記録#140 『生きるように働く』続・自分の仕事をつくる
日本仕事百貨の代表・ナカムラケンタさんが書く、まさに仕事のお話。
このファーストビュー、この人材採用サイトっぽくなさ。
すごく好きなメディアで、利用するともなしにたまにボーッと見ていたりしました。このサービスを始めた経緯やそこに込めた想いなんかも、本書のなかで紹介されています。また、記事一本一本を作るために行った取材の中で見えてきたいろんなひとの仕事感が、この本のベースになっています。
構成としては、以前紹介した西村佳哲さんの『自分の仕事をつくる』にとても近くて、ナカムラほ本書の中でこの本を影響を受けた書籍の一つとして紹介しているし、なんなら西村さんへのインタビューも載っけていたり。いずれにしても、素敵な内容。
心に残った引用箇所をいくつか。どれも自分の仕事感に近いものがあって、新しい刺激というよりか、自分の中でまだ言葉になっていないなにかの輪郭をつーっとなでていただいたような、そんな気持ちになりました。
生きるように働いている人たちの仕事には、2つのスタートがあると思う。一つが「自分ごと」であり、もう一つが「贈り物」。前者はぼくのように、まだニーズはないけど、自分がやりたいと思ってはじめたこと。「他人ごと」の反対の意味でもある。後者の贈り物は、誰かに求められたことに応えること。ただ、言われたままを返すというよりは、求められる以上のことをお返しすると、それは贈り物になる。とことん自分のやりたいことをやるか、求められている以上のものを形にして届けるか。
(pp. 64)
「自分ごと」の正反対があるとしたら、「多数決」なんじゃないか。あるいは「マーケット」とか「市場」という言葉も近いかもしれない。多くの人が考えている、最大公約数の意見のほうが正しいように思える。でも僕が惹かれるのは、そういうこととは関係なく、誰かが強く思って形になった、その人の存在がしっかり刻み込まれたもの。
(pp.78)
「仕事には『仕事』と『稼ぎ』があると教えてもらったことがあります。本来、まわりの人、自分自身を含む、社会の益となることならなんでも仕事であって、それは時間やお金で測るものではないと思う。稼ぎと仕事は、いまの社会経済の中では区別することが難しいけれど、できるだけ、仕事に引き寄せたい。その意味で、事務所で野菜を育てたりするのも、ご飯をつくるのも含めて、誰かのためならば、グラムでは『仕事』です」
(pp.92)
「・・・一緒に何かをつくるときも、相手の意見を取り込んでみる。それって、相手に余白を残していくということなんです。昔は憧れで行動する事が多かったんですけど、今は響く感じ、共鳴する感じが大切だと思います。すでにあるものを提供するのではなく、一緒につくること。みんなでつくる時代なんです。」
(pp.212)
『自分の仕事をつくる』では、デザインや建築を扱う方がインタビューの対象者だったんですが、この本では、カフェのオーナーだったりWebデザインの会社だったりガラス会社だったり、多岐にわたっていて面白い。そして、やっぱり代表やプロジェクトオーナーの人は根のある仕事感を持っていらっしゃるなぁと。
仕事・人間の成長というものを木・森に譬えて文章を進めていく、そんなナカムラさんの筆致もとてもすてきでした。
ずっと本棚においておきたい一冊がまた増えました。