ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#300 『脱走王と呼ばれた男』

 

脱走王と呼ばれた男:第二次世界大戦中21回脱走した捕虜の半生

脱走王と呼ばれた男:第二次世界大戦中21回脱走した捕虜の半生

 

 

感じたこと


  • 捕虜になったあとは国際条約に基づき将校たちは丁重に扱われる。そんな中で、あえて危険を犯して脱走を繰り返したアレスター・クラム。何が彼をそんなに突き動かしたのか。本文にあるような、脱走がもたらすある種の高揚感なのか、自由への意志か、創造力への渇望か、祖国への思いなのか。
  • 捕虜として収容されている場所で、脱走委員会なる組織があったことにびっくり。一般的なことだったんだなぁ。
  • 途中でてきた特殊空挺部隊SAS)創設者、デイヴィッド・スターリング。裕福な家に生まれながら学校は放校処分、芸術・建築の分野もすぐに投げ出し、軍入隊後も夜遊びで軍法会議にかけられる始末。しかし、SAS創設ですべてを覆したリーダー。かっこいい...

内容


  • Amazon/BOOKデータベースによるほんの紹介
    • 開戦直前にイタリア軍捕虜となり、以来21回のあらゆる手段で脱走を繰り返した英軍将校アラステア・クラム。彼は終戦直前に脱走に成功し英雄として迎えられた。本書はその破天荒にして不屈の「脱走半生」を克明にたどったノンフィクションである。
    • トンネル作戦、綱渡り、列車からの飛び降り、そして詐病…仲間とともに、あるときは単独で脱走を繰り返し、裏切りにあってもゲシュタポに睨まれても不屈の精神力で目的を果たし、英雄として称えられた脱走王「男爵」。

引用メモ


もう1週間以上あるき続けており、逃亡中によく体験する神秘的な領域に日ごとに近づいていた。自由の高揚感、危険に対する恐れ、脱走者の酔うような感覚、自然の中に一人でいると感じられる混じりけのない匂いと音、身体の酷使に加え、飢えと睡眠不足から起こる譫妄状態ーそれらが一つになると「感覚のさらなる高い領域」への道が切り開かれる。山登りの喜びに達する道と同じだ。

自由を獲得した脱走者がほぼ例外なく味わう爽快感は、たとえ短い時間であったとしても、大学生の年頃の男が規則を破る軽率ないたずらで得られる興奮を遥かに超えるものだった。しぶれるような高揚感、エンドルフィンの一撃、後にも先にも経験したことのない「魔法の時間」がある。ある脱走者はそれを「高揚感の波」といい、別の脱走者は「生涯最高の充実したひととき」といい、ドイツの収容所から何度か脱走したパイロット、テックス・アッシュは「あんなに生を実感したことは他にない」と語った。彼は「脱走の遺伝子」とか、脱走せずにはいられない「フーディーニ症候群」というものがあるのだろうかとさえ思った。彼によると「脱走は非常に中毒性があるし、あらゆる麻薬と同じで、きわめて危険だ」そして、命を落とすかもしれないこの危うさこそ、脱走を「最も偉大なスポーツ」に押し上げている秘密の要素だ。