悩みの真ん中にいるときは誰だって自分が世界で一番つらいし今までで一番悲しい

"紅茶を飲みながらぽつぽつと話すままにしていたら、突然泣き出してしまった。家も学校もめんどくさい、大学なんか行きたくない、友達はバカばっかり、挙句の果てに彼からは忙しくなるから会えない、と言い捨てられたという。

まるでドラマのような、それも笑えちゃうような不幸のオンパレードなのだが、一緒に笑おうという誘いに乗れるほどの強さを今の彼女に求めるのは酷というものだろう。

あんたの年で親も学校も大好きな子なんていないよ、と言おうとしたがやめた。

 

いくら彼女が大袈裟に見えてもこれからの方がもっと大変よというのはただの脅しだ。年上の人間が年下の人間に、ただ「知らない」という理由だけで自分がちょっと垣間見た世の中の複雑さやつらさを見せようとするのは罪だと思う。

「誰もが通る道」という言葉は正しいようで正しくない。それぞれが、それぞれの道をそれぞれの悩み方で悩みながら歩くしかない。その解決法も人それぞれだから、アドバイスなんかしようがない。

できるのはただ、道の途中で息を切らし気味の人に、その時は楽しく歩いてる人が給水所のありかとか景色のいい場所をちょっと教えてあげることくらいか。

「この先さらに坂」とか言われたら歩く気も失せてしまう。

 

葛藤や混沌を他人とわかりあうことは不可能だが、でも24時間暗い顔をしていることはない、いろんな人とあって楽しいことも見つけて、ああ私が抱えているものなんて小さい小さい、と思える瞬間がいくつかあれば、生活はめちゃくちゃ救われる。

 

いまは自分の狭い世界で悶々としている彼女(や私)だが、大人になればさらに外側の世界についても悩んだり考えたらしなくてはならなくなるだろう。

しかしそれは同時に、今まで見えなかったもの、知らなかったものとの出会いも待ち受ける道のりだ。

経験値は上がる一方。楽しみにしていればいいのだと思う。

大丈夫、今が一番つらくて後は楽しくなるばっかりよと伝えた。

嘘ではない。

悩みの真ん中にいるときは誰だって自分が世界で一番つらいし今までで一番悲しい。"

 

小山田咲子「明け方の訪問者」, 『えいやっ!と飛び出すあの瞬間を愛してる』より