ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#86 『レイジング・ザ・バー Raising the Bar』白い道を行け、旅のように歩む道を。

新卒の時の同期がスタートアップに転職した直後、「これ、読んでみたら?」とおすすめしてくれた本。それ以来、 折に触れて読み返しています。

レイジング・ザ・バー ~妥協しない物つくりの成功物語 (Raising the Bar)

レイジング・ザ・バー ~妥協しない物つくりの成功物語 (Raising the Bar)

 

クライマーやサイクリスト、自然食の愛好家におなじみのエナジーバー、クリフバー。Clif Bar & Coは非公開企業なので売上高は非公開ですが、同社は2018年で62億ドルに及ぶバー型食品の市場において33%のシェアを持っているとのこと。*1

それを作り上げてきた創業者のゲーリーエリクソンが語る、同社の創業物語が本書のベースです。起点となるのは、売上高が4,000万ドルに達した2000年に起こった企業売却のお話。周りのエナジーバー企業がネスレなどに身売りする中、同社にも1.2億ドルでの売却オファーが届きます。まさにその契約書にサインする当日の朝、深い深呼吸をして、そのオファーを断ることを決めます。

売却を前提にして会社を作るわけではない。事業の根幹に何をおくか、そこを深掘っていった後、彼は企業をPrivate Companyとして残すことを決めます。

 

その示し方として、赤い道・白い道、というメタファーが本書に出てきます。ミシュランが出している欧州の地図で、多くの車が通る高速道路や幹線道路は赤い色で、山道だったり細い道は白い色で示されていたことに由来します。

最速で行きたい人は赤い道を通る、プロセスを噛みしめる人は白い道を通る。彼はヨーロッパで自転車旅行をしているとき、真に充実していたのは白い道を、丹念に調べ上げリスクも踏まえた上で走破することだったと。

 赤い道は予想可能であり、完全に熟知されていて2、安全で保守的である。赤い道は旅人を確実に目的地に運ぶという点で、最も効果的なやり方かも知れない。目的地まで、どのくらい距離があるのか、どのくらい時間がかかるのかはわかっているし、地図にはマイルとおおよその移動予測時間が記入されている。だから、普通ほとんどなんの危険もない。だがそれに並行して、結果的に見返りとなるものとしての発見と驚きはない。

 白い道は、まさに版代である。旅人の往来は少ない。道程は全く知られてなく、予測不可能であり、途中には多くの危険と困難があるかもしれない。私たちは道路がどのくらいの距離があるのか知らないし、いつ知るのかもわからない。知られていないルートを旅するから、旅にかかる時間も予測不可能である。もっとも重要なことは、旅は冒険になるだろうということである。冒険を定義づければ、一定の困難と危険ということになる。しかしこの困難と危険には、しばしば報酬がともなう。それは達成感であり、あまり利用されない道が提供してくれる美に出会う喜びである。

(pp.200、白い道vs赤い道)

企業文化についての信念も素敵。

  • 答えのない質問をする
  • 観察し、質問をし、耳を傾けて他人の意見を聞き、本を読み、研究をし、経験を重ね、世界は黒か白かで分けられるようなものではない
  • 地域の文化に敏感であれ
  • 変化にオープンに対応しろ

いい会社、つくりたいなぁと。ただの収益エンジンではなくて、組織・コミュニティとして素敵じゃないとなと。事業を作れる人と、企業を作れる人は別なんだと痛感する日々です。

この本、改めて素敵。本当におすすめです。

レイジング・ザ・バー ~妥協しない物つくりの成功物語 (Raising the Bar)

レイジング・ザ・バー ~妥協しない物つくりの成功物語 (Raising the Bar)