記録#108 『数字が明かす小説の秘密』 小説と統計学の融合
「統計学なんてなにに使うのさ?」
経済学部1年生の夏、同じサークルに入っていた友人が私に聞いてきました。全員必修の統計学の授業にうまく馴染めず、テスト勉強へのモチベーションをあげようとしていたんだと思います。
私はそんな彼に、うまく答えを返せなかった気がします。分析がどうこう、マーケティングなんかでも、、、みたいな話をしたのですが、彼は不満げでした。*1
それから十数年が経って、どこもかしこも統計学です。Webはもちろん、野球を始めとするスポーツや、テーマパークの企画まで統計学の恩恵を受ける時代になりました。
さらには、小説も。
数字が明かす小説の秘密 スティーヴン・キング、J・K・ローリングからナボコフまで
- 作者: ベン・ブラット,坪野圭介
- 出版社/メーカー: DU BOOKS
- 発売日: 2018/07/13
- メディア: 単行本
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著者のベン・ブラッドはハーバード大学で応用数学を学んだ作家。統計学をフルに使って、小説というものを見てみようとしているのが本書です。
冒頭にあるのは、長らく著者が不明だったアメリカ独立時の民主主義の精神を示した論文集『ザ・フェデラリスト』について、その著者を統計学が明らかにした、というお話。3人いた候補者のうち、「uponという単語を使うのは?」「Whilstはどうだろう?」と使用している単語を見ていくことで、その特定に成功したと。
これを実施したのが1960年代で、研究者は紙の本を一枚一枚めくりながら単語を数えていったとのこと。その労力たるや。。
コンピューターや電子化された書籍データを用いれば、今の時代、小説を統計学の分析対象とすることは簡単になりました。その成果が、この各章で語られていきます。
- 名作とされる作品には、-lyで終わるような副詞の利用が有意に少ない
- 著者が異性を主人公とした小説を書く場合、同性の主人公とした小説を書く場合と比べて"kissed"や"Loved"などの単語が頻出する
- 単語の種類や分析から判断した文章の"難易度"を計測すると、古典文学から現在に至るまで、難易度は下がり続けている
この本の分析対象は英書のみなので、こういう分析が日本語の小説でもされるようになると、面白いんだろうなぁと。
さっと読める面白い本でした。おすすめ。
数字が明かす小説の秘密 スティーヴン・キング、J・K・ローリングからナボコフまで
- 作者: ベン・ブラット,坪野圭介
- 出版社/メーカー: DU BOOKS
- 発売日: 2018/07/13
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