記録#44 『ミクロ経済学の力』ゲーム理論の魅力にハマる。
東大の神取先生が書かれた、ミクロ経済学の新しい教科書。
この本を使って、あるいはこの本を書くような先生からミクロ経済学やゲーム理論の講義を受けられる東大生がとにかく羨ましくなりました。
ミクロ経済学というと、他学部の人はもちろん経済学部生でも「数学ばっかりでなにがおもしろいのかさっぱりわからん」という人が多い科目。それを、面白く、わかりやすく、しかし学問的に真摯な形で書かれる神取先生の力。
ただただ素晴らしいなと感じました。
常識的議論が100あったら、そのうち90はどこかおかしいものと思って差し支えない。 ミクロ経済学の一つの大きな役割は、こうしたさまざまな常識的な議論の中から本当に筋の通ったものを発見するための道具を提供する、ということなのである。
(Kindle位置:363)
偏微分や最適化、ゲーム理論といった数学にももちろん気を配りながら、それぞれの経済理論の実社会への応用事例もたくさん提示されており、学部1~2年生はもちろん、経済学に触れたことのない社会人の方でも読みやすい内容です。
ちょっと細かいですが、私が学部のときには"逆選択"と訳されていたAdverse Selectionを、"逆淘汰"とより原意に近い言葉として提示してくれているところにもいいなーと。
全体をみると、
- なぜ一般的な価格理論ではなくゲーム理論を採用すべきなのか
- 完全情報ではないときにどのような帰結に至るのか
- 市場の失敗をどう捉え、対応するか
などなど、面白いテーマがたくさんあります。
人の行動分析やゲーム理論に関心がある方は、手にとって損しない本です。