記録#62 『変わらないために変わり続ける』
『生物と無生物のあいだ』がベストセラーになった、生物学者の福岡伸一先生。
この本を書かれていた当時はニューヨークにある大学院大学・ロックフェラー大学で研究をされていて、その生活について週次で書いていた寄稿文をまとめたのが本書。
変わらないために変わり続ける 福岡ハカセのマンハッタン紀行 (文春文庫)
- 作者: 福岡伸一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2018/02/09
- メディア: 文庫
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研究のお話。
ここに書かれている文章は2013~2015年あたりのものが多いと思うんですが、
- いまやもう笑いと恥の対象でしかなくなってしまったSTAP細胞
- 通常のウイルスの数十~数百倍の遺伝子量を持ったパンドラウイルス
- 「記憶の遺伝」を引き起こしているかもしれないメチレーションの動き
- 脳のなかの好きな場所に、好きなタイミングで電気信号を流せるオプトジェネティクス
- 妊娠中の母のストレスが子どもにも伝わってしまう、腸内細菌界の話
と、門外漢の私からするとへー!と思われされる内容。それぞれのテーマについては合計4ページ前後語られているだけですが、福岡先生のわかりやすい筆致と深い知見のおかげで、ふむふむと読める内容になっています。
この本は「紀行」とあるとおり、ニューヨークの生活についてもいろんなことを教えてくれます。
- 日本語の本が読みたくなったら足を伸ばす本屋さん
- クイーンズの奥地にあるスーパー銭湯
- 桑の木を探したり蝶の採集をしたり、緑を感じさせてくれるセントラルパーク
- リンカーンセンターで行われる壮大なオペラ・アイーダ
- 食にまつわるものであれば何でも揃うレストラン・デポと、しめたての鶏を販売してくれる農場(一羽$10)
遠いけれど、ニューヨークも人の住む街なんだと、当たり前のことを具体的に教えてくれる本でした。
福岡先生の文体が素敵。
良著でした。