たなかの読書記録

スタートアップで働く人間が、読んでよかったなぁと思う本を紹介していきます。

記録#56 『The Art of PORCO ROSSO』カッコイイとは、こういうことさ。

兵庫県立美術館でやっている、ジブリの大博覧会にいってきました。*1

www.ghibli.jp

小さい頃から紅の豚が大好きで、グッズ販売で思わず買ってしまったのがこの本。

The Art of Porco Rosso

The Art of Porco Rosso

 

 博覧会の中で、表題にある「カッコイイとは、こういうことさ」が定まるまでの、ジブリプロデューサー鈴木さんとコーピーライター糸井重里さんの相談FAXやりとりが公開されたりしていて、とてもワクワクしました。*2

そんな中で、この本です。

ただただ最高

一人のファンとして、1ページ1ページの内容がとても濃く感じます。

ポルコが乗るサボイアS-21が着水してホテル・アドリアーノの桟橋に接岸するまでの姿、ホテルのバーでポルコを迎えるジーナ、ピッコロ社の作業場風景、すべてを包むドブロク市の海岸線、初期のストーリーボードでその一つ一つが描かれていて、ただただ美しい。

空、飛行機が大好きな宮崎駿さんらしく、登場する戦闘艇一つ一つについて翼幅や全長、エンジン構成、最高速度まで丁寧に記載されています。

この本を読んで改めて紅の豚を見ると、また違った味わいになりそう。次の週末にすることが増えてしまいました。

なんとなく見えてきた、私が紅の豚を好きな理由

この本の冒頭、 宮崎駿さんが書いた「演出覚書 ---紅の豚メモ---」という文章の内容がでてきます。

背景として、もともと紅の豚JALと共同で”羽田発着の国際線の機内で上映される30分程度の作品”として企画が始まった、ということがあるんですが、それを踏まえて、以下の内容。

○マンガ映画の復活

 国際便の疲れきったビジネスマン達の、酸欠で一段と鈍くなった頭でも楽しめる作品、それが「紅の豚」である。少年少女たちや、おばさま達にも楽しめる作品でなければならないが、まずもって、この作品が「疲れて脳細胞が豆腐になった中年男のための、マンガ映画である」事を忘れてはならない。

 陽気だが、ランチキさわぎではなく。

 ダイナミックだが、破壊的ではない。

 愛はたっぷりあるが、肉欲は余計だ。

 誇りと自由に満ち、小技の仕掛けを廃してストーリーは単純に、登場人物たちの動機も明快そのものである。

 男達はみんな陽気で快活だし、女達は魅力にあふれ、人生を楽しんでいる。そして世界も又、限りなく明るく美しい。そういう映画を作ろうというのである。

後半が、まさにまさに、という内容。更に続きます。

○人物の描写は、氷山の水上部分と心得よ

ポルコ、フィオ、ドン・クッチ*3、ピッコロ、司令官、ホテルのマダム*4、マンマユート団の面々、その他の空賊達、これ等主要な登場人物が、みな人生を刻んできたリアリティを持つこと。バカさわぎは、つらいことを抱えているからだし、単純さは一皮むけて手に入れたものなのだ。どの人物も大切にしなければならない。そのバカさを愛すべし、その他大勢の描写に手抜きは禁物。よくある誤り --- 自分よりバカなものを描くのがマンガという誤解 --- を犯してはならない。さもないと、酸欠の中年男たちは納得しない。

これも、心にぐっととくる内容。

辛さを乗り越え、それでも一部を抱えつつ、だからこその単純さ・ばか騒ぎ。

どうやら私は小さいときから中年男の精神を持っていたようです。

最高の一冊が、我が家の本棚に加わりました。

The Art of Porco Rosso

The Art of Porco Rosso

 

 

 

*1:最寄り駅はJR灘駅or阪神岩屋駅。7/1まで。土日は家族連れで激混み

*2:お二方のやり取り、クライアントワークというものを考える上で感じることがいろいろありそれはまた別のところでなにか書きたいと思います

*3:映画ではドナルド・カーチス

*4:映画ではジー

記録#55 『歴史は実験できるのか 自然実験が解き明かす人類史』社会をよーくよく観察する

『銃・病原菌・鉄』のジャレド・ダイアモンドと、『国家はなぜ衰退するのか』のジェイムズ・A・ロビンソンが編著者としてまとめた、経済史分析等に用いられる"自然実験"に関する本です。

