ねずこん読書記録

小さな会社を経営しています。読んだ本について書き残していきますー

記録#172 『ビジネスモデル2.0 図鑑』Twitter話題の1冊をやっと。

 

ビジネスモデル2.0図鑑

ビジネスモデル2.0図鑑

 

noteで始まり、Twitter上でもかなり広範囲に広がった「ビジネスモデル図解シリーズ」。私も勉強させていただいております...!!

ど頭にある、ビジネスモデルというものそのものに対する解説。

ビジネスモデルは思考バイアスを生みやすい

ビジネスモデルは模倣されやすい

という前提をしっかりと伝えてるのも素晴らしいと思いました。大企業新規事業部によくいる、ビジネスモデルを批評したいだけ、なんとなくわかった気になることが目的のおじさん・おばさんはぜひここだけでも熟読してほしい。

その上で、この図鑑に登場する100の事例に共通するポイントとして

・「逆説の構造」がある = 創造性

・「八方よし」になっている = 社会性

・「儲けのしくみ」が成立している = 経済合理性

特に一番最初の「逆説の構造」というのは、ピーター・ティールが言うところの「隠れた真実」的なコンセプトで、こう整理するとわかりやすいなぁと。

紹介されている事例の中で面白いなぁとおもったものは、

  • TransferWise:国際送金のスタートアップ。国際送金→2重の国内送金に変換。
  • Lemonade:保険のスタートアップ。掛け金・運用の剰余金を寄付に。
  • MUD Jeans:アパレルのスタートアップ。ジーンズを所有からリースに。
  • CARGO:ライドシェア向けの社内コンビニ運営スタートアップ
  • Mikkeller:OEMクラフトビールメーカー
  • WASSHA:電気の量り売りスタートアップ。アフリカ農村のキオスクをハブに。
  • Spacious:コワーキング×レストラン運営のスタートアップ

あたり。メモを取りながら読んでいたら、見開き2ページビッチリになりました。

 

こういう図解は、読むよりも、自分自身で手を動かして書いてみるのが一番なんだと思っています。著者の方々も、ビジネスモデルを理解しているものを書いているよりも、書きながら考え、だんだんに理解していっている感じなのではと。

自分で手を動かすためのツールキットを公開されているのも素敵だなぁと。

note.mu

このキット、わたしも利用させていただいております。ありがたや。

よりよいビジネスの理解のために、、、素晴らしい本でした。おすすめ。

ビジネスモデル2.0図鑑

ビジネスモデル2.0図鑑

 

 

記録#171 『日本を捨てた男たち』フィリピンに生きる困窮邦人

 

日本という社会に溶け込めなかった、犯罪を犯してしまい日本が生きづらくなった、、

様々な理由で日本を捨て、東南アジア・フィリピンに至った人たちがいます。

記者の水谷さんがフィリピンの地で丁寧に取材をし、日本に帰るお金もなくしフィリピンの路上や教会をねぐらに生活する困窮邦人について書いたのがこの本。

全く知らない世界でした。

  • 日本で溶接工をしていて、発展性のない生活に行き詰まった中で知り合ったフィリピンパブの女性をたどってマニラに向かうものの、すぐに現金が底をつき、現地のコミュニティのなかでひっそりと生きている中年男性
  • 孤独な日々を過ごす中でブローカー経由でフィリピン人女性と偽装結婚をし、その孤独が癒やされるまでもなく生活から追い出されてしまった男性

悲しいお話。

これからどんな生活をしようと、こういうことを理解し、共感できる人でありたいなと思います。 

 

記録#170 『成功する人だけが知っている一万円の使い方』

 

成功する人だけが知っている「一万円」の使い方

成功する人だけが知っている「一万円」の使い方

 

コワーキングスペースの本棚にふらっと置かれていた本書。

お財布にある1万円を、もっと稼ぐための"生き金"とするために。

  • 1万円の現金で払いつつ、お釣りの数千円をチップにする
  • お金をかけるべきは名刺入れ・手帳・筆記用具・カバン
  • 大切な商談は一流ホテルのランチで
  • 1万円分のポストカードと切手を買って直筆のメッセージを送る
  • 毎週通うよりも、月1回1万円を使うことで顔を売る
  • 絶対に受け取ってはいけない1万円もある、それを見極める

裏社会関連も多い向谷さんの著書。さっと読める、お金の使い方に関する本でした。 

成功する人だけが知っている「一万円」の使い方

成功する人だけが知っている「一万円」の使い方

 

 

記録#169 『浮いたり沈んだり』棋士・先崎学の日常エッセイ

 

先崎学の浮いたり沈んだり (文春文庫)

