ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#166 『チャイナ・イノベーション』データを制する者は世界を制する

 

多くの日本人にとっての中国経済のイメージは、まだまだ服や電化製品についている"Made in China"だと思います。しかし本書で描かれる中国企業は、既存の製品を安く(模倣して)作るのではなく、世界のイノベーションの最先端を走っている企業たちです。

世界最高峰の頭脳を集め新たな技術に対して多大な投資をし、ユーザーからのフィードバックを即座にサービスに反映しながら、規制に走ろうとする当局と上手くコミュニケーションをしつつ新たな地平を走っていく。「イノベーションといえばアメリカ西海岸!」と考えるような人に、飛行機で3時間半の国にこそ世界最先端のイノベーションがあることを、この本は教えてくれます。

代表的なところで、アリババとテンセント。

中国のデジタルイノベーションを支える決済基盤を提供するアリババは、2013年初頭に「アリペイ・ウォレット」をリリース。決済のみならず、クレジットカード支払いから病院での支払いに至るまで、外部企業に対してシステムを開放することで競合を打倒し唯一無二のプラットフォーマーになっています。更に生鮮食品スーパーも自社で展開し、支配したオンラインに限らずオフラインにまでその影響を広げています。

世界200カ国以上で利用されるSNS・メッセージングアプリのWeChatを運営するテンセントは、元々Microsoftのサービスを模倣したQQというサービスから事業を始めながら、商品マネージャー制度/社内競馬制度など自社内でのイノベーションを育む環境を整備し、コミュニケーション領域のプラットフォーマーとなります。小米など、同様の領域で攻勢を仕掛けてきた競合企業を、ユーザービリティやインフラの視点で着実な改善を積み重ねることで圧倒しています。

他にも、DiDiやiFlytek、センスタイムなどの企業が紹介されていますが、いずれにも共通しているのは、

  • 徹底したユーザビリティの重視:アリババのジャック・マーはユーザーが2億人に至ったアリペイについて全社総会で「現状のアリペイは最悪だ」と伝え、テンセントには、開発に根付く「10/100/1000」という毎月の顧客コミュニケーションルールがある
  • インフラに対する思い切った投資:テンセントのとあるゲームが爆発的にヒットしたときCTOは担当からのメール一本でサーバーを1000台増強し、アリババは決済処理速度を上げるためにクラウドシステムを自社開発した
  • 最先端の技術・頭脳を集める
  • 規制は従うものではなくそれを元に当局と交渉するものと言う姿勢

まさにここに、新しい未来のエッジがある気がします。

中国、体験しに行ってみたいな...それだけのためにメルカリに転職したい...

浙江省烏鎮で開催される世界インターネット会議、いつか参加してみたい...

西海岸偏重の日本の新規事業界隈の人は、ぜひご一読を。