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史

 

 

自然実験というのは、社会科学という(構造的・倫理的な理由によって)ランダム化などの実験が行いにくい分野において、「自然の中から実験に近い環境を見出してそれを研究対象にしよう!」という分野。

経済学や政治学社会学、心理学なんかで用いられることが多いです。

 

この本は、読み物というよりかは様々な研究者の、自然実験に関する論文を章立てて紹介していく、という形式のもの。

  • 第1章:ポリネシアの島々を文化実験する
  • 第2章:アメリカ西部はなぜ移民が増えたのか 19世紀植民地の成長の三段階
  • 第3章:銀行制度はいかにして成立したか アメリカ・ブラジル・メキシコからのエビデンス
  • 第4章:ひとつの島はなぜ豊かな国と貧しい国にわかれたか 島の中と島と島の間の比較
  • 第5章:奴隷貿易はアフリカにどのような影響を与えたか
  • 第6章:イギリスのインド統治はなにを残したか 制度を比較分析する
  • 第7章:フランス革命の拡大と自然実験 アンシャンレジームから資本主義へ

それぞれは、問題意識⇨定義⇨分析⇨結論、みたいなthe 論文ぽい構成になっているので、万人にとって読みやすいかというと??なんですが、内容自体はとても興味深く読めました。

私としては、第4章、第5章、第7章が面白かったです。

  • 第4章:植民地の関係で島の東西が分断されたハイチとドミニカの豊かさの系譜。初期にはハイチのほうが経済的に豊かだったのに、現在はドミニカは経済的に成功している一方ハイチは最貧国のひとつ
  • 第5章:奴隷貿易の輸出地となった場所は、現在他のアフリカ地域と比べても貧しい水準にある。著者の推計によると、アフリカとそれ以外の途上国の所得格差のほぼ30%が、奴隷貿易によって説明できる
  • 第7章:制度変更が経済に与える影響を観察するために、"撹乱"の要因としてドイツ国内でフランス革命の影響が及んだ地域とそうでない地域を区別し分析を行っている

制度の話がでてきて、ヴェブレンなんかを読んだ大学院時代を懐かしく思い返していました。

「経済学者は歴史をこう読み解くのか、そういう着眼点で研究対象を抽出するのか」そんな学びが得られる本です。

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史

歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史

 

 

記録#54 『人生を変えるモノ選びのルール』 "モノマリスト"への道

いろんな便利ガジェットや素敵プロダクトの紹介をしているブログ『monograph』を運営している堀口さんが出した新著。

発売からさっそく、Kindleで読ませていただきました。 

人生を変えるモノ選びのルール: 思考と暮らしをシンプルに

人生を変えるモノ選びのルール: 思考と暮らしをシンプルに

 

モノの選び方はその人の生き方や考え方に直結するというのが私の持論。せっかく多くの選択肢が選べる豊かなこの世の中だからこそ、一番自分が良いと思える「ときめくモノ」を側に置いておきたいと思いませんか。

Kindle位置:9)

私も大好きな本や愛着のある仕事道具、あとは大好きなねずこんのぬいぐるみなど、なんとなく好きなものに囲まれて生きている・生活しているという実感を持って生活しています。

とっても毎日が豊かです。

「モノマリスト」という生き方

ミニマリストがもてはやされる現代にあって、堀口さんは"モノマリスト"を自称されています。素敵なものに囲まれて、素敵な生活をおくることを志向する。

とてもいいなと思っています。

 モノを減らす意味合いの強い「ミニマリスト」とも少し違うし、モノをただ集める「コレクター」とも違う。

 自分にとって必要な、厳選されたときめくモノだけを周りに置く人々。私はこの人たちを「ミニマリスト」の一つの派生系で「モノマリスト」 と呼んでみようかなと思います。「モノ」を基軸に「生活」を考え、こだわりを持って愛情を注いでいる人。

Kindle位置:379)

そんな堀口さんが紹介するモノは、どれも素敵なものばかり。

Motherhouseのアンティークスクエアバックパック、Hender Schemeの小物入れみたいな身の回りのものから、Insta360やAnker製品のようなガジェットまで。

