食べないべきか
健康に良いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品
小数の研究で健康に悪い可能性が示唆されている、ひょっとしたら健康に悪いかもしれない食品
- マヨネーズ
- マーガリン
上にでてきたそれぞれの食材について、どんな研究があってどんなリスクが報告されているか、相当丁寧にかつわかりやすく書枯れています。その他にも
- グルテンフリーで健康になれるというエビデンスはなく、かつダイエット効果の根拠も乏しいこと
- 卵の摂取量についてはいろいろ説がでているが、1週間に6個以下にしたほうが2型糖尿病や心不全リスクの観点から良い
- 糖質制限として赤いお肉の摂取量を増やすことは脳梗塞やがんのリスクを高めること、かつ代表的な糖質制限ダイエットで6ヶ月では体重減少したものの12ヶ月ではもとに戻ってしまった(リバウンドした)というランダム化比較試験結果があること
などが示されていて、とても勉強になりました。
おわりに
津川さんは本書第1章で、「体に良くない」と「食べるべきでない」を混同しないように、と書いています。
私は加工肉、赤肉、白い炭水化物などは「体に良くない」と説明しているのであって、「食べるべきではない」と主張しているのではない。すべての人はその食事によって得られるメリットとデメリットを十分に理解した上で、何を食べるか選択すべきだと思っている。
甘いものが好きな人にとっては甘いものを食べることで幸せな気持ちになり、幸福度が上がるかもしれない。そういう人にとっては、甘いものをゼロにすることで健康にはなるけれども人生が全く楽しくなくなってしまうこともあるだろう。そのような場合には、幸福度と健康を天秤にかけて、毎日少量の甘いものを食べるという食事を選択するのも合理的な判断であろう。
しかし、そのような食事を正当化するために、「甘いものも少量であれば健康に悪影響はない」と解釈することはおすすめしない。そのように科学的根拠を曲解することは他の人にも間違った情報を与えてしまうリスクがあるためである。(本書pp.40)
私たちは健康になるために生きているわけではないので、正しい情報をもってデメリットを自覚しながら、食べるものを選んでいきたいなと思いました。
よし、まずはお蕎麦の乾麺を大量注文しよう。