記録#200 『ZERO to ONE』競争には勝つな。抜け出せ。
偉大になるためには競争に勝つ必要がある。
そんな誤った考えはすぐに捨てろ。
必要なのは競争ではなく、独占だ。
スタートアップに関わる人ならほぼ全員読んでいるんじゃないか、というこの『ゼロ・トゥ・ワン』。ペイパル創業者でありペイパル・マフィアの親玉、シリコンバレーが一斉に民主党支持に傾く中で一人トランプ陣営を擁護し続けた硬派な投資家、ピーター・ティール。
その思想は、スタートアップ界の通説とは異なる『逆説の思考』。
2018年の締めくくりに、この本を再読してみました。
通説を超える
よくある"通説"に真っ向から抗うピーター・ティールの考え方。
賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?
本書で紹介されている、ピーター・ティールが採用面接で必ずする質問。
その人が世界をどう捉えているのか、どんな世界観を持っているのか、そのスケールと本質的な思考力が問われる質問。
この本は、ピーター・ティールとしての「賛成する人がほとんどいない大切な真実」について書かれた本。
スタートアップ成功のための通説
いまスタートアップが考えている成功のための通説、
- 少しずつ段階的に前進すること
- 無駄なく柔軟であること(リーンスタートアップであること)
- ライバルのものを改良すること
- 販売ではなくプロダクトに集中すること
というのは、2000年代前半のドットコム・バブル崩壊に伴って生まれた揺り戻し。
しかし、本当に価値ある"1"をゼロから生み出すための正しい方法は、それと逆だと彼は言う。
創造のための真実
- 小さな違いを追いかけるより大胆に書けたほうがいい
- 出来の悪い計画でも、無いよりはいい
- 競争の激しい市場では収益が消失する
- 販売はプロダクトと同じくらい大切だ
特に上の3つ目、「競争するな。独占しろ」というのは、この本のエッセンスとしてよく紹介される部分。前半の3章は、新しいものを生むためには独占をしなければならない、ということを伝え続けている。
競争に絡め取られた企業は、競争の中にいるからこそ、目先のカネのことしか考えられない。独占をするからこそ、カネを超えた、価値あることを追求できるんだと。
独占のための手法
ではどうやって独占をしたら良いのか?
ピーター・ティールは言う。
独占のための近道は存在しない
独占に成功した企業の姿はそれぞれに異なっていて、ブランドに依拠したもの、規模の経済に依拠したもの、ネットワーク効果に依拠したものと様々。
そこに至るためには、テクノロジーを活用し10倍以上の改善をもたらす製品を作り、強く安定したチームをもって、最終的な販売までやりきること。そんな王道を突っ走れ、と。
読後感
何度目かの再読、何度繰り返しても良い発見のある、良い本でした。
彼が「競争より独占」というコンセプトに至ったのは、ロースクール卒業後に連邦最高裁の法務事務官というポジションを得る競争に破れたことがきっかけでした。
スタートアップが成功するためではなく、私たちが有意義な社会生活を送っていく上でも、競争を避けて独占すること(自分なりの市場をつくること)の大切さを再認識させてもらいました。
年末の振り返りに、みなさんもぜひこの本を。