たなかの読書記録

淡々と、読んでよかったなぁと思う本を紹介していきます。本のジャンルはばらばら。紹介するタイミングは四半期/年ごとが基本、その他は気まぐれです。

記録#20 『心の疲れをとる技術』心のムリ・ムラ・ムダとどう向き合うか

疲れの時代です。
マッサージ屋さんは盛況だし、疲労回復!みたいな本が並び、疲れをふっとばすみたいなCMもたくさん流れています。 

体の疲れだけではなくて、心の疲れも大きな問題です
居酒屋さんにいったときにサラリーマンが「いやー、疲れたよ」といっている時、その疲れは体の疲れでしょうか。心の疲れでしょうか。スーツを着た多くのサラリーマンが疲れを感じているのは、仕事のプレッシャーや家庭の問題に由来する心の疲れでしょう。

体も心もMAXに疲れる職種があります。軍人です。戦場に出向けば過酷な環境で交戦し、生死を争う精神的なプレッシャーも相当なものでしょう。
日本の自衛隊員も、中東に赴いた派遣団の活動は一般の軍隊に近い活動量・精神的負荷を伴うでしょうし、災害に伴う被災地での活動でも、その心身に与える疲労感は相当なものだと思います。

この本の著者・下園壮太さんは、その自衛隊で「コンバットストレス教官」として、隊員に心の疲労・メンタルヘルスについての教育を担当されています。そんな方が教える、心の疲れへの対処法。

人生という長期戦

下園さんは、自衛隊と人生の共通点として、どちらも長期戦であることを指摘します。

今、思うのは、自衛隊のメンタルの強さは「長期戦を戦える力」であるということだ。
自衛隊は国の存続の最後の砦。どんなに苦しくても、どんなに長期化しようとも、決してへこたれず最後まで任務をやり遂げなければならない。そういう組織なのだ。
長期戦を戦うには、二つの要素が必要になる。
一つは「組織力」。自衛隊には戦車や大砲の部隊だけでなく、通信、医療、物資、輸送、情報などの部隊がある。自衛隊が活動するとき、そこには、道路ができ、居住テントが張られ、食堂ができ、お風呂ができ、病院ができ、電話が引かれる。メンタル面も個人だけに任されるのではなく、同僚が支え、上司がケアし、専門家が治療し、組織としても対応する
長期戦を戦う二つ目の力は、「疲労のコントロール」だ。
何かが起こると、まず一つの部隊が迅速に対応し、一生懸命働く。しかし人間が活動する以上、すぐに疲労してしまう。疲労するということは戦力が低下するということだ。任務達成が危うくなる。そこで、戦力が低下しきる前に、部隊を交代させる。

Kindle位置:20) 

長期戦を戦う上で重要なのは、組織化された活動を安定して実施していくために、個々の隊員が疲弊していないこと。
自衛隊は常に組織として一定のパフォーマンスを出せるように、隊員に強制的にオフを与えます。例えもう少しで仕事が完了するところであろうと、プロジェクト全体が長期にわたるのであれば、無理にでも仕事を引き剥がして休息を与える。とても合理的だと思いました。

私たちも、いかに疲弊しようと、人生を勝手にやめるわけには行きません。
自分の頭が求めていなくても、無理にでも疲れを取るための休息を取るべきなのかもしれません。 

心のムリ・ムダ・ムラ

下園さんは、心の疲れを「ムリ・ムダ・ムラ」という3つの視点から説明しています。

  • ムリ:ムリして疲労がたまっているのに、それを自覚できず、止められず、深みにはまっていくカニズム
  • ムダ:心のエネルギーを最も低下させる、感情のムダ遣いをするカニズム
  • ムラ:エネルギーの出し方にムラがあり、自分と周囲が翻弄されるカニズム

少し話がそれますが、プロジェクト・マネジメントに関する大好きなブログの中でこの「ムリ・ムダ・ムラ」というコンセプトが紹介されていて、なるほどと思った記憶が蘇りました。下記は2016年に読んだ記事の中でも最も感動した記事のうちのひとつ*1です。

「ムリ」:短期目標を追い続け、だんだんに麻痺してくる心

多くの人が「ムリ」のメカニズムにはまって疲れをためていく。
頑張っている自分が好き、短期的な目標達成のために走り続けている。一方で年齢とともに体力も思考大量も回復力も落ち、自分が想定する限界と実際の限界にギャップがでてくる。

