記録#225 『クラフツマン』つくることは生きること。
人間は世界の中に自分自身のための場所を作る、腕の立つ製作者なのである。
ハンナ・アレントに支持した社会学者のリチャード・セネットによる、物質主義に関する著作3部作の第1作目がこの「クラフツマン」です。
クラフツマンは、字義のとおりそのままに取ると、職人、となります。
セネットはこの"職人性"、ひいては「手を通じて考えること」を重要視しています。今の社会に蔓延する、「頭だけで考える」「科学の論理だけで考える」だけでは、自分が本質的に何をやっているのか理解ができなくなるだろうと。原子力の研究を進めていった結果が、原爆の開発につながったように。
加えて、こんなことも言っています。
技術の上達に対してクラフツマンシップがもたらす感情的報酬には、2つの要素がある。人々は触って確かめることの出来る現実にしっかりと固定されるようになり、同時に自分の仕事に誇りを持つことが出来るようになる。
(本書、pp47-48)
研究者や大工、教師など、あらゆる人がクラフツマンシップを通じて、自らの製作過程に没頭しそれを楽しみ、さらに生み出した成果に対して誇りを持つこと。
機械化が進む現代において、あえてそれを一つの理想的な働き方として提示するセネットの姿勢。
最近私が手仕事(味噌作りだったり餅つきだったり陶芸だったり)にはまっていることもあり、文章とシンクロしながら読み進めることが出来ました。