記録#204 『小説の一行目』名作には、人を引き込む"一行目"がある
また名作に出会ってしまいました。
芥川賞、直木賞受賞作の出だし("一行目")だけを集めたこの本。
これまで私たちはなにをもって小説を選んできたのでしょうか。タイトル、作家、出版社・・・。ここではそれに加わる新しい基準として「小説の一行目」を提案したいと思います。
(はじめに)
本屋さんでパッと開いた1冊の出だしが素晴らしかったとき、確かに買って帰りたくなるなぁと。
本書の中で紹介されている一行目の中で、私の心にぐっときたものを一部ご紹介。
1.
村山由佳さんぽい。
夜通し長い電話をしたんだろうな、その電話はどんな内容だったんだろう、そんな想像力を掻き立てる一行目。
2.
何だこの句読点の使い方は。リズムを生むだけじゃなくて、情景が浮かんでくる読点。
感動。
3.
春先やなぁ、始まりやなぁ、という想いが、香りとともに立つような出だし。
そしてタイトルは陰桔梗。紋章絵師のお話らしく、いかにも粋な始まりじゃありませんか。
4.
これも情景がふーっと見えるような一文。
夜は明けているが、まだ霧深い朝方。
そして海は荒れるでもなく、眠っているかのように穏やか。
こういう捉え方ができるようになりたい。
5.
小説の始まりが、一日の始まり。
かつを節削りといういかにもリズムのある動作。いいなぁいいなぁ。
6.
一言も "雪" という言葉を使っていないのに、冬の情景が見えてくる。
7.
まるで落語の出だしのような。
落ち着こうとしていた一日にもう一波乱あるぞ、と想像を掻き立てる出だし。
全部で300を超える出だしが素敵に並んでいます。
ぜひお手元に。想像力、フル活用で。