多くの人が短期目標に突き動かされる人生を送っている。
それは、短期目標が持つ魅力が大きいからだ。短期目標は、やる気を瞬発的に出すことができる。
やる気が出ているとき、我々は快感と高揚感を持てるし、自信を感じやすい。短期の目標は、明確に意識しやすいため、仲間と共同作業を行いやすい。だから「仲間と一緒にやり遂げる」という感覚も持てる。
さらに、短期目標は必死にならざるを得ないので、そのほかの小さい悩みを考えるいとまがない。つまり、嫌なことを忘れられる効果もある(Kindle位置:395)

このムリな状態が続くとへたってしまいそうなもんですが、それを続けさせてしまうのが麻痺というメカニズム。
麻痺は興奮状態も伴うために、ムリをしているのにむしろ快感を得てしまうことも。
しかしそれはあくまで一時的なもの、疲れが積み重なると結局は破綻してしまう。

「ムダ」:怒りや不安により自身がダメージをおっていく 

疲れというのは、エネルギーを使いすぎている状態。
それは何かを達成するために行っている「ムリ」だけでなく、周囲に自然に反応するときの感情面の「ムダ」からも生まれます。仕事人間や趣味に没頭する人は「ムリ」が、周囲の目が気になって仕方ない人なんかは「ムダ」が心の疲れを招いているのかもしれません。

怒りだけではない。「不安」も最悪をイメージし続ける思考が延々と続くので、消耗が激しい。不安が長引くと、我々はあっという間に体重が減ってしまう。
「喜び」さえ、それほど長くは続けられない。エネルギーを使っていることに変わりはないからだ。喜びは、もともと周囲に安全や食料・水などの存在を知らせる感情で、笑いと大声が特徴だ。笑いと大声もエネルギーを使う。息ができないし、笑い続けることが苦しいのは、誰でも知っている。
どんな感情でも、大きなエネルギーを使っているのだ。(Kindle位置:1,418) 

この部分の内容は、以前読んだ「反応しない練習」の内容とも重複するなと思いました。仏が伝えたかったのは、「そんなムダな反応で自分を傷つけてもいいことないよ」ってことでしょう。

nozomitanaka.hatenablog.com

「ムラ」:ムリ・ムダを繰り返す心の波

なにか最適なレベルがあるときに、過剰にやりすぎてしまうことを「ムリ」、必要以上に資源を使いすぎてしまうことを「ムダ」。そのムリ・ムダの状態が一定せず、行き来してしまうことが「ムラ」です。

心が麻痺して「ムリ」の状態が長く続き、その後心が折れてしまい作業にミスが増えて「ムダ」の状態に移行する。その後復帰してまた「ムリ」をしてしまう。こんな状態は、「ムラ」の多い状態といえます。

ムリとムダの混在がムラだ。ムラは、何かをしようとすると必ず生起する。それは、人がやはり動物で、やる気のある時とそうでない時、健康な時と病気の時、スキルが十分な時と未熟な時があるからだ。
だから、ムラをゼロにする必要はないが、コンスタントなパフォーマンスをするためにはムラを少なくしなければならない。 (Kindle位置:2,587)

ムラが大きくなると、本人が辛いのはもちろん、周りの人も対処が難しくなります。

心の疲労とどう向き合うか

この本のタイトルには「心の疲れを取る技術」とありますが、これは何かの道具を買ったり学んだりすればすぐに身につく技術ではありません。

  • 日常の「ムリ」をなくすには、組織としての休憩導入の仕組み化、個人としての動・静両方のストレス解消方法探索が必要
  • 感情の「ムダ」を無くすためには、①湧き上がった不要な感情を抑える練習②大局的に物事を見る視点コントロールの練習③自信を感じられる工夫・練習が必要
  • 「ムラ」をなくすには、まずは本人のムリを減らすこと。周り・チームとしてできる対策は、予備・バッファを持つころ

どれも、組織・チームとして工夫しましょう、個人としても意識して練習しましょう、という内容です。

そらそうですね。一瞬で疲れがなくなったら言うことありませんが、そんなのムリです。

個人的には、社会全体としてこの「ムリ・ムダ・ムラ」のために疲弊していて、感情のはけ口を求めている気がします。一部の麻痺した人たちを治療して、その人から派生して苦しんでいる・疲れている人が減っていくといいなと思います。

