ねずこん読書記録

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記録#230 『ファクトフルネス』10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
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 この本は世界の本当の姿についての本でもあり、あなたについての本でもある。あなたや、わたしが出会うほとんどの人がありのままに世界を見ることができないのはなぜだろう。どうすれば世界を正しく見られるのだろう。そんな疑問にこの本は答えてくれる。

 そして、この本を読み終えたら、サーカスを見たあとのように心が軽くなり、前向きになり、世界に希望がもてるようになるはずだ。

 というわけで。

 自分の殻に閉じこもるよりも、正しくありたいと思う人へ。世界の見方を変える準備ができた人へ。感情的な考え方をやめ、論理的な考え方を身につけたいと思う人へ。謙虚で好奇心旺盛な人へ。驚きを求めている人へ。

 ぜひとも、ページをめくってほしい。

(本書、pp.25)

こんな出だしで始まる本書。

人間という理性と情動がないまぜになった難しい生き物は、どんな本能でものごとを見つめているのか。そのせいで、何が起きているのか。どうすれば物事を正しく見つめることができるのか。

スウェーデンとインドで医師の経験を積み、その後は公衆衛生の専門家として世界中で活躍してきた著者、ハンス・ロスリングが語る、"事実・データ思考"、ファクトフルネス。

TEDでも有名なスピーカーである彼は、その時の講演同様、情熱とユーモアに溢れる文体で読者をファクトフルネスの世界にいざなっていきます。

www.ted.com

「我々が住むこの世界には課題もある。
しかし、この世界は着実に、確実に、良い世界になっている」

それがこの本の一つのメッセージ。

メディアで語られる災害や人災、腐敗した政治体制、経済危機、貧困、、

「世界は崩壊に向かっているのではないか」そんなふうに思っても不思議ではありません。

世界は良くなっている

しかしデータを見ると、世界は着実によくなっている。

  • HIV感染率は1990年代から着実に減少し、乳幼児の死亡率もこの100年で1/10になり、児童労働率もこの50年で1/3に。大気汚染物質の排出量も50年で半分以下になり、災害による死者数も1930年代の8%にまで落ちてきている。
  • そして自然保護区の面積は増え、女性の参政権を認める国も増え、新しい映画や音楽は2000年以降爆発的に増加している。小児がんの生存率も高まり、安全な飲料水を利用できる人の割合も高まるばかりで90%近い。

なぜ私たちは、世界の改善を感じられないのか

このようなデータがある中で、私たちは「世界は悪くなっている」と感じてしまうのか。それは、人間に組み込まれた10の本能のため。

  1. 分断本能:良いか悪いか、正義か悪か、自国か他国か等、二項対立で物事を捉えてしまう
  2. ネガティブ本能:物事の悪い側面に注目したり、悪いニュースが拡散してしまう
  3. 直線本能:増え続ける、減り続けるというのを直線的に捉えてしまう
  4. 恐怖本能:危険ではないことを恐ろしいと捉えてしまう
  5. 過大視本能:目の前の事実・数字の重要性について必要よりも大きく捉えてしまう
  6. パターン化本能:一つの集団でのパターンを、他の集団にも当てはめてしまう
  7. 宿命本能:「すべては予め決まっている」と思い込んでしまう
  8. 純化本能:問題に対して一つの原因や一つの解決策をあてはめて満足してしまう
  9. 犯人探し本能:悪いことがあるとその原因を特定の個人や集団に帰属させてしまう
  10. 焦り本能:なにか問題があるとすぐに行動を起こしたくなってしまう

人間に埋め込まれた情動・感情システムによって、このような本能が起きてしまうことはしょうがない。(著者自身も、この本能のために失敗した事例を本書内でたくさん語っています。)

そのためには、まずこの本能に"気づく"こと。そのためのファクトフルネス。マインドフルネスのように。そして日常の各シーンで「この判断は、本能によるもので、事実に基づいていないのでは?ちょっとデータを見てみよう」と考えること。

様々な感情が湧き上がるとき、まさにそのときに、ふーっと深呼吸をして、データを見つめてみましょう。

メディアとの向き合い方

わたしがこの本で素敵だと感じたのは、ファクトフルネスを実践する中でのメディアとの向き合い方に関する内容です。

 

「私たちが正しい事実が得られないのは、メディアが歪んだ報道をするからだ!」

そのようなことを言う人をよく見かけます。

著者は、そもそもメディアに正しい事実の報道を期待するのは間違いだ、といいます。メディア自身も本能に基づいて動いているし、彼らの顧客は「本能に突き動かされる私たち」なのだから。

わたしたちの先祖の命を救ってくれた恐怖本能は、いまやジャーナリストたちの雇用を支えている。かといって、「ジャーナリストが悪い」とか「ジャーナリストが行動を改めるべき」という指摘をするのは筋違いだ。メディアが「人々の恐怖本能を利用してやろう」と考える以前に、わたしたちの恐怖本能が、「どうぞ利用してください」と言っているようなものなのだから。

(本書、pp.137) 

 西洋のメディアは自由で、プロらしく、真実を追求しているかもしれないが、権力から独立しているからといって世界を正しく捉えているとは限らない。一つひとつの報道は正しくても、ジャーナリストがどの話題を選ぶかによって、全体像が違って見えることもある。メディアは中立的ではないし、中立的でありえない。わたしたちも中立性を期待すべきではない。

 (中略)

 それが理解できたら、メディアにああしろこうしろと要求するのは現実的でも適切でもないとわかるだろう。メディアは現実を映し出す鏡にはなれない。事実に基づいた世界の見方をメディアに教えてもらおうなどと考えるのは、友達の撮った写真をGPSの代わりにして外国を観光するようなものだ。 

(本書、pp. 271)

そして、自分が物事を正しく物事を見つめられないときにその原因をメディアに求めるのは、著者が戒める「犯人探し本能」そのもの。

事実は自ら取りに行き、自らが解釈するもの。

ファクトフルネスを自ら実践していきましょう。

おわりに

著者のハンス・ロスリングは、この著作を作成している最中に膵臓がんで亡くなっています。その後、息子夫妻がこの本を完成させました。

世界中の公衆衛生の改善と、データを基づいた判断を促すことに人生を捧げた著者の想いと、それを引き継いだ2人の熱意が、紙面を通じて感じられる素晴らしい著作。

本当におすすめです。2019年のはじめに、素晴らしい一冊を読ませていただきました。

マインドフルネスの教科書 この1冊ですべてがわかる! (スピリチュアルの教科書シリーズ)

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