先崎学の浮いたり沈んだり (文春文庫)

 

この本が書かれたのは2002年。著者は将棋指しの先崎先生です。当時まだまだお若く、A級(名人位を争う最高クラス)に昇進されてバリバリだったころに週間文集に寄稿されていたエッセイをまとめたのが本書。

本書の最後はA級から降級するところで終わりますが、この本を書いていた2期がこれまでのところ最後のA級所属になっています。現在はB級2組。

  • 佐藤康光先生にならって、負けた日に号泣してみようとした(できなかった)話
  • 対局者の加藤一二三先生が6手目に1時間45分も使うなか、ひたすら待った話
  • 友人と一緒に韓国のカジノに乗り込んで、大惨敗した話

のようなおもしろ話もあれば、

  • 粘り将棋の森先生を見て、奮い立った話
  • 一緒に飲みまくった郷田先生の初タイトル奪取を祝う話
  • 羽生先生と一緒に、亡くなった村山先生の棋譜を大切に選び、語る話

のような、ぐっとくる話も。

特に、村山先生について語るこの文章は、すごく好きでした。

将棋指しが残すのは、つまるところ棋譜だけである。そして棋譜には、棋士の感受性が表現される。

村山将棋は、駒が前に出る、元気良い、明るい将棋だった。そして、時折意表を突く奇手が出た。そして、村山聖という男も、そういう男だった。

(本書 pp.38)

この本以外でも、2013年NHK杯の羽生-郷田戦の解説をされていたのが先崎先生で、「銀からですか......!!そうか、七2に桂が打てると言っているのか...! これは天才の詰みだ!」とおどろくシーンが私としては印象的です。

最近はちょっとお休みされていたりして、その模様が新刊にもなっています。

bunshun.jp

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間
 

真っ直ぐで、ちょっぴりギャンブルが好きで、素敵な手を指す、大好きな先生です。

また先生の棋譜を見れるのを、楽しみにしています。

先崎学の浮いたり沈んだり (文春文庫)

先崎学の浮いたり沈んだり (文春文庫)

 

 

記録#168 『徹底抗戦』刑務所に入る前のホリエモンによる独白。

 

徹底抗戦

徹底抗戦

 

いまはいろんなメディアで、ふんわりコンテンツでも登場する堀江貴文さん(通称・ホリエモン) ですが、この本が出た2009年はゴリゴリ裁判中。そんな最中に、実際にあったことと、それに対する自身のスタンス・主張をまとめたのがこの本。

結局彼が刑事告訴されて収監されることになった証券取引法違反、具体的には「有価証券報告書虚位記載容疑」と「偽計及び風説の流布容疑」について、詳細に語られています。

この本の内容をそのまま信じるとしたら、上場企業の経営者なんて怖くてできないな...という心持ちになります。経営者=会社のアクションについて無限責任を負う(経営責任だけではなくて、刑事責任も含めて)んだろうか...

大変な社会だ。

司法っていうものも、中立なんていうのはありえなくて、裁判所も検察も、結局は人の組織なんだなぁということを実感させてくれます。

あと、ホリエモンはSBIの北尾さんやジャーナリストの立花隆を許すことは一生ないんだろうな、というのも文面から伝わってきます。

こういう世界に関わることなく、ただ真っ直ぐに生きていきたいものです。

個人的にですが、↓のようなスタンスはすごく好きです。あと、まっすぐに宇宙を目指す姿も。

人は、パンだけを食べて行きているにあらず。夢を食って行きているのだ。

(本書 pp.182) 

r25.jp

 いい本でした。敵が増えても、まっすぐにやっていこう。

徹底抗戦

徹底抗戦

 

記録#167 『ミーティングのデザイン』ムダで退屈で苛立たしい打ち合わせからの脱却

 

ミーティングのデザイン エンジニア、デザイナー、マネージャーが知っておくべき会議設計・運営ガイド

ミーティングのデザイン エンジニア、デザイナー、マネージャーが知っておくべき会議設計・運営ガイド

 

コンサルタントやプロジェクトリードとして働いている特性上、いろんな企業が主催するミーティングにおじゃますることになります。 ばりばりの機械製造、いけいけWebサービス、お固めSIer、ぱりっと製薬、業種は様々ですが、どの企業でも課題になっているのが「効率的な会議運営」です。

  • アジェンダと資料は事前共有で
  • 会議のオーナー・意思決定者を明確に
  • 中立なファシリテーターをおく
  • 発言のない参加者は次回からは呼ばれない(議事録共有のみですます