 

*1:ふたつだけど。

記録#19 『挑戦 巨大外資』 どこにでもある会社政治の奥深さ

外資系に入りたい・移りたいと言っている就職活動生・日系勤務の若手さん。

ぜひこれを読みましょう。

 「外資だろうと、社内政治と根回し、気分人事はどこの組織にもあるんや」

そんな当たり前のことをおしえてくれる小説です。

主人公は、米大手製薬会社ワーナー・パーク社の日本法人に30代前半にして経理本部長としてスカウトされた香山岑之。そんな彼が、期待の本部長として入社してから取締役として退職するまで30年を描いています。

  • 仕事はそれほどできないが英語の言語能力が高いために、なんとなく重宝されているだけの英語屋さんという人種がいること
  • 本社の政治闘争で各国事務所のヘッドがぽこぽこ変わっていくこと
  • 人事評価はいかに正当な基準・システムを入れても結局好き嫌いで首を切られたり評価を下げられたりすること

そんなことをおしえてくれます。

上下巻あってボリュームたっぷりなんですが、作中で主人公はほとんど人事闘争に明け暮れています...

偉くなるとはこういうことなんだろうか、外資で働くって、と考えさせてくれる良い作品だと思います。 

挑戦 巨大外資(上) (講談社文庫)

挑戦 巨大外資(上) (講談社文庫)

 

 

記録#18 『どこでも誰とでも働ける』 フラット・リンク・シェアの時代に

ITビジネスの原理』や『ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか?』『モチベーション革命』なんかを書かれている尾原さんの新著。 

これらの本をKindle Limitedに提供していたり、Twitterでどんどん発信したり、今っぽい仕事との向き合い方をされてる人だなぁと思って拝見していました。

これからの社会の指針、そこでの働き方

尾原さんが考えるこれからの社会。それは、インターネットによって実現されるフラット×リンク×シェアがトレンドになるはずだ、と。

世界がインターネット化することによる影響は無数にありますが、個人の働き方は、多くの人や企業と対等(フラット) の関係でつながり(リンク)、知識や成果を分け合う(シェア) 形に進むことになるでしょう。むしろ、そうした働き方に適合する人でなければ、ビジネスの輪の中にいることができなくなっていくはず(Kindle位置:75) 

 一つ前の記事で取り上げたサイボウズ・青野さんの本にもある通り、会社という単位によらず働く人が増えていくだろう社会において、フラットな関係を築き、能動的にリンクして/させて、シェアすることをためらわない、そんな人がビジネスの中心になるだろうと、私も思います。

そのために必要なマインドセットや方法論がばばーっと書いてある本です。

働く上でのマインドセット

自分からまずオープンに、抱えない

自分自身が持っている知識や経験、つながりなんかをクローズド・丸抱えにしないこと。これは、

  • 自身がまずオープンにすることによる相手からの信頼の意味合いが大きくなること
  • オープンにすることによって、自分自身の旗を立てる・ブランドを立てる効果があること

という意味合い。

さらに、困っていることもどんどんオープンにしよう、というメッセージもありました。

ぼくが新人のときによく言われたのは、「自分で全部やるよりも先輩の力を借りたほうが時間も短縮されるし、結果的にコストも安くなるということなら、ためらわずに聞きに行け」ということ (Kindle位置:621)

 私も新卒のときに同じことをたくさん言われました。今でもよく偉い人に聞きに行くし、一方で人に頼られたときにはできるだけ答えようとも思っています。助け合い。

Planから始まるPDCA、ではなくDから始まるDCDCDC...PA

とにかくどんどん実行してみて後から軌道修正をはかる。スタートアップではある種の常識です。

一方でお客さんのところに行くと、まだまだ「計画は?」「見通しは?」から始まるPDCAです*1

成果物が紙だったり物理ハードなんかだと、Pの部分はものすごく大切で、なぜならやり直し・修正のコストが大きいから*2。一方でインターネット上のコンテンツなんかは比較的修正が容易です。

自分の目の前の仕事やキャリアはどうなのか。やり直しコストがむちゃくちゃ大きいのか、修正が効くものなのか。私は、ほとんどの物事は修正コストが小さく、まずやってみちゃったほうがいいと思っています。その見極めができるようになるといいなと思います。