思いっきり物欲を刺激されてしまいました。

五感のノイズは少なく

堀口さんがすごいなぁと思うところは、「1日一つ、モノを捨てる」をあわせて実践していること。

モノの魅力に取り憑かれてどんどん家の中がカオスになっていくのかと思いきや、一つ増やしたら一つ減らす、の徹底で、家の中は驚くほど整頓されていると。

 「一日一つモノを捨てる」ことは難しくありません。

 むしろ最初のうちは一つモノを捨てるのをきっかけに、「あれも捨てよう」「これもいらない」と次々にモノを捨てられるはずです。

 大事なのは「一つ捨てるだけでいい」というハードルの低さ。コンビニのビニール袋でも、チラシ一枚でもなんでもいいので気軽な気持ちでゴミを一つゴミ箱に捨てると、それが呼び水となり、あれもこれもと自然と片づけモードに移行できるのです。

 この「一日一つ」のきっかけさえあれば、面白いように部屋の中のモノが減っていきます。

(Kindle位置:1,068)

その背景にあるのは、以下に自分の認知に負荷をかけずに必要な集中力・完成を保っていくか、という視点。

一つの物事に集中をする際には「ノイズ」を極力少なくすることが大切です。「ノイズキャンセリング」というと音のノイズを遮断することを指すように「耳のノイズ」にはみなさん敏感ですが、 意外と気がついていないのが目。「視覚のノイズ」です。  人間の目は非常に優れた感覚器官。『人は見た目が9割』という本がベストセラーになるくらい、人間の感性の大部分が視覚に左右されています。

 ですから私は極力自宅のインテリアはシンプルにし、テーブルの上は植物以外を置かず、服も雑貨も目に見えないように箱の中にしまっています。

 (Kindle位置:467)

 このあたりの習慣はぜひ見習いたいところ。。

おわりに

堀口さんが本書の中で、「モノの良さとはつまり調和である」って言うことをおっしゃっていて、とてもしっくり来ました。私も普段から、「馴染む」「鞣す」みたいな概念が好きなんですが、それに近いなと。

もっともっと、自分にとって心地良い、それでいて刺激的なものに囲まれて、楽しいモノマリスト生活を送っていきたいと思いました。

自分の身の回りのモノを一つ一つ見返したくなる、とても良い本でした。

人生を変えるモノ選びのルール: 思考と暮らしをシンプルに

人生を変えるモノ選びのルール: 思考と暮らしをシンプルに

 

 

 

記録#53 『砂糖の世界史』 世界商品・砂糖に動かされる人の歴史

大好きな岩波ジュニア新書シリーズ。

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

 

「世界史を学ぶなら塩の歴史を学べ!」と高校の時いわれて当時は意味がよくわからなかったんですが、
今になってみると、一つのテーマにぐっと絞りそれにまつわるエトセトラを見ていくと世界の趨勢を大まかにかつ具体的に把握することができて、 良い方法だったんだなぁと理解するに至りました。

今回はお砂糖の話。

著者は川北稔さん。大阪大学で長く教鞭をとられた、西洋史のエキスパートです。

生まれつきお砂糖が嫌いな人はいない

みなさん、基本は甘いものが大好きですよね。古文でも「甘し」と書いて「うまし」と読むんだと教わりました。それくらい、おいしさ=甘さ、というのは普遍的なことなんだと思います。

お砂糖の起源はインドネシアにあると言われており、その後インドあたりまで広がっていきます。その後紀元前4世紀にイスラム帝国がインドに至り、その中で中東・ヨーロッパにもさとうというものがもたらされました。

それまで、甘味といえば蜂蜜しか知らなかったヨーロッパ人にとっては、砂糖の強烈な甘さと純白さは、なにか神秘的なものにみえたことでしょう。なおそれが、非常に高価なものであったこともあって、ますますそれは神秘性を帯びたともいえましょう。(pp.18)

純白。圧倒的な甘さ。

そんな魅力に溢れたお砂糖は至る土地すべてで人々を魅力したのです。

お砂糖とプランテーション

ヨーロッパに伝わった当時、希少品だったお砂糖は食品・調味料というよりむしろ"薬"という位置づけでした。

砂糖が本格的に使われ始めた16、17世紀には、砂糖には、結核の治療など10種類以上の効能が期待されていました。(pp.8)

