ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#63 『デザインの小骨話』

デザインエンジニアの山中俊治さんの著作。

2011年に出版されている『デザインの骨格』という本と対応するタイトルで、小骨話。 一つ前に読んだ、福岡先生の『変わらないために変わり続ける』の内容にも通じるところがあって、テンポよく、楽しく読めました。

デザインの小骨話

デザインの小骨話

 

最初は生き物の話。

生物は目的に応じて最適な体の形をしているんじゃなくて、環境の変化に合わせて今ある身体を少しずつ魔改造しながら生き延びてきた、という話や、

視覚と聴覚を最大限に活用するために頭そのものやパーツを作り込んでいるフクロウという動物に対する驚きなど、

楽しい話題に満ちています。

一番最初に紹介されているハンミョウが時計にちょこっとのっているスケッチがまたかわいい。

 

その後は日常の観察の話。

一番ビックリしたのは、楽器の品質の話。

一流のソリスト10人に、ストラディバリウス等の最高級品と、新しい製品をブラインドで弾き比べてみたところ、彼・彼女が最高の品だと評価したのはほとんど新しい製品だったこと。そして、彼・彼女たちは一方で、自分自身が最も良いと評価したものは最高級品の方だと信じ込んでいたとのこと。

古い業界。人間工学の視点からも普通のユーザビリティの視点からも、明らかに改良の余地があるものが「いや、そういう変化は求められていないから」という理由でボツになっていく。それでもいいような、だめなような。

 

更に続くのが、デザイナーの視点で、作る人そのものとスケッチの話。

心地よいレイテンシ。素材ではなく加工方法による「らしさ」の演出。

観察の方法であると同時に整理の技術でもあるスケッチ。それと合わせて行わなくてはいけない決断の話。

 

最後にあるのが、フリーランサーとしての働き方イメージ。

自分の単価を決めるのは自分自身。

自分で動き始めないと物事が何も動かないのがフリーランサー

 

各文章の合間に挟まれる山中さんのスケッチがとにかくいい。

さっと入り込めて、引き込まれる、そんな素敵な本でした。 

デザインの小骨話

デザインの小骨話