ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#190 『さよなら未来』 再読。改めて圧倒される。

 

 

今年4月に読んで素晴らしさに圧倒され、年内にもう一度読み返そうと心に決めていた本書。

nozomitanaka.hatenablog.com

当時はまだ東京でスタートアップ社員としてもがき格闘していたこともあって、当時書いた↑の感想を見ても、イノベーションに関わる部分が心に刺さっていたんだなぁと改めて振り返り。

 

翻って今回。

6月に神戸に移り住んで、9月に会社化をして代表になり、変化のあったこの半年。前回読んだときにはピンとこなかった、「ベスタクスの夢」という項目の中で紹介されていたVestax創業者・椎野秀聰さんの半生・迫力に圧倒されました。大学受験に4度失敗した後にヤマハに入社、その後独立して楽器やDJ機器の製造・販売で日本発・真のグローバルカンパニーを生み出した彼はほんとうの意味で起業家なんだと。

椎野は、Vestaxを「実業の会社」と位置づけていた。椎野が自身の会社論・経営論をまとめた70枚にわたるメモがある。10万時に及ぶかというその文章を椎野は「仕事とはなにか」という章で始めている。

「ベスタクスは実業である」。そしてこう続く。

「小さなものの積み重ねがだんだん大きくなっていくのが実業の特徴で、必ず理論的な裏付けと経験と実績によって成り立っていくものである。確実にどういう方向でなにをするのかをわかってやっていないとかたちができあがらない。それに比べて虚業というのは、ある一瞬のひらめきとかアイデアが時流に乗ったりすると膨大な規模のことを短期間にできたりする。(略)製造メーカーが一ヶ月に1,000個つくっていたものを2,000個つくるためには、必ず倍の器、または時間と労力が必要となるし、次の月にも2,000個つくろうとしても器がなくては出来ないから努力だけではできない。

だから、実業と虚業の差を正しく理解していないとだめなのだ」

(pp.325-326) 

 これぞ起業家、圧倒的な経営者だと。わたしも、実業を作ることを目指して一歩一歩やっていこうと、改めて襟を正す。

  • そもそも文化は産業化される必要があるんだっけ?と問い直す「音楽に産業は必要か?」
  • 会社・経済というものを通してしか社会を見ることの出来ないその息苦しさや不気味さをテーマにした「「お金のため」にもほどがある」
  • ニーズや市場の要求ということを錦の御旗にして相手に基準を委ねてしまう思考形態や、マーケティング上の要求から数値により判断される価値濃霧に関する分断を描いた「ニーズに死を」
  • 若林さんがWIRED編集長を降りる際にWeb上に公開された「いつも未来に驚かされていたい」

どれもうーんと唸らされる内容。こういう文章、書いてみたい。

自身が世界をどう見るか、どういう世界観を持つか。こういう本を読んで、考えて、内部化していくことで、少しずつ自分を育てていきたいなぁと感じた時間でした。