アラビアでは、すでに11世紀の偉大な医学者アヴィセンナ(イブン・スィーナー)が「砂糖菓子こそは、万能薬である」と断言していました(pp.63)

そんな砂糖を一般の人(といっても裕福な人だけど)も楽しめる"世界商品"にしたのは、大航海時代の旗手、ポルトガルでした。アフリカやアメリカ大陸に積極的に進出し、そこに当時まだ希少品だった砂糖のプランテーションを次々と建設します。そのプランテーションで働くことになったのが、アフリカから強制的に連れてこられた黒人奴隷です。

農業が一挙に変わり、そのために風景がすっかり変わった結果、これらの島々はプランテーションにおおわれ、底に住む人間の構成も大きく変わりました。すなわち、かつてはたくさん住んでいたカリベ族がほとんど消滅させられてしまい、それに変わってアフリカから連れてこられた黒人の奴隷が、人口のほとんどを占めるようになったのです。(pp.40)

お砂糖の魅力が、人を大陸から引き剥がし、かつその国をモノカルチャー経済で支配してしまったのでした。その影響は、いまも続いています。

イギリスのお砂糖消費事情

お砂糖の消費をいっそう加速させたのが、当時大英帝国として世界を席巻していたイギリスのお茶消費拡大でした。

お茶の中にお砂糖を入れるという"発明"が、砂糖消費を一層拡大させることになったのです。

お茶×お砂糖という組み合わせはどこかの国で行われていた文化ではなく、ゆーたら「高級品のお茶の中に、高級品のお砂糖いれちゃう私、ものすごくリッチじゃない?」というブルジョワなイギリス紳士が生み出したもの、とのこと。

けっきょく、茶と砂糖という2つのステイタス・シンボルを重ねることで、砂糖入り紅茶は「非の打ち所のない」ステイタス・シンボルになったのです。(pp.80) 

この飲み方が一般大衆のあこがれとなり、労働者もこれにならった生活習慣を取り入れることで、砂糖の消費量も合わせて増えていった、そんな歴史があります。

コーヒーハウス

長くなってきました。これが最後。

砂糖入りのお茶(あるいはコーヒー)が一般に広がってくると、ロンドンの町に"コーヒーハウス"が栄えることになります。ここでは、一杯のお茶を楽しみながら新聞を読み、情報交換をし、一種のサロンの役割を果たすことになります。

ここから生まれた代表的な業種・職業が、保険だったり、株式取引だったりするわけです。

お砂糖⇨お茶⇨コーヒーハウス⇨情報産業、という流れで、世界が動き出していきました。

おわりに

その他にも、アメリカ新大陸でのティーパーティー事件や、プランテーションでの生活の実際など、砂糖にまつわる色んなお話がでてきます。

かつ、岩波ジュニア新書なので、文体も平易で読みやすい。

世界史を学ぼうとする若い人にお薦めの良著です。

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

 

 

 

記録#52 『ボードゲーム デザイナー ガイドブック』 楽しいゲームの作り方。

最近日本でも盛り上がりを見せているボードゲーム

この本はドイツで出版されたものですが、ボードゲームデザイナーとという職業があるんですね。

熟練のボードゲームデザイナーである著者が書く、ボードゲームデザインのガイドブックがこちら。

ボードゲーム デザイナー ガイドブック 〜ボードゲーム デザイナーを目指す人への実践的なアドバイス

ボードゲーム デザイナー ガイドブック 〜ボードゲーム デザイナーを目指す人への実践的なアドバイス

  • 作者: トム・ヴェルネック,小野卓也
  • 出版社/メーカー: スモール出版
  • 発売日: 2018/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

私はゲームというものそのものに関心を持って読みはじめましたが、「人を動かすための仕掛け」について学びを得られた気がします。

なにがボードゲームを良いものにするのか

  • 面白い基本アイディア
  • 革新的な構造
  • 明確なゲーム進行
  • 革新的で魅力的なゲーム用具
  • サプライズ効果
  • ゲーム進行のテンポ
  • インタラクション
  • 興奮曲線
  • キングメーカー効果
  • 順位が途中で決まらないこと
  • 最後まで参加できること
  • チャンスとリスクのバランス
  • 決定性と一貫性
  • 規則性
  • 一義的なルール
  • 敷居の低さ
  • ターゲット層とのフィット

