記録#104 『シンドローム』ハゲタカ・真山仁の最新作
ハゲタカを読んで以来、真山仁作品はあらかた読んでいます。この8月、新刊が出たので早速。
ハゲタカ第1作以来の主人公、鷲津が今回も中心。
その買収ターゲットは、首都電力。ときは2011年、東北で大地震が発生し、首都電力が磐前県にもつ持つ原子力発電所(イチアイ)を津波が襲う。
前半は、その災害と戦う現場の様子が、小説ながら丁寧に描かれています。言わずもがな、モデルは福島第一原発でしょう。所長の串村のリーダーシップには心動かされます。次の瞬間には爆発するかもしれない、家族や同僚が直ぐ側にいるなかで、必死に戦う所員たち。自分が現場にいたらここで描かれているような胆力を発揮できるか、そうできる大人でいたい・なっていきたいと思いました。
後半からは、いよいよ買収劇。鷲津が所属するサムライ・キャピタル、ターゲットとなる首都電力、政府と管轄官庁の経産省、それぞれの思惑が動き出す。ストーリー展開は前作までと同様、テンポよく続いていきます。
ぜひ皆さんも引き込まれてください。
ところどころで出てくる鷲津さんの世界観もすごく共感していて、
人間はしょせん長い歴史の中の点でしかなく、どうあがこうが、暴れようが、一瞬の光となる程度で、結局は海の藻屑に過ぎないと、つくづく思い知らされる。
こういう割り切りをしつつ、目の前のディールに集中し切る姿がかっこいいなぁと。
鷲頭さんのストーリーが続いていくことを期待しています。