ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#206 『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?』

 

羽生善治先生が27年ぶりに、正確には10140日(!!)ぶりに無冠となりました。

今年2018年を通して、将棋界のことがずいぶんと話題になって、

あたりはどれも、お昼のワイドショーで取り上げられていました。

そのおかげか、これまで将棋に関心が薄くなった人も、テレビだったりネット動画だったりで将棋中継を見る機会もあったのではと思います。

 

その中継を見るとき、たまに上に表示されている「評価値」というものがあります。
↓の画像のサムネイルのようなものです。

hantosidegodan.seesaa.net

これは将棋AIが現在の局面を評価して、どちらに有利化を数値化したもの。

数年でかなり一般化して、将棋解説を行うプロの先生も、この数値を参照しながらコメントしたり、それを裏付ける指し手を探す、など、ある種の指標となっています。

経済誌を開くと人工知能だ、AIだと騒がれていますが*2、将棋の世界では、AIは既に一部人間を超え、そのショックを乗り越えた上で人間がAIと協働するところまで来ています。

「将棋AIはいかにしてここまで進化してきたのか」

そんなテーマで、AI開発の歴史とその背景にある技術を平易な文章で書いてくださったのがこの本。将棋のことや技術のことがわからないひとでも、将棋のことにも技術のことにも親しめる本書は、将棋ペンクラブ大賞特別賞を受賞しています。

著者は、2017年に将棋界の最高タイトル・名人を保持する佐藤天彦先生と電王戦を戦い、2戦2勝と圧勝した将棋AI・Ponanza開発者の山本一成さん。現在は、『将棋ウォーズ』などを提供するHEROZ株式会社でリードエンジニアを務めながら、アカデミアでの研究活動も続けていらっしゃいます。

  • 人間が変な邪魔しないことで将棋AIは強くなった
  • 将棋AIに知能はあるが、しかし「目的を設定する」という知性はまだ未熟
  • AIにやらせることを考えると、世の中の大抵のことは囲碁より簡単
  • 自然言語処理は最後のフロンティア
  • コンピュータには論理力が足りない

などなど、参考になる記述がたくさん。

本書最後にある、Deep Mind社のAIとイ・セドルさんの囲碁対局の振り返りも興味深く読めました。囲碁、手の意味を考えるのがまた難しいな...

まずは将棋から。AIにならって、強くなりたい...!!

gendai.ismedia.jp

 

*1:六段・七段昇進、通算50勝・100勝、一般棋戦優勝、全棋士参加棋戦優勝、、、全部の最年少記録を更新

*2:Googleでは「AIはもうコモディティだ」と言われているという話を聞くとこの現状も悲しくなります