記録#126 『デザインの次に来るもの』デザイン思考ワークショップに飽きていません?
個人的にですが、「デザイン思考」という言葉そのものに食傷気味です。
ユーザーを徹底的に観察しよう!というコンセプトは素晴らしいと思うんですが、過大評価と拡大解釈のせいで受け取り側の期待値があがりすぎていて、いまいち成果につながっていない感覚があります。
あと、デザイン思考を学ぶワークショップ、みたいなもの、やたらいろんな所でやられていますが、それほど驚きはなかったり。。主催者が残念だったり。。
そんな中で、タイトル買いでこの本に手を伸ばしてみました。
著者の安西さんはイタリア・ミラノを拠点に活動されているビジネスデザイナー。八重樫さんは立命館大学でデザインマネジメント(経営×デザインの研究分野)を扱う研究者。そんなお二方が語る、デザインというものの経営における意味合いと活用方法について扱ったのが本書です。
個人的には、発見の多い本でした。ポイントをバラバラまとめます。
- 「日本はデザイン後進国だ!」のような記事や発言を見かけるが、イタリアはじめ欧州も似たようなものだということ(都市or地方、大企業or中小企業、)
- 欧州のデザインは生活を豊かにするためにという視点が強い一方、アメリカのデザインは売上・利益のためのデザインという視点が優位なこと
- イタリア・ルネッサンス工房の基本となる"アルティジャナーレ"という概念には、「概念や世界観を作る+美の表現+手を使って思索する」が包含されていること(私が目指している方向性にとても近い)
- ユーザーに依拠するデザイン思考だけではなく、ユーザーからあえて離れるデザイン・ディスコース(ネットワーク)を掛け合わせることがイノベーションの鍵
- デザイン思考は解決策を提示するが、デザイン・ディスコースに端を発するデザイン・ドリブン・イノベーションでは意味を提示する。(意味といっても提供者のストーリーとは異なるよ、と)
- 意味の提示のためにはメタファーやコピーが重要な役割をもつ(例:時計をネクタイと同じ位置づけに持っていくためには?)
- デザイン思考ワークショップを企業で導入しようとしてうまくいかないのは、最初の問いの設定がワークショップにおいてはとても大事だけど、その問いの設定こそが最も重要で、それをできる人が企業内にいないから
- 片っ端から「これもデザイン!」とするのは誰も幸せにしない
特に、欧州のデザインは「生活を豊かにするためのもの」という整理はすごくすごく素敵だと思いました。儲けるためにデザイン思考や!という人たちとは、個人的に仕事を一緒にしたくはありませんね。。
ダイソンは、社員全員がデザインをコアとするため、あえてデザイナーという役職は設けずにエンジニアと名乗るなど、そういう組織への反映の仕方も参考になるなと。
いい本。よくわからないデザイン思考本をよむよりよっぽどいいなと。
イタリアに行きたくなりました。