ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#75 『モノからモノが生まれる』デザイナーの仕事は、見た目の美しさの追求か?

ある書店員さんのInstagramブルーノ・ムナーリというイタリア人のデザイナーが紹介されていて、それに興味を持ってこの本に手を伸ばしてみました。

 Wikiによると、20世紀半ばから終わりにかけて活躍したグラフィック・プロダクトデザイナーで、日本にも度々訪れていたそう。

モノからモノが生まれる

モノからモノが生まれる

 

彼はいいます。

デザインというのは、スタイリングとは違う。目先の豪華さでごまかしたりするのではなく、解決が必要とされる問題に対して、その解決方法を企画し、設計し、実現するのがデザイナーだと。

 単純化とは、ある問題を解決しようとするとき、機能を実現させるのには役に立たないことを除外して考えることである。単純化とは、費用を削減し、作業時間、つまり組み立てや仕上げの時間を短縮するということである。 そして2つの問題を1つの解決案で解くことでもある。単純化は難しい作業であり、豊かな想像力が必要とされる。

 それに比べて、複雑化するのはずいぶん簡単である。思いつくまま、頭に浮かぶアイデアをすべて付け加えていけばいいのだから。費用が売値の限度額を超えないだろうか、こうすると作業時間がもっとかかってしまうのではないだろうか、といったことは気にもとめないのである。(pp.130)

この本の中では、ムナーリが考えるWell-Designedなプロダクトがたくさん紹介されています。どれも機能美に溢れていて、実用的で、生活に寄り添っている。ミヒャエル・トーネット氏がデザインした椅子、平行六面体の牛乳パック、日本ののこぎり、ジレットの使い捨てカミソリなどなど。日本好きのようで、実用品から建築まで、日本のものがたくさん紹介されています。

そんなプロダクトを生み出すために、デザイナーがどのようにして企画設計を行うべきか、本書の序盤でそんなことについても語られています。いわく、問題の特定→課題の発見、なんていう甘っちょろい2段階のプロセスではなく、

  • 問題の発見・特定
  • 問題の定義
  • 求めている解決策の種類の定義
  • 問題の構成要素への分解、解決できるレベルの要素化
  • 解決のためのデータ収集
  • 収集したデータの分析
  • 創造力・アイディア出し
  • 素材や技術の探索
  • 素材・手段のレベルでの実験
  • 模型化・プロトタイピング
  • 有効性の検証

だよ、と。この本の原著が出版されたのは1981年。現代の新規事業開発だったりで必要とされるプロセスそのままであることに、素直に感銘を受けました。

また、私が好きだったのはこの一節。

美しさとは正しさの結果(pp.40)

書籍のど頭から、デカルトの引用で始まる辺りも、信念を持ったデザイナーの香りがしました。

とても好きな本。おすすめです。

モノからモノが生まれる

モノからモノが生まれる