記録#207 『泣き虫しょったんの奇跡』 サラリーマンから将棋のプロへ
泣き虫しょったんの奇跡 完全版<サラリーマンから将棋のプロへ> (講談社文庫)
- 作者: 瀬川晶司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/02/13
- メディア: 文庫
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瀬川晶司六段。 棋士番号259。順位戦はC級2組。竜王戦は5組。
今年11月に、五段昇段後120勝をあげて六段に昇段。
そんな彼は、多くの棋士とは違い、一度プロになる道を閉ざされています。
将棋の世界は、奨励会というプロ棋士養成機関に入り、「26歳までに四段になる」ことがプロになる条件。その期限を超えてしまうと、どんなに普段将棋が強かろうと、強制的に退会させられて、プロになることは出来ない。
それが将棋界の常識でした。
しかし瀬川先生は、一度閉じた扉をなんとかこじ開ける。
アマチュア棋士としてプロ相手に勝率7割を記録。
閉鎖的と言われる日本将棋連盟に嘆願書を送り、プロ棋士相手に6戦して3勝すればプロとして認める、という試験実施にこぎつけます。
第4戦を終えて、2勝2敗。そして、第5戦に見事勝利して、プロ棋士になったことは、当時大きな話題となりました。(その時破れた2人が佐藤天彦・現名人と久保利明・現王将)
そのながい戦い物語が、本書。
どの章にも、ストーリーがあります。
どんな才能の持ち主も、意欲がなければ決してそれを発揮することは出来ない。そもそも人にどんな才能があるかなど、誰にもわかることではない。ただひとつはっきりしているのは、意欲さえあれば、人は良い結果を残すことができるということだ。
(pp.48)
心臓発作により31歳の若さでなくなった小野五段とのエピソードは涙ながらには読めませんでした。頑張れっていう言葉は、難しいよね、と。
この本の単行本が出たのが2006年。
今や瀬川先生に続き、2014年には今泉先生が41歳にしてプロ棋士となっています。
実力者に対して門戸を開き続けてこそプロ。将棋界も、どんどん良いものになっていくんだなぁと。
いい半生自伝でした。