記録#202 『仏教思想のゼロポイント』年末再読、悟りについて考える
2年ほど前に読んだこの本を再読。
仏教は「役に立つ」のか?
ここ数年、ずっと禅やマインドフルネス、というものが注目されています。心が落ち着く、仕事の生産性が上がる、冷静に人生を見直すことができる、、様々な効果がうたわれています。
翻って、その源流にある仏教における"禅"や"座禅"の位置付けは、そのような人生における実利を目指したものだったのか。
それは違う、と著者は言います。
ゴーダマ・ブッダの仏教は、私たち現代日本人が通常の意識において考えるような「人間としての正しく生きる道」を説くものではなく、むしろ社会の維持に欠かせない労働と生殖を否定し、そもそもその前提となる「人間」とか「正しい」とか言った物語を破壊してしまう作用をもつ。
(pp.66)
「人格」について言っても同じことで、どのような人格が「よい」とされ、どのような人格が「悪い」とされるかは、その場の文脈、言い換えれば、そこにいる人々が共有している物語によって変わってくる。そのような無常の物語に自己を最適化しようとし続けて、終わりのない不満足のサイクルに絡め取られることから決定的に解脱することがゴータマ・ブッダの仏教の目標なのだから、そこに向かっていく修行者は、世俗的な意味での「善悪」からは、当然どんどん距離をとっていくことになるだろう。
(pp.66)
「今日もヨガをして、内なる自分を見つめ直せました!」
「来週からヴィパッサナー瞑想です!楽しみ!」のような投稿をSNSにしている人は、なるほど仏教的な悟りを目指しているのではなくて、自分なりの物語づくりをしているんだな、と、読みながら一人納得していました。
さて、タイトルにある『仏教思想のゼロポイント』はどこなのか。
それは『煩悩の火がふっと消える瞬間』だと。その瞬間は、対象と観察がないまぜになり、認知がないが経験がある、という状態になる、と。
全然わからない。しかしそこに至るために修行をしているのが修行者だと。
面白いなぁ、原始仏教。今の社会の物語性に流されない。
たまに読みたくなる本。いつになっても面白い。
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