先に行動ありきで何度も試行錯誤を重ねるDCPAサイクルも、コンピュータの処理能力をフル活用した確率論的なアプローチも、インターネットととても相性のよいやり方です。
それと対極にあるのが、プロダクトやサービスを通じて自分たちのこだわりや価値観を提案していく従来型のアプローチです。 この2つの違いは、そのままウェブメディアと紙の雑誌の違いに当てはまります。一長一短ありますが、どちらも必要というのがぼくの考えです(Kindle位置:483)

"ハッカー"になる

解く価値のある課題に対して、まっすぐに取組む人になること。

↓にあるような、これからの時代に活躍する人は少なからずハッカーである、というのはすっと自分に入ってきた内容です。

取り組む価値のある、難易度の高い〝いい課題〟を発見すると、
「おもしろそう! 一緒に解かせてよ」
と仲間がワラワラ集まってきて、世の中を変える解決策を生み出していく。それがハッカーたちの文化なのです。

リナックスLinux) をつくったリーナス・トーバルズのような大物ハッカーも、別に世界をよくするためにやっているわけではないと思います。単に自分の技量の中で挑戦できる最高の課題を、最高のチームでできることが楽しくてやっているのでしょう。それは、彼の本の原題が『Just for Fun』(『それがぼくには楽しかったから』 小学館プロダクション) であることからもわかります。

「自分の〝好き〟をとことん突き詰める」という意味でも、課題を発見するという意味でも、AI時代に活躍できる人というのは、少なからずハッカー的な要素をもった人なのではないか(Kindle位置:1,795)

 

こんな感じで、事例を用いながら、これからの社会で価値を出していくための働き方・マインドセットを紹介してくれています。

おわりに

内容にもすごく共感できたんですが、巻末にあったこの引用がとても素敵でした。

 

謙虚とは、自賛の反対であるとともに、卑下の反対でもある。謙虚とは自己を他と比較せぬということに存する。自己は一個の実在であるがゆえに泰然自若として、他の何物ないしは何者よりも、優れてもおらず、劣ってもおらず、大きくもなく、小さくもないのである」ダグ・ハマーショルドKindle位置:2,119) 

しっかり読んでも2時間くらいで頭に入ってきます。ぜひぜひ読んでみて下さい:-)

どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから

どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから"の仕事と転職のルール

 

 

*1:なんならPPPPPPPPPPP.....だったりします。

*2:今まさに取り組んでいる医療業界も、修正のコストが大きい業界の一例。死んでしまったら終わり。だからプロダクトの進化スピードが遅いのでは(気軽に試せない)という仮説

記録#17『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』カイシャとは何か?

私たちがあたりまえに受け入れている「会社」という存在。冷静に考えると、なかなか不思議だったりします。

たくさんの人が会社に所属してお金を稼ぎ、その働く中でも、どこか他の会社に営業をしたり、また別の会社から仕入れをしたりします。仕事を終えて家に帰るときもある会社が運営するお店によって買い物をし、色んな会社からかった物であふれる自宅に帰ります。

「会社」ってなんだろう?

この本はそんな疑問から始まります。

法人、つまり法律が定義した「人」ということになります。「カイシャには実体がないけれど、法律の上では『人』として取り扱おう」と定義しているわけです。人間が仮想的に作り出した生きもの、それが法人、それがカイシャです。たとえるならば、「妖怪」のような想像上の生きもの をイメージするとよいでしょう。
実際には存在しないのだけれど、存在すると仮定して、その存在に名前をつけて、人のように扱っていこう、ということになります。(Kindle位置:195)

この本の著者はサイボウズの現代表取締役・青野さん。

少し前に、夫婦同姓・別姓の選択権に関する訴えを裁判所に提出したことでも話題になりました。

www.change.org

会社という妖怪

彼がこの本の中で、会社を「妖怪」に例えるのには、わけがあります。

一つには、実態がないこと。「会社を指さしてください」といっても、その存在を示すことはできません。

もう一つは、死なないこと。会社には、「継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)」という考え方が適用されており、社会の公器として、半永久的に存続していくことを期待されています。

そしてさらに、実体がないにもかかわらずお金で太っていくことです。

実体がない上に死なない。まさに妖怪です。
カイシャと雇用契約をした生身の人間が頑張って働いて、事業がうまくいって、利益が出て、内部留保が増えれば増えるほど、妖怪「カイシャ」の寿命は伸びていきます。そして、お金が貯まれば貯まるほど、所属する人間が多くなればなるほど、社会的に大きな力を持つようになります。
最初は小さかった妖怪が、どんどん巨大化していく。まさにモンスター。(Kindle位置:235)

