たなかの読書記録

スタートアップで働く人間が、読んでよかったなぁと思う本を紹介していきます。

記録#17『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』カイシャとは何か?

私たちがあたりまえに受け入れている「会社」という存在。冷静に考えると、なかなか不思議だったりします。

たくさんの人が会社に所属してお金を稼ぎ、その働く中でも、どこか他の会社に営業をしたり、また別の会社から仕入れをしたりします。仕事を終えて家に帰るときもある会社が運営するお店によって買い物をし、色んな会社からかった物であふれる自宅に帰ります。

「会社」ってなんだろう?

この本はそんな疑問から始まります。

法人、つまり法律が定義した「人」ということになります。「カイシャには実体がないけれど、法律の上では『人』として取り扱おう」と定義しているわけです。人間が仮想的に作り出した生きもの、それが法人、それがカイシャです。たとえるならば、「妖怪」のような想像上の生きもの をイメージするとよいでしょう。
実際には存在しないのだけれど、存在すると仮定して、その存在に名前をつけて、人のように扱っていこう、ということになります。(Kindle位置:195)

この本の著者はサイボウズの現代表取締役・青野さん。

少し前に、夫婦同姓・別姓の選択権に関する訴えを裁判所に提出したことでも話題になりました。

www.change.org

会社という妖怪

彼がこの本の中で、会社を「妖怪」に例えるのには、わけがあります。

一つには、実態がないこと。「会社を指さしてください」といっても、その存在を示すことはできません。

もう一つは、死なないこと。会社には、「継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)」という考え方が適用されており、社会の公器として、半永久的に存続していくことを期待されています。

そしてさらに、実体がないにもかかわらずお金で太っていくことです。

実体がない上に死なない。まさに妖怪です。
カイシャと雇用契約をした生身の人間が頑張って働いて、事業がうまくいって、利益が出て、内部留保が増えれば増えるほど、妖怪「カイシャ」の寿命は伸びていきます。そして、お金が貯まれば貯まるほど、所属する人間が多くなればなるほど、社会的に大きな力を持つようになります。
最初は小さかった妖怪が、どんどん巨大化していく。まさにモンスター。(Kindle位置:235)

妖怪代理人としての代表取締役

タイトルにある、『会社というモンスターが僕たちを不幸にしているのかもしれない』という懸念は、この実態のない会社を太らせようとする仕組みにあります。

会社という妖怪を太らせたいという思いを強く持っているのは、代表取締役という人です。この代表取締役は会社という妖怪の代理人で、会社が大きくなるに従ってその代理人として社会的名声も得られるし、自身の決定一つで報酬額を大きく増やすこともできてしまいます*1

なので、自身のことだけを考える代表取締役が働く会社に入ると、その社員は不幸になる、と。

日本のカイシャが楽しくないのは、「社員を我慢させる仕組み」で運営されているから。
その仕組みを作っているのは、カイシャの代理人である代表取締役。(Kindle位置:424) 

あらゆる会社が、成し遂げたいこと・目指す世界があって立ち上がっていくのに、代表取締役が会社というモンスターに飲み込まれていくと、おかしなことになっていく。

カイシャが世間に知られるようになっていくと、経営者が周りの目を気にするようになり、いつの間にか目的が「売上を伸ばす」「利益を増やす」となって、「利益を増やしますから、代表をやらせてください」となってしまう。
こうなると企業理念を重んじることすらなくなります。 企業理念に「お客様第一」と掲げていても、実際の現場では「今月のノルマ達成が一番大事だ」と、優先順位が入れ替わってしまう (Kindle位置:448) 

会社というコンセプトが壊れる時代に

私たちの世代の人を見ると、会社に所属をせずに仕事をしている人が多くいます。少し前にも、フリーランス市場の成長が記事になっていました。

www.lancers.co.jp

この背景には、会社という組織に対する不信感があると思います。

「毎週末会社に行って仕事をしているのに達成感がない。やっていることの意義を感じない」

「こんなに売上を上げているのになんでこんなにお給料が低いの?」

「私がこんなに頑張っているのに、さぼってるおっさん・おばさんのほうが給料高いのは納得できん」

こんな声、よく聞きます。

おそらく、今の若い人たちは、モンスターの正体に薄々気づいているんじゃないでしょうか。
我慢レースを強いられて、自分の成長を妨げられるかもしれない。
もし何かあったときには放り出されるかもしれない。
長い人生を考えるとリスクが高い職場だと感じているのかもしれません(Kindle位置:1,558)  

青野さんは、会社という存在をもっとカジュアルにしていくことを提案しています。 

会社法等の制度上いろいろ制約があるのかもしれませんが、もっとプロジェクトチーム的に、ぱっと作ってぱっと解散する組織があってもいいと思っています。

「カイシャは永続すべきである」と言われることがありますが、私はそれには賛成しかねます。
これからの時代、もっとカイシャは作りやすくて、解散しやすいものになる と思っているからです。だから、理念が弱くなってしまったカイシャは、むしろ早くリセットしてしまったほうがいい。(Kindle位置:488)

 そんなプロジェクトチーム時代に必要なスキルとして、青野さんは人に依頼する・一緒に働くスキルを上げます。

「人のスキルを借りる」ために大事なのが、「頼むスキル」です。
「頼むスキル」の高い人は、まず、自分に何ができて、何ができないかを認識しています。
そして、誰に頼むのがよいかを考え、場合によっては新しい人脈を切り開いてでも、できる人を見つけ出します。(Kindle位置:937)

おわりに

面白い本でした。大学院を出てからずっと「会社」に所属してきた自分として、改めて振り返るができるような、これからの働き方を考えさせられるような、いい本でした。

4月になって新社会人の姿を沢山みかけますが、社会人なりたてくらいのときにこの本を読んでいると、自分の会社を冷静に見ながら心穏やかに過ごしていけるかもしれません...

会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。

会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。

 

 

*1:社会人になって、代表取締役と社長、というのは全く別のものなんだということを初めて知りました