ゲームのルールを誰かに伝えるときに含むべき内容とは

  • ゲームのタイトル
  • ゲームの種類(思考ゲーム、戦略ゲーム、等)
  • 対象とするプレイヤー人数
  • 対象年齢の幅
  • ゲームの平均所要時間
  • 用具リスト
  • ゲームの背景にあるストーリー
  • ゲームの目的/アイディアの簡単な説明
  • ゲームの準備
  • ゲームの進行ルール
  • ゲームが終了する条件
  • 勝者の決め方
  • (場合によって)戦略のヒント
  • (場合によって)ゲーム進行の例
  • (場合によって)プレイヤー人数が異なる場合の特別ルール
  • クレジット

プロトタイピング

とにかくテストせよ!テストプレイせよ!というのがメッセージでした。

友人に何度もテストプレイしてもらって、彼らを観察し、ルールを修正していけ、と。

面白い視点を得られた本でした。

記録#51 『まんがでわかる オーナー社長のM&A』事業継承・中小企業M&Aをマンガで。

投資ファンドの人が書いた「個人で小企業買っちゃいないよ!」本を読んでから、 もう少しプロセスを追ってみようと思っていました。

nozomitanaka.hatenablog.com

その中で手を伸ばしたのが、中小企業M&Aでかなりのシェアを持っている日本M&Aセンター監修で作成しているマンガ。サクッと読めます。

まんがでわかる オーナー社長のM&A

まんがでわかる オーナー社長のM&A

 

登場人物は

  • 酒蔵の6代目当主で頑固一徹、でも体調の問題もあり会社をたたもうとするお父さん
  • 東京に出てきているけどお父さんのことが心配、なんとか酒蔵を存続させられないかを模索する娘さん
  • 娘さんの婚約者の友人で、中小企業M&Aに詳しいコンサルタント

という感じ。

M&Aというものを結婚に例えながら、相性が大事!デューデリジェンス(DD)をしっかりしよう!という内容の本でした。最後は無事に、中堅企業に引き取られて(結婚して)いきます。

本編の合間に、M&A全体がどんなプロセスで進んでいくのか、DDって何をするのか、中小企業M&Aの標準的な企業価値算出法はなにか、などの解説もあります。

そのあたりを読んでいくと、「こんなにうまくいかんやろ...」という視点もありつつ、流れ全体を1時間くらいでぱーっとおえる、便利な本だと思いました。

最後の最後に「M&Aのご相談はこちらまで!」というFAXフォーマットまで用意されていたのはさすが日本M&Aセンター、、、というところです。 

まんがでわかる オーナー社長のM&A

まんがでわかる オーナー社長のM&A

 

 

記録#50 『教養としての「ローマ史」の読み方』ローマの成功・失敗から学ぼう。

ギボンの『ローマ帝国衰亡史』しかり、国家や大きい組織の行く末を考える上で多くの人の研究対象となってきたローマ史。

都市国家・ローマの成立から拡大、分裂、滅亡に至るまで、かなりのロングストーリー&話の入り組み方なので、そもそもどういった視点でこの歴史を捉えるべきなのか、ということについて難しい点がありました。

そんな中で、ローマ史を専門とする本村先生の新著が出ました。 

教養としての「ローマ史」の読み方
 

 私もこの本を通じて、

  • アテネなどのギリシャ各都市が小さくとどまる中、なぜローマは帝国になったのか
  • そもそもローマの共和制ってどんなふうに成り立っていたのか
  • たっっっっっっくさんいるそれぞれの独裁官や皇帝はどのように評価されるべきなのか
  • ローマ帝国衰退の理由をどのように捉えるべきなのか

などいろいろ勉強させていただきました。細かい人の名前などは全く覚えられないんですが、まさにタイトルにある"教養"として、自分なりにローマ帝国というものに対する感想を持てるくらいまでにはなれたと思います。本当に良著。

