ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#173 『ホモ・デウス』サピエンス全史に続く名作でした...!!

最近書店に行くと、大きなポスター・ポップが目立つこの本。
上下巻でそれぞれそこそこの厚さがあるので敬遠する方も多そう。私は心をおられないためにKindleで上下合本版を買いました...!!

著者のユヴァル・ノア・ハラリは歴史学者で、前作の「サピエンス全史」が日本を含めた世界中でバカ売れして著作界で一気に名を挙げました。

私たち人間=ホモ・サピエンスが地球上でここまで成功したのは、他の動物にはない想像力・妄想力に基づく「認知革命」や、協力が可能になったことによる「農業革命」、さらには「科学革命」を起こしたからだ、というのがこの本の大筋。何度もほぉぉぉとなる好奇心を刺激される一冊でした。

nozomitanaka.hatenablog.com

(素晴らしい図解もあります...!!)

サピエンス全史図解(詳説版)|きょん|note

ホモ・デウスとは

前回の本が、人間・サピエンスの"これまで"だったのに対して、今回の本は人間の"これから"についての本です。サピエンス全史の最後の章でも、科学がこれからの人間をどう変えていくか、という指摘がありましたが、この本ではそのテーマについてぐーっと深ぼられています。

結論、人間は、神(デウス)になることを目指す、と。それがそのままタイトルに。

生物的な課題から脱却したサピエンス

人間が生まれてからこれまでずっと戦ってきたのは、「飢饉と疫病と戦争」だった、と著者は言います。しかし19世紀以降の科学の進歩もあり、世界中で発生している飢饉は減り(一方で肥満は増え)、疫病も抑制され(一方で生活習慣病が増え)、戦争もほとんど起こっていない(一方でテロは起きている)としています。

そんな中で、21世紀以降のサピエンスは不死や至福といったこれまで神のみが実現できるとされていたことを、テクノロジーの力を使って追求していくだろうと。

なぜ人間はホモ・デウスになること、すなわち不死と至福と神のような力の獲得(本書では、これを神性の獲得という概念に集約している)を必然的に目指す道をたどるのかという理由を解き明かす。
第一の理由は、従来の課題を達成したことだ。古来、サピエンスは飢饉と疫病と戦争に悩まされてきたが、これらの問題は三つとも二一世紀初頭までにほぼ克服された。
第二に、歴史は空白を許さず、サピエンスを待ち受けているのは「充足ではなくさらなる渇望」であり、「成功は野心を生」み、そこに「科学界の主流の動態」と「資本主義経済の必要性」が加わると、新しい課題の追求が始まる。
そして第三の理由が、過去300年にわたって世界を支配してきた人間至上主義だった。「人間至上主義は、ホモ・サピエンスの生命と幸福と力を神聖視する。不死と至福と神性を獲得しようとする試みは、人間至上主義者の積年の理想を突き詰めていった場合の、論理上必然の結論にすぎない」

Kindle位置:8,116)

充足ではなく渇望

これはサピエンス全史につながるところもある考え方。人間は、虚構を作り出す力=認知の力によって地球上でここまでの成功を収めてきました。しかし、その虚構を作る力によって、決して充足することなく、あらゆるものを渇望する生物になってしまっていると。

虚構は悪くはない。不可欠だ。

お金や国家や協力などについて、広く受け容れられている物語がなければ、複雑な人間社会は一つとして機能しえない。人が定めた同一のルールを誰もが信じていないかぎりサッカーはできないし、それと似通った想像上の物語なしでは市場や法廷の恩恵を受けることはできない。

だが、物語は道具にすぎない。だから、物語を目標や基準にするべきではない。私たちは物語がただの虚構であることを忘れたら、現実を見失ってしまう。すると、「企業に莫大な収益をもたらすため」、あるいは「国益を守るため」に戦争を始めてしまう。

企業やお金や国家は私たちの想像の中にしか存在しない。私たちは、自分に役立てるためにそれらを創り出した。それなのになぜ、気がつくとそれらのために自分の人生を犠牲にしているのか?

Kindle位置:3,371)

人間至上主義

本書の後半は、ずっとこの話と言っても過言ではないです。

神でもなく、自然でもなく、人間こそが至上の存在である。
ほんとうの美しさや正しさという基準も、神や自然ではなく、人間が決める。

そんな志向。

消費者は常に正しい、というスタンスで経営される企業。

物事の意味は、あなた自身が決めていいんだよ、と伝えてくるカウンセラー。

みんな人間至上主義の発露だと。

人間至上主義から、データ至上主義へ

ここまでは、この本でいうと前段。最後の最後、この「データ至上主義」というところが本書のオチです。ここが何より面白い。

人間至上主義(それに紐づく自由主義や民主主義)は今後も持続可能なのか?
アルゴリズム・AIが発達した先では、むしろデータ至上主義となり、人間は不完全なデータ処理部品となるのでは?

そんなお話。とっても面白いです。

ところが二一世紀の今、もはや感情は世界で最高のアルゴリズムではない。私たちはかつてない演算能力と巨大なデータベースを利用する優れたアルゴリズムを開発している。グーグルとフェイスブックアルゴリズムは、あなたがどのように感じているかを正確に知っているだけでなく、あなたに関して、あなたには思いもよらない他の無数の事柄も知っている。

したがって、あなたは自分の感情に耳を傾けるのをやめて、代わりにこうした外部のアルゴリズムに耳を傾け始めるべきだ。一人ひとりが誰に投票するかだけでなく、ある人が民主党の候補者に投票し、別の人が共和党の候補者に投票するときに、その根底にある神経学的な理由もアルゴリズムが知っているのなら、民主的な選挙をすることにどんな意味があるのだろうか?

人間至上主義が「汝の感情に耳を傾けよ!」と命じたのに対して、
データ至上主義は今や「アルゴリズムに耳を傾けよ!」と命令する。

Kindle位置:7,942)

間違いなく、学びのある本。 まとまった時間が取れるときに、ガツッと読むことをおすすめします。

ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来

ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来