妖怪代理人としての代表取締役

タイトルにある、『会社というモンスターが僕たちを不幸にしているのかもしれない』という懸念は、この実態のない会社を太らせようとする仕組みにあります。

会社という妖怪を太らせたいという思いを強く持っているのは、代表取締役という人です。この代表取締役は会社という妖怪の代理人で、会社が大きくなるに従ってその代理人として社会的名声も得られるし、自身の決定一つで報酬額を大きく増やすこともできてしまいます*1

なので、自身のことだけを考える代表取締役が働く会社に入ると、その社員は不幸になる、と。

日本のカイシャが楽しくないのは、「社員を我慢させる仕組み」で運営されているから。
その仕組みを作っているのは、カイシャの代理人である代表取締役。(Kindle位置:424) 

あらゆる会社が、成し遂げたいこと・目指す世界があって立ち上がっていくのに、代表取締役が会社というモンスターに飲み込まれていくと、おかしなことになっていく。

カイシャが世間に知られるようになっていくと、経営者が周りの目を気にするようになり、いつの間にか目的が「売上を伸ばす」「利益を増やす」となって、「利益を増やしますから、代表をやらせてください」となってしまう。
こうなると企業理念を重んじることすらなくなります。 企業理念に「お客様第一」と掲げていても、実際の現場では「今月のノルマ達成が一番大事だ」と、優先順位が入れ替わってしまう (Kindle位置:448) 

会社というコンセプトが壊れる時代に

私たちの世代の人を見ると、会社に所属をせずに仕事をしている人が多くいます。少し前にも、フリーランス市場の成長が記事になっていました。

www.lancers.co.jp

この背景には、会社という組織に対する不信感があると思います。

「毎週末会社に行って仕事をしているのに達成感がない。やっていることの意義を感じない」

「こんなに売上を上げているのになんでこんなにお給料が低いの?」

「私がこんなに頑張っているのに、さぼってるおっさん・おばさんのほうが給料高いのは納得できん」

こんな声、よく聞きます。

おそらく、今の若い人たちは、モンスターの正体に薄々気づいているんじゃないでしょうか。
我慢レースを強いられて、自分の成長を妨げられるかもしれない。
もし何かあったときには放り出されるかもしれない。
長い人生を考えるとリスクが高い職場だと感じているのかもしれません(Kindle位置:1,558)  

青野さんは、会社という存在をもっとカジュアルにしていくことを提案しています。 

会社法等の制度上いろいろ制約があるのかもしれませんが、もっとプロジェクトチーム的に、ぱっと作ってぱっと解散する組織があってもいいと思っています。

「カイシャは永続すべきである」と言われることがありますが、私はそれには賛成しかねます。
これからの時代、もっとカイシャは作りやすくて、解散しやすいものになる と思っているからです。だから、理念が弱くなってしまったカイシャは、むしろ早くリセットしてしまったほうがいい。(Kindle位置:488)

 そんなプロジェクトチーム時代に必要なスキルとして、青野さんは人に依頼する・一緒に働くスキルを上げます。

「人のスキルを借りる」ために大事なのが、「頼むスキル」です。
「頼むスキル」の高い人は、まず、自分に何ができて、何ができないかを認識しています。
そして、誰に頼むのがよいかを考え、場合によっては新しい人脈を切り開いてでも、できる人を見つけ出します。(Kindle位置:937)

おわりに

面白い本でした。大学院を出てからずっと「会社」に所属してきた自分として、改めて振り返るができるような、これからの働き方を考えさせられるような、いい本でした。

4月になって新社会人の姿を沢山みかけますが、社会人なりたてくらいのときにこの本を読んでいると、自分の会社を冷静に見ながら心穏やかに過ごしていけるかもしれません...

