記録#275 『文化人類学の思考法』
感じたこと
- 文化人類学の思考法:「近く」の出来事を「遠さ」の中で理解する。面白かった。
- ストーリーの時代と言われる。それはつまり、呪術の時代なんだと思う。それぞれの個人の中にある秩序に沿った物語と、それを強化するための呪術が求められている。その中で科学はなにをするのか、できるのか。考える。
- この1冊をじっくりと読んで、それぞれの文化人類学者がどのような手法で夫々の調査を進めていたのかが理解できれば、私たちももっとよく社会を見つめられるようになるやも
内容
- 文化人類学の思考法:「近く」の出来事を「遠さ」の中で理解する
- フィールドワークを通じて対象にできるだけ近づき、五感を通じて感じる違和感と、客観的な事実をかけ合わせて知の足場を築く
- 同時に、遠くの比較対象を持つことで固定概念を壊し、凝り固まった視野を遠くする
- 貨幣や仮想通貨について、ミクロネシア・ヤップ島で使われていた石の貨幣を用いて考察する
- 原題の戦争を理解するために、東アフリカの牧畜民の間での戦いを分析する
- 第I部:世界の捉え方
- 自然科学だけが自然についての唯一絶対の知識ではない
- 各地域に根付く民族は、土地に則し、内的に一貫な分類や表現を持っている
- コンクリンが指摘した、ハヌノオの人々が持つ1,625に及ぶ植物呼称の整理
- プロトキンが指摘した、薬草が制約開発に生かされるプロセス
- 1992年の生物多様性条約でも、地域コミュニティの人・知識が保護されるように規定
- 各地域に根付く民族は、土地に則し、内的に一貫な分類や表現を持っている
- 自然はただ我々の分析対象であるだけでなく、関係を結ぶ他者である
- 自然は「ひとつの」「普遍的な」「全人類が協力して保護すべき」対象ではなく、人間の文化と一体になりつつも相互に緊迫した関係のあるものであるはず
- 多様な動植物や事物とのやり取りの中でしか生きられない存在、人間
- 技術と生活の相互的因果のなかで、どこまでを自然なもの、どこからが歪んだものととらえるのか
- 目覚まし時計で起床し、パソコンでレポートを書き、電車に乗って移動するなど、技術によって私たちが自然だと感じる生活が構成されている
- 同時に、人の生活の中からその必要に応じて技術が作り出されている
- 人にとっての世界とは、人が知覚することができ、また人に作用することができる世界
- 呪術に見られる人間の”野生の思考”
- 人々の感覚的な経験から世界に一定の秩序を付与することを重視する
- 形態や運動、個数などに着目した数学的な性質に着目する科学的な志向とは区別される
- 自然科学だけが自然についての唯一絶対の知識ではない
- 第II部:価値と秩序が生まれる時
- 贈与交換と商品交換はあらゆる場面で区別されている。夫々に異なる意味を付与する
- 贈与交換は人と人とを結びつける一方で、商品交換は関係を切り離す
- 贈与交換は与える義務、受け取る義務、お返しする義務の3つの義務を生じさせる
- 商品交換と贈与交換は分離された営みではなく、連続線上にある。そのやり取りの連鎖の中で、ものは意味や価値を変化させる。
- 戦時下でも、国家がないところでも、人は秩序維持や平和のために最大限の創造性を発揮する
- 贈与交換と商品交換はあらゆる場面で区別されている。夫々に異なる意味を付与する
- 第III部:新たな共同性へ
- 市民と大衆をわけるな。
引用メモ
スマホを手放すことであなたが不安を感じるのだとしたら、それはスマホがあなたの日常を構成する環世界の一部となり、あなた自身の生を規定し始めているということだ。 pp.42
神々や精霊は、人間の信念によって存在しているわけではない。それらを現前させるものは、私たちの実践なのだ