記録#116 『こわいもの知らずの病理学講義』わかりやすく、病気と人間の関係をかたる
仕事と趣味が半分半分、そんな気持ちで手を伸ばしてみたこの本。先に読んでいた友人の評判もよく、楽しみにしていました。
病理学とは、
病気になった原因を探り、病気になった患者の身体に生じている変化が、どのようなものであるかを研究する学問分野*1
とのこと。むずかしそう...と思いながらはじめましたが、著者の仲野先生さすがの関西人、親しみやすい文体でとっても読みやすい。身体の基本となる細胞と血管の動きについてさっと解説しつつ、後半はがっつり癌のお話。
- 細胞というものはどう生まれ、傷つき、生き延び、死んでいくのか
- 細胞の集合体・臓器を動かし続ける血液の異常(貧血なんかも含め)はどうおきるのか
- がんはどう定義され、なぜ多細胞と違い無限増殖し、人を死に至らしめるのか
- そのがんに対して人はどのような研究を行い、どんな薬が開発途上にあるのか
柔らかい文体で素人に向けつつ、内容は病理学のコアを抑えてくださっていて、身体構造・機能の複雑性にちんぷんかんぷんになりかけていた私でもついていけました。
これでなんとか、ヘルスケアスタートアップの人間ですと胸を張って言えるくらいになったでしょうか。。*2
病理医は全国で2,000人程度しかおらず不足気味。そんな課題にアプローチする大学発スタートアップの記事も先月8月に出てましたね。頑張ってほしい。
本全体の印象としては、ところどころにイラストが挟まれていて、フォントも明確。読みやすい。特にpp.235のがんが成立する要因に関するイラストはぱっと頭に入ってきて、秀逸だと感じました。
内科医はなんでも知っているかがなにもしない。
外科医はなにも知らないがなんでもする。
そして、病理医はなんでも知っていてなんでもするが、殆どの場合手遅れである。
こんなジョークも。終始面白く読ませていただける、おすすめの1冊。