記録#91 『世界を変えた14の密約』個人・企業の決めごとが世界を変える
普段見ているテレビやWebでみている政治や経済指標のニュース。わたしたちは、そういうものが世界を変えていっていると思いがちです。
本当にそうでしょうか。
企業や個人の小さな意思決定、約束が、世界を変えているとしたら?ジャーナリストのジェック・ペレッティが綿密な取材により制作されBBCで放送された"Billion Dollar Deals and How They Changed Your World"が本書の基になっています。
こうした取引がすべてを変えてきた。おカネを。仕事を。わたしたちがなにを買うか、どうして買うのかを。企業の密約が、富と格差に対するわたしたちの見方を変え、病気の定義さえも変えて来た。そうした取り決めの結果、わたしたちは金融リスクをありがたく受け入れるようになり、もののアップグレードを永遠に繰り返すようにもなった。こうした秘密の取り決めが、企業と政府の力関係を変え、なにを持って真実とするかを書き換えてきた。
そんな密約が、当事者でさえ予想しなかった深刻な影響を世界に与えたことも少なくない。アラブの春の引き金となり、イスラム聖戦の第4の波を引き起こしたのは、投機家による小麦の空売りだった。食糧科学の発展によって地球に肥満が万円し、企業はそれを事業機会に利用して痩せるための商品を売り込んでいる。
(pp.8, はじめに)
面白いです。
- エイズ患者向けに開発された保険商品、死の先物商品を開発したMBC
- 薬というものをチューインガムのような存在に位置づけたヘンリー・ギャドセン
- 薬によって認知能力を高め生産性をあげようとするヌートロピクスを実践するエリック・マズナー
のような、初めて知った私はとっても驚きでした。
さらに、経営に科学を持ち込んだフレデリック・テイラーは主張を通すためにデータを捏造していたこと、最も売れた経営書の1冊『エクセレント・カンパニー』を書いたトム・ピーターズとロバート・ウォーターマンも研究対象の企業のデータを捏造していたことが明らかにされています。なんと。
扱うテーマは様々。
- 現金という存在はこれから消えるのか
- 肥満とダイエットが共にはびこる社会は続くのか
- ロボットやAIが活躍する社会でわたしたちの働き方はかわるのか
- 企業と政府の関係性は逆転するのか、あるいは申しているのか
第11章のフェイクニュースの部分は、メディアに触れる人はぜひ読むべき内容。
世の中をもっと深く・広く観察するための種に溢れています。良著、おすすめです。