ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#37 『世界の国 1位と最下位』岩波ジュニア新書 1冊目。

岩波ジュニア新書の本をいくつか読んでみようと思っています。

このシリーズの本の末尾に「岩波ジュニア新書の発足に際して」という文章が載っています。

 君たち若い世代は人生の出発点に立っています。君たちの未来は大きな可能性を持ち、陽春の日のように光り輝いています。勉学に体力づくりに、明るくはつらつとした日々を送っていることでしょう。

 しかしながら、現在の社会は、また、さまざま矛盾をはらんでいます。営々と築かれた人類の歴史の中で、幾千億の先達の英知と努力によって、未知が究明され、人類の進歩がもたらされ、大きく文化として蓄積されてきました。にもかかわらず現代は、核戦争による人類絶滅の危機、貧富の差をはじめとするさまざまな人間的不平等、社会と科学の発展が一方においてもたらした環境の破壊、エネルギーや食糧問題の不安等々、来るべき二十一世紀を前にして、解決を迫られているたくさんの課題がひしめいています。現実の世界はきわめて厳しく、人類の平和と発展のためには、きみたちの新しい英知と真摯な努力が切実に必要とされています。

 きみたちの前途には、こうした人類の明日の運命が託されています。ですから、たとえば現在の学校で生じているささいな「学力」の差、あるいは家庭環境などによる条件の違いにとらわれて、自分の将来を見限ったりしないでほしいと思います。個々人の能力とか才能は、いつどこで開花するか計り知れないものがありますし、努力と鍛錬の積み重ねの上にこそ、切り開かれるものですから、簡単に可能性を放棄したり、容易に「現実」と妥協したりすることのないように願っています。

 わたしたちは、これからの人生を歩むきみたちが、生きることのほんとうの意味を問い、大きく明日をひらくことを心から期待して、ここに新たに岩波ジュニア新書を創刊します。現実に立ち向かうために必要とする知性、豊かな感性と想像力を、きみたちが自らのなかに育てるのに役立ててもらえるよう、すぐれた執筆者による適切な話題を、豊富な写真や挿絵とともに書き下ろしで提供します。若い世代の良き話し相手として、このシリーズを注目してください。わたしたちもまた、きみたちの明日に刮目しています。 (1979年)

 1979年という年は、1960年代末から続いた冷戦の緊張緩和から一転、再度緊張が高まった年です。ソ連アフガニスタンに侵攻、中東ではイラン革命が起きるなど国際情勢が緊迫し、1980年からはイラン・イラク戦争に発展するなど、世界中が大混乱に陥りました。

 そんな中で、これからの時代を背負う子どもたちに対して、矛盾に溢れたこの世界の中でそれぞれの能力や才能を開花させ、生きていくことの意味を提示しようとする姿勢と、その思いから生み出される本や知識。いっそう複雑化するこの世界でも、一読の価値があるのではと思います。

1位はわかる。では2位、3位は?

本書『世界の国 1位と最下位』は、人口や国土の広さ、経済規模、食料自給率貧困率などについて、世界で1位の国と最下位の国を比較することを基本としています。人口なら一位は中国、最下位はバチカン、といったように。

ただ、個人的に面白いなと思ったのは、上位・下位それぞれ2~10位程度の"群"とその分布についてのコメント。

例えばGDP国内総生産)の視点でいうと、最下位として紹介されているのはツバルとナウル*1。それに続いてアフリカのギニア湾上に浮かぶ島国、サントメ・プリンシペとなります。最新のデータ*2を見ると、その他に下位に位置する国はキリバスパラオマーシャル諸島ミクロネシアといった太平洋上に浮かぶ島嶼国家が並びます。

これらの国々を群としてみると、島国であるというだけではなく、長年他の国の植民地とされる中である種いびつな経済構造(単一作物栽培など)を強いられてきた国ということがわかります。この他にも、貧困率や食料自給率出生率なんかについても、群で捉えると、ただ知るだけではなく、考える、というきっかけになるな、と思っています。

ナウル共和国について紹介した本を読んだ時の感想を書いた記事。『アホウドリの糞でできた国

nozomitanaka.hatenablog.com

日本の人口がフィリピンより少なくなる日

私自身も、本書を読んでいて初めて知った事実がたくさんあります。

GDPのだいたい概念としてGNH(国民総幸福量)が紹介されていたり、オリバー・サックス開発経済学の概念がたくさん出てきたり、2010年にそういうトピック盛り上がっていたな、と思い返すきっかけにもなりました。 

おわりに

岩波ジュニア新書シリーズ、ざっとテーマだけでも見てみると面白いと思います。

岩波ジュニア新書 - 岩波書店

短歌は最強アイテム』なんていう尖ったタイトルのものも... 

世界の国 1位と最下位――国際情勢の基礎を知ろう (岩波ジュニア新書)

世界の国 1位と最下位――国際情勢の基礎を知ろう (岩波ジュニア新書)

 

 

*1:本書出版の2010年時点。2016年ではツバルが最下位で約3,400万ドル(約35億円)

*2:世界の名目GDP(USドル)ランキング - 世界経済のネタ帳