民主主義、というものの捉え方

本村先生の文体を読んでいると、現代ではある種の前提になっている「民主主義を基盤とした政治」というところに問いを投げかけているように感じました。

  • 国としての正しい意思決定をするための手続きは民主主義で担保されるのか
  • 民主主義政治において往々にして起こるポピュリズムとどう向き合えばよいのか

原始的な民主主義が採用されていたギリシア社会と異なり、古代ローマを支えていたのは元老院を中心とする共和制でした。

 政務官や、最高権力者である執政官の任期を一年というごく短いものにしたのは、ローマの共和政が、まさに「反独裁のためのシステム」だったからだと言えます。

 ローマ人は、なぜこれほどまでに独裁を嫌ったのでしょう。

 それは、ローマ人が「自分たちは自由人である」という強い意識を持っていたからだと考えられます。つまり、一人の人間に支配されることを、自らの自由を侵すものとして嫌悪したのです。これは古代ローマを理解する上で押さえておくべきポイントです。

Kindle位置:363)

 ローマ帝国末期、時の皇帝・カラカラ帝は帝国全体に対してローマ市民権を付与することで人心の掌握および軍隊の拡充を図ります。しかし、この施策が奏功することはありませんでした。

 彼にとっては、帝国内のすべての地域が平等でした。東も西も、北も南も関係ない。イタリア的なものを特にありがたがるということもない。そういう意味では、ローマは彼の治世において「空前の民主化、均等化」が生じたのです。これは、彼によってローマが、「ローマ人の帝国」から「ローマ帝国」になったということです。

 こうした民主化、均等化は、現代の感覚で言うと素晴らしいことのように思いますが、問題がなかったわけではありません。なぜなら、広い帝国全土において均等な価値を認めたことによって、皇帝権力の基盤がどこにあるのかということがあやふやになってしまったからです。

 その結果、「権力ではなく権威を以て治めよ」というローマの伝統は失われ、露骨な権力、つまり「軍事力」が皇帝権力の基盤になってしまいました

 (Kindle位置:2,811)

民主主義というものが広がった結果、国というものを捉える基盤がゆるいでしまい、結果的に軍事力や経済力という、ある種のわかり易い指標に基づいた国家運営しかできなくなってしまう。

いまの民主主義国家でも、同じことが起きているのではないでしょうか。

寛容な社会・非寛容な社会

古代ローマについて私が驚いたものは、その懐の深さ、寛容性です。

 もともとローマ人は、寛容な人々でした。

 勇敢に戦った敗戦将軍を受け入れ、雪辱のチャンスを与え、スキピオは差し出された美女を婚約者のもとに祝儀をつけて返しました。カエサルは自分を裏切ったブルトゥスを何度も許し、併合した属州の人々にローマのやり方を押しつけることもしませんでした。ローマ人に対してはもちろん、異民族に対してもローマ人は寛容な精神で対していたのです。

Kindle位置:3,741)

負けた将軍に再チャレンジの機会を与える。打ち負かした相手からの貢物を返納する。自分を裏切った相手を赦す。異民族に独自の慣習を認める。

これだけの大国家ながら、ローマ帝国の根底に流れていたのは自由と寛容の精神でした。

しかしこれが、帝政末期になると変容していきます。

 そうした「寛容なローマ人」が時間とともに変質し、非寛容になったことにこそ、ゲルマン人の大移動後に起きた、繰り返される暴動の本当の原因があるということです。

 この視点は、現在のアメリカにおける不法移民への対処のあり方や、ヨーロッパ諸国の中東難民受け入れ問題など、この時期のローマが抱えていたのと類似した諸問題を考える上で、とても重要なものだと思います。

 (Kindle位置:3,741)

 社会が停滞し、多神教的な考え方が一神教的なものに移り変わり、だんだんに全体が非寛容になっていくことが、鶏と卵の話はあれど、帝国が崩壊していった原因のひとつなんでしょう。

おわりに

タイトルにある通り、ただローマ史を紹介するだけではなく、「現代の我々がローマ史をどう読み解くべきか」という視座を与えてくれる、素晴らしい本でした。

上に書いたような俯瞰した視点だけではなく、ネロ帝は本当に暴君だったのか、ディオクレティアヌス帝はキリスト教とどう向き合ったのか、カエサルポンペイウスはリーダーシップの視点でどう異なったのか、人にまつわる色んなお話が出てきます。

内容濃密なので、じっくり腰を据えて読めるタイミングで1ページ目を開くのがおすすめです。

教養としての「ローマ史」の読み方

教養としての「ローマ史」の読み方

 

 

P.S.

個人的に一番気になったのは、カエサルクレオパトラの子供の名前がカエサリオンだということです。むっちゃださい。。