ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#76 『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー June 2018 職場の孤独 起業に広がる"病"にどう対処するか』

一冊の本全体というより、特集記事のうちの一つがとても素敵だったので。曹洞宗の住職・藤田一照さんが、仏教という視点で語る孤独やマインドフルネスのお話。 

タイトルにあるとおり、この号の特集は、社員の孤独について。孤独は1日に15本のたばこを吸うほどに健康に対して悪影響があるようで、それに政府/企業としていかに立ち向かうか、というのが全体のメインテーマ。

他の記事では、「同僚の家族や私生活など、個人生活について知る機会を作ろう」「米軍では孤独に強くなるためにこんなトレーニングが...」が紹介されていて、途中に出てくるSlackのCEO、スチュワート・バターフィールドの記事はなかなかに読ませます。

一方で、孤独ってそんな悪いものかね?って思っていたところに、藤田一照さんの記事。タイトルは、"人は生まれながらにつながり、孤独でもある We are born to be lonely and connected"。東大博士課程を中退した後に禅道場に入山、33歳で渡米してからはStarbucksFacebookなどで座禅を指導してきた方。

記事のど頭から、

仏教の世界ではそもそも、孤独を病としてとらえることをしません。なぜなら、人は生まれながらにして孤独な存在だからです。(中略)

ただし、ここで忘れていけないことは、人は絶対的に孤独であると同時に、誰もがつながっているということです。仏教ではそれを「縁起」と呼びます。他との関係性の中で初めて、それとして存在できるということです。万物はこのつながりのネットワークの中にあり、その他には何一つ存在することは出来ません。(中略)

独一無比にユニークな存在である独在性と、全体と一つにつながっている共在性とが矛盾なく、同時に成り立っている。その綾模様の中に、人間の苦しみや悲しみがあり、幸せや喜びもある。(中略)

どうあがいても存在のあり方には逆らえませんから、それに随順した生き方をしていくことが自然であり、賢明です。二重構造のうちの独在性だけ、あるいは共在性だけに囚われるのは、文字通り一面的で、それではバランスを欠いた生き方になってしまうでしょう。

(pp.68-69)

孤独は病だ!つながろうもっと!という考えかたが、いかに短絡的なものであるか。独在性と共在性それぞれが真実であって、善悪で区切られるものではない。流行のマインドフルネスでも、もっと自分の感覚に集中して!感じて!のような動きの中に、どこか過剰な独在性の意識が見えるのは私だけでしょうか。

世俗的マインドフルネスとは、「私の問題」を解決するために、マインドフルネスが役に立つという発想です。すなわち、私に降りかかってくる問題の方をなんとかしようということです。それに対して仏教的マインドフルネスでは、「私という問題」を解決することを目指します。この私が、そもそもの問題だというわけです。(中略)

「私の問題」という場合、私自身は問題視されていませんよね。そのときに問題とされるのは、言うことを聞かない部下や自分を評価してくれない上司など自分の外側にあり、私に降り掛かってくる難儀な事件です。しかし、「私という問題」の場合、本当の問題は外側に有るのではなく、自分自身だという洞察です。僕は同じことを「人生上の諸問題」と「人生という問題」という言い方で区別することもあります。

(pp.74) 

タイトルの通り、人はひとりぼっちで孤独でありながら、すべての人・モノとつながっているんだ、そこに矛盾はない、という感覚。文章を読む中で、自分の心がスーッと整理されていく感じがして、とても心地よかったです。DHBRの読者層と、この記事に共感する人がどのくらいかぶるかは不明ですが...

素晴らしい特集、素晴らしい記事でした。おすすめです。