会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。

会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。

 

 

*1:社会人になって、代表取締役と社長、というのは全く別のものなんだということを初めて知りました

記録#16『強いチームはオフィスを離れる』いい仕事をするためにオフィスは必要なのか

最近は働き方の多様化についていろんなところで議論がされていて、そのテーマの一つにリモートワークがあります。

日本で最初にテレワークが盛り上がった2000年代前半には企業単位でのリモートワーク導入率は20%近くまで高まりましたが、最近は10%程度まで落ち着いて着ているようです。*1

その理由としては、

  • セキュリティに不安がある
  • 社内コミュニケーションが不調になる
  • 柔軟・スピーディな連絡が取りにくい

などの課題が挙げられているようです。

私はリモートワーク推進派、PCとモバイルWifi片手にお外で仕事をしたりしています。下の記述に首がもげるぐらいうなずく。

なぜ会社にいると仕事ができないのか  本当に集中して仕事がしたいとき、あなたはどこへ行くだろう?  まわりの人間に、そうたずねてみてほしい。「会社」と答える人は、ほとんどいないはずだ。(Kindle位置:84) 

 

色んな人に話を聞くと、リモートワークはシステムの問題ではなく、人材・チームの質の問題だと感じます。

  • セキュリティに不安がある ⇨ ICTとしてのセキュリティはオフィスでもリモートでも一緒。結局社員の意識、会社の文化。
  • 社内コミュニケーションが不調になる ⇨ 質の高いコミュニケーションができる人をとり、チームを作る。
  • 柔軟・スピーディな連絡が取りにくい ⇨ 突発的な連絡を取らなくてもいい制度づくり、それでも付加価値を埋める個人・チームの育成

この本を読んで、その思いを新たにしました。

グローバル×多拠点で大成功を収めた37 Signals

37 Signals(現・Basecamp)はシカゴに本拠地を置くWebアプリケーションの開発会社。代表的な製品はプロジェクト管理ツールのBasecampで、現在はオープンソースとなっているプログラミングフレームワークRuby on Railsは元々この37 Signals向け開発されたものだったとのこと。

この会社の思想は明確で、

  • 個々人の能力が最大限発揮される環境・時間帯で働いてもらおう
  • チームの連携は必要なツールでできるよね、対面じゃないとできないようなレベルの低い人は採用しません

ということだと感じました。素晴らしい。

部下が信用できないなら、それは人材採用が正しくできていない証拠です。
成果のだせない社員や、自分の作業スケジュールを管理できない社員は、会社に必要ありません。それだけの話です。我々はスキルの高いプロフェッショナルだけを採用します。
自分のスケジュールを管理し、組織に貢献できる人間だけが生き残ります。
わざわざ会社で子守りをする余裕はありません(Kindle位置:385) 

危機対策としてのリモートワーク

 地震などの自然災害、突然の社員の退職、様々な事業の継続リスクがあるなかで、オフィス勤務にこだわるのはそのようなリスクに対して脆弱性を持ち続けることだ、とも指摘しています。

システムの世界には、SPOF(Single Point of Failure)という言葉がある。
その部分が壊れたらシステム全体が止まってしまうような、致命的な弱点を指す言葉だ。システムの信頼性を高めるには、SPOFを事前に発見して取り除くことが重要になってくる。
どんなに頑丈なものも、いつかは壊れる。だからその部分が壊れてもいいように、バックアップを用意しなくてはならない。ひとつが壊れたとたんにすべてが終わるようでは、あまりにも危険すぎるからだ。
社員全員を毎日オフィスに来させるのは、会社にとってのSPOFだ。(Kindle位置:772) 

社員全員にオフィス勤務を義務付けると、

  • 地方に住んでいる優秀な能力を持つ人間を採用できない
  • 社員の家族に変化があったときに退職をされてしまう 

などなどの問題が起きることが想定されます。SPOFを排除するためのリモートワーク導入、なるほどでした。 

生産性を高めるTipsいろいろ

社員に力を発揮してもらうためのリモートワークですが、それ以外の要素についても考えつくされているなと思いました。

  • ミーティングは料理の塩のようなもの。メインの素材(仕事)があってそこに少し加えるくらいがちょうどいい
  • 仕事以外の趣味を持っている人を雇う。燃え尽きを防ぐ
  • 1日4時間はコアタイムを作ってコミュニケーションを生む
  • それぞれの顔ではなくスクリーンを共有しながらミーティングをする。コミュニケーションの具体度が上がる

早速参考にしたい内容がたっぷりでした。

 

この会社が以前出している『小さなチーム 大きな仕事』もおすすめです。こちらも合わせてぜひ。

小さなチーム、大きな仕事 働き方の新しいスタンダード (ハヤカワ文庫NF)