のように、より生産的な働き方を実現するための会議運営Tipsについては、同じ内容のことが延々と語られている気がします。そして、全く実行されない。

正直、この本の中で提案されている個別の手法は、↑で述べているような、なかなか実践されない・できないものにとどまっていると思います。しかし、タイトルに"デザイン"という言葉がある通り、そこには「会議の場を観察し、そこから示唆を得て改善していこう」ということを提示しているのが素敵だと感じました。ミーティングの成果を計測し、その成果が最大化されるように仕組みを変えていく。そして、会社の文化にも少しずつ影響を与えていく。そんな取り組みが必要なんだと、この本は訴えています。

アジェンダや資料を事前共有したって、その内容が意味不明だったらあまり意味はないし、会議のオーナーになっても結局意思決定できない管理職は多いし、中立的なファシリテーターは部署に紐付いた瞬間に色が付いてしまうし、「お前は会議に参加するな!」と強く言い切れるような会社員も多くない。

それでも、成果を生み出すために、観察と改善を重ねていこうとする姿勢はとても素敵だと思います。

個人的に参考になったのは、ファシリテーターがするべき質問として、

  • 感情を明らかにする質問
  • 動機を明らかにする質問
  • 行動を明らかにする質問
  • システムを明らかにする質問

を区別しているところ。これを意識すると、ワークショップや会議運営が変わりそうだな、と実感できました。

会議に悩む人は、謎のコンサルタントが書いた「会議をもっと効率的に!」とかいうペラペラな本を読むのではなく、こういう本を手に取りましょう。ゆっくりかもしれませんが、少しずつ働く環境・文化が良くなっていくはずです。 

ミーティングのデザイン エンジニア、デザイナー、マネージャーが知っておくべき会議設計・運営ガイド

ミーティングのデザイン エンジニア、デザイナー、マネージャーが知っておくべき会議設計・運営ガイド

 

 

記録#166 『チャイナ・イノベーション』データを制する者は世界を制する

 

多くの日本人にとっての中国経済のイメージは、まだまだ服や電化製品についている"Made in China"だと思います。しかし本書で描かれる中国企業は、既存の製品を安く(模倣して)作るのではなく、世界のイノベーションの最先端を走っている企業たちです。

世界最高峰の頭脳を集め新たな技術に対して多大な投資をし、ユーザーからのフィードバックを即座にサービスに反映しながら、規制に走ろうとする当局と上手くコミュニケーションをしつつ新たな地平を走っていく。「イノベーションといえばアメリカ西海岸!」と考えるような人に、飛行機で3時間半の国にこそ世界最先端のイノベーションがあることを、この本は教えてくれます。

代表的なところで、アリババとテンセント。

中国のデジタルイノベーションを支える決済基盤を提供するアリババは、2013年初頭に「アリペイ・ウォレット」をリリース。決済のみならず、クレジットカード支払いから病院での支払いに至るまで、外部企業に対してシステムを開放することで競合を打倒し唯一無二のプラットフォーマーになっています。更に生鮮食品スーパーも自社で展開し、支配したオンラインに限らずオフラインにまでその影響を広げています。

世界200カ国以上で利用されるSNS・メッセージングアプリのWeChatを運営するテンセントは、元々Microsoftのサービスを模倣したQQというサービスから事業を始めながら、商品マネージャー制度/社内競馬制度など自社内でのイノベーションを育む環境を整備し、コミュニケーション領域のプラットフォーマーとなります。小米など、同様の領域で攻勢を仕掛けてきた競合企業を、ユーザービリティやインフラの視点で着実な改善を積み重ねることで圧倒しています。

他にも、DiDiやiFlytek、センスタイムなどの企業が紹介されていますが、いずれにも共通しているのは、

  • 徹底したユーザビリティの重視:アリババのジャック・マーはユーザーが2億人に至ったアリペイについて全社総会で「現状のアリペイは最悪だ」と伝え、テンセントには、開発に根付く「10/100/1000」という毎月の顧客コミュニケーションルールがある
  • インフラに対する思い切った投資:テンセントのとあるゲームが爆発的にヒットしたときCTOは担当からのメール一本でサーバーを1000台増強し、アリババは決済処理速度を上げるためにクラウドシステムを自社開発した
  • 最先端の技術・頭脳を集める
  • 規制は従うものではなくそれを元に当局と交渉するものと言う姿勢

まさにここに、新しい未来のエッジがある気がします。

中国、体験しに行ってみたいな...それだけのためにメルカリに転職したい...

浙江省烏鎮で開催される世界インターネット会議、いつか参加してみたい...

西海岸偏重の日本の新規事業界隈の人は、ぜひご一読を。