小さなチーム、大きな仕事 働き方の新しいスタンダード (ハヤカワ文庫NF)

 
強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」

強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」

 

 

*1:正確には、テレワークの導入率。情報通信白書より

記録#15『セネカ 哲学全集(5)』倫理書簡集、理性に生きる。

高校の世界史や倫理を学んだときにでてくる、ギリシャ哲学の流派。

  • ストア派:理性により感情を制すことで不動心に達することを理想とし、確固たる自己の確立をめざす
  • エピクロス派:死を恐れたり不安に思ったりすることは無意味であるとし、感覚に基づいた穏やかな快楽を求める

そのストア派の考え方を現代に残す哲人の一人がセネカです。

過去に読んだマルクス・アウレリウス・アントニヌスの『自省録』の中で、セネカの名前がたくさんリファーされていて、その代表作・倫理書簡集を読んでみました。

 

倫理書簡集は、書簡集の名の通り、晩年のセネカがルーキーリウスという親友に宛てた手紙をまとめたもの。
一つひとつの言葉に、この友人への思いやりが垣間見えます。

わずかしか持たぬ人ではなく、より多くを欲しがる人、それが貧乏人だ。どんな意味があるというのか、どれほどの財が金庫に、どれほどの蓄えが蔵に眠っていようと、どれほどの家畜を養い、どれほどの利ざやがあろうと。他人のものに手を伸ばそうとし、すでに獲得した財産ではなく、これから獲得しようとする財産の計算をしているのだから。富の限度はどこか、と尋ねるのかね。まずは必要なだけを持つ、次は十分なだけを持つ、というところだ。(pp.6) 

落ち着きを持って行動すべきであり、行動するときは落ち着くべきである。自然の理を相談相手に思案したまえ、自然は君に語るだろう、自然は昼と夜の両方を作った、と。(pp.9)

日々よく心の準備をして、人生を去る時に平静でいられるようにしたまえ。多くの人々は人生にすがりついて離さず、ちょうど濁流にさらわれる人が棘ある草も角の立った岩もつかむようだ。ほとんどの人は死への恐れと生の苦しみのあいだで不幸な漂泊をし、生きることも欲しないが、死に方も知らない。だから、君の人生を喜ばしいものにするには、人生の不安をすべて捨て去ることだ。どんな幸せなことも、それをいま手に入れている人に失ったときの心構えができていなければ、幸せにはしてくれない。しかるに、失ってももっとも気が軽くすむのは失って惜しいと感じられないものだ。それゆえ、どんなに強大な権力者にも降りかかりうる事態に立ち向かえるよう自分を激励し、心を強くしておきたまえ。(pp.10) 

賢者の自足はどれほどのものか。ときには自分の一部にも満足する。手を病気や敵のせいで切り落とされたとしても、何かの事故で片目か両目を無くしたとしても、残ったところで十分であると考え、一部を欠いた不完全な身体にも五体そろっていたときと同じように喜ぶだろう。しかし、落部分があったら良いのにと惜しむこともない一方、欠落している方が良いとも思わない。賢者の自足とは、このようなものだ。友人を持たぬことを欲するのではなく、持たずともいられる。「いられる」という意味は、つまり友人を失っても平静な心を保つということだ。(pp.28)

エピクロスから拝借することにしよう。「多くの人にとって富を築いても不幸は終わらず、変化しただけだった」これは不思議な事ではない。実際、疵は物ではなく、他ならぬ心のなかにある。貧乏を私たちの重荷としていたものが、富を重荷としただけだ。病人を寝かせるベッドは、木製でも黄金製でも違いはない。どこへ病人を移しても、病気も病人と一緒にそこへ移るだろう。それと同様に、病んだ魂の置き場所は富の中でも貧乏の中でも違いはない。病苦はあとをついてくる。(pp.66)

輝きと光には違いがある。光には確かな、それ自体の源を有するが、輝きはほかからの借り物で光る。(pp.80)  

自然は私たちに愚痴をこぼして言わねばならない。「これはどういうことか。私たちがお前たちを生んだときは、欲念も、恐怖も、迷信も、背信も、その他の悪疫もついてはいなかった。お前たちが入場したときと同じ姿で退場せよ」
知恵を感得した人とは、誕生のときと同じように不安なく死を迎えられる人のことだ。(pp.89) 

流れ行く世界を渡っていく、確たる自己を持つために。

実務でも成功し、政治でも様々荒波を乗り越えてきたセネカが送る、素晴らしい人生訓にあふれています。 

セネカ哲学全集〈5〉倫理書簡集 I

セネカ哲学全集〈5〉倫理書簡集 I

 

 

記録#14『ブレイン・プログラミング』目標達成のために自分を"プログラム"する

『話を聞かない男、地図が読めない女』の著者による、半分自伝的な内容+自己啓発の本。

 

ダイエットをしたい、仕事で成果を出したい、結婚をしたい、、、、

新しい年を迎えるとき、環境が変わったときなど、私達は目標を立て、将来の自分にワクワクし、そして多くの場合それは失敗に終わります。

なぜでしょう?

↑の本がベストセラーとなりながらも会計士の不手際で多くの資産を失い、そこから立ち上がったアラン/バーバラ・ピーズ夫妻はこう言います。

「"何(What)"をするかを決断すれば、"方法(How)"は自然とついてくる。脳が自動的にHowを探し当てる」

「Whatに集中しなさい。Howを最初から考えているからなかなか実行ができないんだ」

「目標を立てるだけではダメで、それを自分の脳に埋め込んで(ブレイン/プログラミング)いかなくてはいけない」

あれ、なんとなく胡散臭い匂いが...

脳の情報自動選別機能・RAS

この主張には脳機能に基づいていました。

脳内のRAS(網様体賦活系:Retcualar Activating System)という構造に焦点が当てられていて、このRASは「脳に入ってくる情報をふるいわけて、何に注意を向けさせるか、どれくらい関心を呼びおこすか、どの情報をシャットアウトして脳に届かないようにするかを判断する」機能を持っていると。そして、このRASにより、脳が得ている情報のうち99.9%以上を私達が意識することなく処理できているらしい。

すごい、ありがとう私のRAS...

目標達成をしたいのなから、自分のRASをプログラミングすること。それは、

  • 目標達成のために役立つ情報が勝手にRASに捨ててしまわれないようにする
  • あるいは、RASがその情報をはっきりと認識できるようにする

の視点で。

具体的には何をしたらいいのか?

  • 目標をはっきり明確と紙に書いてとにかく見まくること。
    日々の膨大な情報の中で、RASに優先してプログラムするためには、その内容が明確でありかつたくさんそれに触れることが必要。

人生で自分の望みをかなえることができないのは、たいていの人の場合、どうすればそれをかなえられるのかに気をとられてしまうからだ。他人が何かを達成しても、それを見て「でも、どうすればあんなことができるのか、わからないからなあ」と考えてしまう。だから何もしない。それではいけない。
考えなければいけないのは、何をしたいかである。何か目標を達成しようとするとき、もっとも大事なのは、「何がしたいのかをはっきりさせること」だ。どうすれば達成できるのかを考えてはいけない。そんなことはRASが考えてくれる。Kindle位置:548)

  • できれば手書きで。
    キーボードタイプとは差があるらしい。古めの研究だから今は違いのかもだけど。

目標を手書きしたときの達成率と、キーボードでタイプしたときの達成率を比べたのである。すると手書きするだけで、達成率は 42 パーセントも上がることがわかった(Kindle位置:645) 

  • 目標はとにかく具体的に、Howが見えなくても、5W(When、Whereなど)を書いちゃう。
    HowはRASが勝手に考えて見つけてくれるらしい
  • 変化量ではなく、状態で目標を書く。
    「体重を10kg減らす」ではなく「体重65kgになる」という目標のほうが達成率が高い。RASは状態はイメージできるが、変化量はイメージできない。

そんなことより感動した言葉

↑のようなことがつらつら書いてあるんですが、私が一番いいなぁと思ったのは本の中で紹介されたとある米国人男性のエピソード。

27際のときに車の炎上事故に巻き込まれ全身の65%に火傷をおう。 その後復帰してパイロットになるが墜落事故を起こし車椅子生活に。そんな災難にもめげず、最後は州議会議員、環境関連の著名な活動家になった人。

その人が残したこんな言葉。

体が麻痺する前の私には、できることが10,000あった。今は9,000ある。
失った1,000を嘆くこともできるが、 残された9,000に全力投球することもできる。 W. ミッチェル
Kindle位置:1,550)

 

自己啓発本ジャイアント・サンマーク出版さんご提供の、良い本でした。 

自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング

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